茨城県は江戸時代から梨栽培をしている名産地です。全国シェアでは長く千葉県の後
塵を拝していましたが、2019年度は逆転して茨城県が1位で9.5%、2位の千葉は9.2%、
3位が栃木県、8.6%で、関東の3県で梨生産量の約27%を生産しています。昼夜の寒
暖差の大きい気候と、豊かな水、関東ローム層の土質が梨の栽培に適し、県内では、
筑西市、下妻市、かすみがうら市、石岡市、八千代町などを中心に栽培されています。
<梨栽培のルーツ>
梨はバラ科ナシ属の植物です。中国の西部・南西部が発祥の地といわれ、ここから東
アジアを経て日本へ、もう一方は中央アジアやヨーロッパへ伝播しました。中国から
入ってきて栽培されたものが野性化したニホンヤマナシ(果実は10㎝以下と小さい)
を祖として、各地の土壌、気候に適した品種改良がなされて今日に至っています。
<国内で栽培されている梨>
国内の梨栽培は大きく「和梨」「西洋梨」「中国梨」に分けられます。
(1)「和梨」:国内の生産量では和梨が9割と圧倒的に多い。和梨はざらざら又は
シャリシャリした食感ですが、あれはペントザンやリグニンという成分か
らできた、細胞を包む壁が固くなった石細胞によるものです。これが食
べた時に食感として舌に感じさせているのです。和梨は果汁の多さ、甘味
と酸味のバランスの良さなどが人気ですね。果皮の色で赤系と青系に分類
され、赤系の代表が「幸水」・「豊水」で、この2品種で和梨栽培のシェ
ア65%以上を占めています。青系梨の代表が「二十世紀」・「菊水」など
です。
(2)「西洋梨」:ねっとり感が特徴で「バターペア」という別名があり、栄養価の
面から国内でも注目されています。代表品種は味の良い「ラ・フランス」
で、特徴はその形にあり、和梨が丸い球形なのに対し、西洋梨は上が細く、
お尻が大きい瓶のような形をしています。そしてその食味です。和梨がみ
ずみずしくシャリシャリしているのに対し、洋梨はねっとりと甘く、香り
も非常に芳醇です。そして追熟により甘さが増します。西洋梨の国内生産
量は山形県が断トツの日本一です。
(3)「中国梨」:代表は「ヤーリー」。洋ナシのようですが、香りが非常に高いの
が特徴で、西洋梨と同様に追熟をさせると、滑らかな食感で香り豊かな味
わいになります。果汁が豊富で甘酸っぱい味です。中国梨の国内生産量は
まだまだ少ないです。
<茨城県で栽培されている梨>
茨城県は和梨の名産地ですから、銘柄梨から個性豊か新品種までを栽培しています。
1.「幸水」:茨城県の梨シーズンのスタートを飾る梨。ソフトな歯ざわりで水分が豊富。
2.「恵水」:秋を彩る芳醇な味わい。茨城県が追い求めたこだわりの梨。
3.「豊水」:果肉はやわらかで果汁たっぷりの梨。甘味と酸味が見事にマッチ。
4.「あきづき」:果肉は緻密、甘みが強く、果汁も豊富な梨。爽やかでジューシーな食感。
5.「新高」:大きなものは1kg以上!風味もみずみずしさも一級品。
6.「にっこり」:新高と豊水のいいところどり!大玉で果汁たっぷり。
7.「下妻甘熟梨」:幸水の真の魅力を堪能する。高い糖度と風味を兼ね備えた甘熟梨。
全国には、まだまだいろいろな品種が栽培されています。梨はこんなに多品種なものが
あるから、晩夏から初冬まで次々と新しい梨がお店に並ぶのですね。生産者に感謝です。
<和梨の選び方と保存方法>
見た目で美味しさを確認すべきポイントは大きさと形です。
「大きさ」:梨は大きさで味の濃さが変化します。同じ品種なら大きい方を選ぶよう
にしましょう。梨に関しては、大きい方が味は濃くて美味しいです。
