マイワシは日本人にとって最も身近な魚の一つですよね。日本周辺に広く分布し、
太平洋側では、春から夏に関東近海から三陸・北海道沖まで北上し、秋から冬に
関東近海に南下するという季節回遊をしています。マイワシの旬は5月~10月と
言われて、この期間が脂ののっている時期ですが、特に6月~7月に脂がのりは
じめたマイワシは「入梅イワシ」と呼ばれ、旬の味覚として親しまれています。
水揚げされたマイワシは、鮮魚や、丸干し・缶詰などの加工原料として流通す
るほか、近年では、海外への輸出も盛んに行われています。同じ青魚のサンマ、
アジ、サバの漁獲が伸び悩む中、最近ではすし店や鮮魚店で、秋の主役となっ
ています。常磐沖のマイワシの紹介です。
<茨城県は漁業大国>
2019年度の日本の全魚種別漁獲量(養殖含む)の順位は、1位がイワシ類で約
54万t、2位はサバ類で約45万tでした。イワシ類は1995年以来、24年ぶりにサ
バ類を抜いて首位になりました。マグロやカツオの漁獲量を常に上回っていま
す。漁業大国の茨城県の自慢は1位となったイワシ類の県別漁獲量ランキング
で断トツの1位であること、そして2位のサバ類の部でも国内2位の漁獲量を
誇っていることです。
ここで言う、イワシ類とは「マイワシ」「ウルメイワシ」「カタクチイワシ」
「シラス」の合計です。この内、マイワシが漁獲量の大半を占めます。その理
由はマイワシ以外のウルメイワシやカタクチイワシはとても鮮度落ちが早いの
で、漁獲の大部分は大型養殖魚の餌に供されるので販路に制限があるからなの
です。そしてサバ類とは「マサバ」「ゴマサバ」「タイセイヨウサバ」の合計です。
茨城県は農産物だけでなく、魚介類の面でも、日本の「食材」をけん引しています。
<茨城県のイワシ漁業>
改めてイワシ類の漁獲量ランキングの詳細ですが、茨城県(26.2%)が断トツで日本一、
2位は長崎県(8.3%)そして3位は千葉県(7.5%)です。イワシ類の中でも漁獲量の大半を
占めるのが「マイワシ」で、この漁獲量ランキングでも茨城県は断トツ1位で20.7t
(37.2%)、2位は千葉5.3t(9.5%)、3位、福島4.7t(8.4%)を大きく引き離しています。
ついでに、「ウルメイワシ」の1位は島根県、「カタクチイワシ」の1位は長崎県、
「シラス」の1位は愛知県です。イワシ類の中の魚種によりランキング1位の県名が
変わりますが、これは魚の住む環境の違いの影響が出ているからです。
<日本で食べられているイワシ3種類とそれぞれの特徴>
(1)マイワシ:最大30㎝ほど。加工されることなく鮮魚として店頭に並ぶ機会
が多いので、みなさんも目にする機会が多いでしょう。回転すしのネタ
は全てこれです。側線に沿っていくつか黒い斑点が並んでいるのが特徴です。
(2)ウルメイワシ:最大40㎝ほどになる大型魚。極端に鮮度落ちが早い魚なので、
鮮魚で店頭に並ぶ機会はありません。主に、にぼし、めざしに加工されます。
マイワシに比べて目が少し大きくて目玉が潤んでいるように見えるのが特徴
です。
(3)カタクチイワシ:最大14㎝ほどの小型魚。稚魚は、ちりめん、しらす、釜揚げ、
生シラスなどになる為、成魚よりも稚魚に高値がつきます。沿岸部での水揚
げも多いので、鮮度が重要視されるしらす需要にぴったりなのです。
(参考)マイワシは、ニシン科の魚。ウルメイワシは同じニシン科なので、「近い親戚」、
カタクチイワシは、カタクチイワシ科で「遠い親戚」です。
<マイワシの漁獲方法>
茨城県の基幹漁業である大中型まき網漁業で約95%が漁獲されています。現在はマイ
ワシ、サバ類、マアジは水産資源の持続的な利用を図るため、平成9年より漁獲可能量