「形」:梨はおしりの方に甘味がたまるので、形によって甘さが変わります。高さの
ある梨よりも横に平べったくなっている梨の方が甘みを多く楽しむことができます。
西洋梨は追熟することで旨味が増すのに対し、和梨は追熟ができない果物のため、日
持ちがしないのが特徴。ですから、保存する場合は冷蔵庫での保存が鉄則です。乾燥
にも弱いのでひとつずつラップや新聞紙に包み、チャック付きの袋に入れるなどして
密閉してください。その際にヘタの部分を下にして保存するのがコツ。梨はヘタから
酸素を取り入れるので、ヘタを下にすることで呼吸を抑えることができ、品質が落ち
にくくなります。これで1週間程度、野菜室であれば10日も日持ちするのですよ。
ちなみに常温の梨より冷えたものの方がおいしいと感じたことはありませんか?実は
梨は冷やすことで糖分がアップするのです!日持ちもして甘くなるなんて、冷蔵庫で
保存しない手はありませんね。
<和梨の活用法>
1.すりおろした梨に肉をつけると、梨に含まれるプロテアーゼが肉のタンパク質を
分解するので肉が柔らかくなります。
2.キムチを作るときに梨をスライスしたり、すりおろしたりして入れると味がまろ
やかになり、深みが出ておいしくなります。
3.風邪などの時に、梨の絞り汁にしょうが汁、ハチミツを加えて飲むと、梨とハチ
ミツのノドを潤す効果としょうがの体を温める効果が期待できます。
4.梨をスライスして皿に並べ、砂糖を少量全体にふります。あとはラップをかけレ
ンジで1,2分温めると簡単に梨のコンポートができます。
5.梨の芯の近くはゴリゴリとしていて固く、酸味が強く酸っぱい味がします。食べる
時は、皮はなるべく薄く剥き、芯の部分は少し大きく切りとってしまう方が美味し
く食べられます。
6.梨には、便秘予防に効果がある「ソルビトール」、利尿作用に有効な「アスパラギ
ン酸」、高血圧予防に効果がある「カリウム」、その他に食物繊維、ポリフェノール、
クエン酸など、体にとって嬉しい栄養素が含まれています。その他に、東洋医学では
梨の絞り汁が咳止めに効果があるといわれています。
<私のお薦めは茨城県生まれの梨「恵水」>
17年の歳月をかけて茨城県農業総合センターが開発した茨城県のオリジナル品種です。
赤系梨で「恵水」といいます。「新雪」と「筑水」という品種をかけあわせて、
約4,300個体の中から選りすぐり、誕生したのが恵水。高品質な果実を作るために生産
者と一体になって栽培試験などを繰り返し、恵水は平成23年に品種登録されました。
まずびっくりするのが大きさです。とにかく大きい!4歳の孫の顔と同じくらいです。
コクのある深めの色合いにも高級感があり圧倒されます。食べてみると、梨特有のシ
ャリシャリとした食感とみずみずしい果汁が口の中に広がり大満足。糖度は平均して
13度程度あります。糖度が高いだけでなく、酸味が少ないため、食べたときに、より
甘く感じられるのが特徴です。1つでかなり食べごたえ充分です。芳醇な香りは海外
のバイヤー等からも高く評価され、貯蔵性にも優れていますので、輸出もされています。
JA常総ひかりの「恵水」がタイ及び香港で販売されていますよ。
茨城は名産地だけに栽培される梨の銘柄が多いのも特徴です。和梨はそれぞれの品種ごと
に旬の時期がずれます。早生種の幸水などは7月頃から出回りはじめ、晩生種の新高
12月でも店頭に並びます。恵水は9 月上旬~下旬と「豊水」と ほぼ同じです。
是非、茨城県の味自慢の梨、「恵水」をご賞味あれ!
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