(TAC)制度による資源管理が実施されており、波崎港・大津港を中心にしてサンプリ
ング、魚体測定、年齢査定、および粗脂肪測定などが行われています。
<マイワシの美味しい食べ方、そして栄養価>
大量に漁獲されるものの、人気は上位とは言い難いマイワシですが、食べ方としては
刺身や塩焼き、酢締め、煮付け、フライなど万能で、オイルサーディンやアンチョビ
などの缶詰やイリコ、煮干など加工品にも流通しています。最近は食べ方も広がって
おり、かば焼きや磯辺焼き、そして、つみれ汁など、多彩なレシピが紹介されています。
手開きできるほど新鮮なものは、刺身にして生姜で食べると臭みもなく美味。煮付け
る場合は生姜や梅干を入れると良いでしょう。
マイワシは「いわし百尾、頭の薬」といわれるように多くの栄養価を有しています。
豊富なDHA、EPAがコレステロール値を下げ、血液をさらさらにします。「泳ぐカル
シウム」と呼ばれるほどにカルシウムも豊富で、煮干10gには牛乳200ml以上に相当
するカルシウムが含まれています。カルシウムの吸収率を上げるビタミンDも含まれ
ているので骨や歯を強化し、骨粗鬆症を予防するのに効果的です。更に、血圧を安定
させ、心臓をまもるタウリンも含まれ、血栓症や心筋梗塞、高血圧などの生活習慣病
予防に働く栄養素の宝庫です。幼児からお年寄りまで全ての人々に食べてほしい食材です。
<お店で役立つ!鮮度の高いマイワシの見分け方>
(1)頭が小さく見えるもの:頭が小さく見えるものを選びましょう。頭が小さく見
えるということはそれだけ胴体が肥えている証拠。パッと見ただけで判断できます。
(2)身に厚みがあるもの:上から見て、胴体の横幅があるものを選ぼう。身に厚みのあ
るイワシは脂がのっていてとってもおいしいです。これもひと目で判断できる。
<マイワシの保存方法>
①保存前になるべく調理しておく。酢や梅干し、醤油などのタレに漬ければ4〜5日は大丈夫です。
②冷凍するなら、開いて塩を振ってラップに包んで袋に入れる。1週間くらいは大丈夫。
<イワシの豆知識>
(1)江戸庶民の灯りは灯油(ともしあぶら):はぜやうるしの樹液から作るロウソク
はもちろん、菜種などの植物油も江戸庶民にとっては高根の花、とても手がでま
せん。そこで活躍したのがイワシのしぼり油。大鍋でぐつぐつ煮たイワシを搾り
機でしぼって作る「しめ粕」は当時の貴重な肥料でしたが、その時にとれる油を
灯油として利用したのです。だから江戸の町はイワシ臭かったに違いありません。
クジラやサンマも使われていました。
(2)マイワシは出世魚:シラス(稚魚)→ カエリ(数cm)→コバ(10cm)→チュウバ
(15cm)→オオバ(20cm)と名前を変えます。普段、身近にありすぎて気づきま
せんが、とってもめでたい魚なのです。
(3)節分イワシ:節分にはイワシの頭を柊(ひいらぎ)の小枝に刺して、少し火にかざ
してから、家の戸口や門に飾る風習があります。イワシは焼くと臭く、柊にはト
ゲがあり刺さると痛いので、邪気はその家の中に入るのを嫌がるという言い伝え
があり、昔は全国的に行われていた風習でしたが、現在でも関西地方を中心に残
っています。
(4)イワシ類の稚魚を「しらす」と総称しますが、通常、カタクチイワシの稚魚を指す
ことが多いようです。
マイワシを使った茨城県の郷土料理と言えば、「マイワシの卯の花漬け」(北部地区)、
「いわしのさつま揚げ」や「パイタ焼き」(ひたちなか市)などが知られています。
県内には新鮮なマイワシを食べさせてくれる料理店も多いです。
是非。常磐沖のマイワシをご賞味あれ!
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