かぼちゃの旬は9〜12月頃。「冬至にかぼちゃを食べると長生きする」ということわざ
があるように、冬に食べるイメージが強いかぼちゃですが、実は収穫の一番のピークは
夏〜初秋の間。収穫したてのかぼちゃは甘味が弱いので、風通しの良い日陰で1カ月ほ
ど保存して追熟させてから出荷します。収穫時期と旬の季節にズレがあるのはこのため
です。かぼちゃの収穫量の1位は「北海道」で47.3%と断トツ、2位「鹿児島県」4.4%、
3位「茨城県」3.7%(2019年)です。この数値から予測できるように北海道以外では、
全国各地でまんべんなく栽培されています。ですから、その土地の土壌に適した銘柄品
としてブランド化されたかぼちゃが多く生まれています。茨城県の代表的な銘柄は、平
成27年に国内で最初の「地理的表示保護制度(GI)」に登録された稲敷市の「江戸崎かぼ
ちゃ」を筆頭に、古河市の「総和みやこかぼちゃ」、常陸太田市の「里川かぼちゃ」他
があります。いずれも市場で高い評価を得ている逸品です。ここでは地元のスーパーで
購入できる、特殊な栽培方法で収穫される美味しい「江戸崎かぼちゃ」を紹介します。
※GI:品質や社会的評価などが確立した特産品の名称を知的財産として保護する制度
<かぼちゃの種類について>
かぼちゃは世界中で約20種類もあるウリ科つる性の野菜ですが、日本で栽培されてい
るのは3種類です。この内、「西洋かぼちゃ」が生産量の90%以上を占めます。
(1)日本かぼちゃ:代表は九州地方で栽培されている「黒皮かぼちゃ」。皮もご
つごつしたものが多く、又、水分が多くねっとりとしていて、淡白な味の
ものが多い。煮崩れしにくいので、煮物、炊き合わせやてんぷらがおすす
めの調理法です。
(2)西洋かぼちゃ:ホクホクした食感と甘味が好まれ、食卓に登場するかぼちゃ
のほとんどはこれです。代表品種は「黒皮栗かぼちゃ」。寒さに強く北海
道や東北が主栽培地でしたが、現在はビニールハウスにより全国各地で栽
培されています。皆さんはどんな調理法で食べるのが好きですか。
(3)ペポかぼちゃ:家畜のエサとして利用されることが多いかぼちゃですが、大
きく育ててかぼちゃの重さを当てるイベントに用いられることも。外側が
オレンジ色でハロウィンの飾りとして楽しむかぼちゃです。ズッキーニな
ど食用の仲間も入っています。
<西洋かぼちゃの品種たち>
西洋かぼちゃの果皮色はさまざまで、黒皮系、赤皮系、青皮系などがあり、現在14品
種ほどが栽培されています。代表的な品種の一部を紹介します。
1.「黒皮栗かぼちゃ」:現在広く一般的に流通している、かぼちゃの代名詞と言え
る品種です。共通するのは果肉を食べたときに栗のようにホクホクとするタ
イプです。黒皮栗かぼちゃとは、食感、見た目、栽培地などで「みやこかぼ
ちゃ」「えびすかぼちゃ」「くりゆたか」「九重栗かぼちゃ」などの選抜さ
れた品種の総称です。
2.「赤皮栗かぼちゃ」:果皮が濃いオレンジ~朱色をしている。石川県金沢の加賀
野菜である「打木赤皮甘栗」という品種が伝統野菜として知られています。
大きさは1kg前後で皮は薄く、ヘタの部分が玉ねぎのような形をしています。
厚く赤みを帯びたオレンジ色の果肉は、ややねっとりとした食感で甘みが強
いです。
3.「坊ちゃんかぼちゃ」:500g前後の手のひらサイズのかぼちゃ。形や肉質が栗
カボチャとよく似ていて、粉質でホクホクとした食感で甘味も有り美味しい
です。栄養価が高くタンパク質やβカロテン、糖質などは3倍以上含まれてい
ます。
4.「 ロロンかぼちゃ」:タキイ種苗が開発したラグビーボール形のユニークなかぼ
ちゃ。肉質は非常に粉質で、きめが細かく、滑らかな舌触りと上品な甘さが
感じられます。加熱することでホクホクしていながら滑らかな食感が楽しめます。
<江戸崎かぼちゃの品種>
江戸崎かぼちゃとは種類では西洋かぼちゃ、そして品種では黒皮栗かぼちゃの中の「え
びすかぼちゃ」の地域ブランド名です。えびすかぼちゃとは、タキイ種苗株式会社が種
を販売している品種で、市場の9割がこのかぼちゃと言われるほどのシェアを占めてい
ます。サイズが大きいのでスーパーでは1/4ほどにカットされて販売されています。
えびすかぼちゃのトップ生産地は、国内生産量の半分を栽培している北海道です。北海
道産と江戸崎カボチャでは栽培方法に違いがあります。
<江戸崎かぼちゃはどこが違うのか>
先ず、スーパーでの売値は北海道産より2倍ほど高いです。私は納得の美味しさなので
購入していますが、高値の理由を知ったのは20年ほど前のことでした。答えは「完熟
収穫」にあります。北海道産のカボチャは45日程度で収穫し貯蔵庫で追熟されるのに
対して、江戸崎カボチャは10日ほど長く、着果後55日以上の完熟した状態で収穫して
います。それがホクホクした食感と甘みを生んでいるのです。ブランド化のきっかけ
は、収穫時期が過ぎてしまったカボチャを出荷したところ「おいしい」と好評だった
からだそうです。
年間平均気温14.1℃、年間降水量1,350mmと安定した気候、適度な降水がある自然環
境、排水性が高い火山灰層(関東ローム層)という、過湿に弱いかぼちゃの生産に適
した土壌に加え、落ち葉などを数年寝かせる完熟堆肥や有機肥料、もともと地域で盛
んに行われている畜産の堆肥などによる土づくり等の総合力によって育まれているの
です。「江戸崎かぼちゃ」は今年で生まれて50年目を迎えます。 その歴史の中で培わ
れた栽培方法と、圃場(畑)に対する厳格な検査体制を継承することで、完熟収穫を
徹底し、 厳しい品質管理によって関東を中心に商品名「江戸崎かぼちゃ」はブランド
品として支持を受けてきました。平成27年には「夕張メロン」(北海道)、「神戸
ビーフ」(兵庫県)などとともに農林水産省の地理的表示(GI)保護制度の第1号
に登録されるなど、本県を代表する野菜です。江戸崎かぼちゃは完熟品出荷ですから、
購入後は早く食べるのが良いです。
<かぼちゃの豆知識>
1.栄養価は野菜の中でもトップクラス!
かぼちゃは、多くの栄養成分を含む「緑黄色野菜」です。かぼちゃには、皮膚や粘膜
などの抵抗力を強め、風邪を予防するβ-カロテン、細胞の老化やガンの予防で注目の
ビタミンEとビタミンC・ビタミンB群・食物繊維などが、バランスよく含まれています。
かぼちゃの場合、これらの成分がでんぷん質に保護されているため、熱を加えても壊
れにくいというのが特徴です。加熱によって栄養素に変化が起こる食材も多い中、か
ぼちゃは様々な調理方法で楽しめる食材です。
2.冬至にはかぼちゃを食べよう!
かぼちゃの収穫自体は7〜9月の夏〜初秋に行われますが、かぼちゃは収穫したてより
も2〜3ヶ月寝かせておいた方が甘みが増して美味しくなるのです。かぼちゃは保存性
に優れているため、元々は保存食として扱われてしました。秋までに収穫しておいた
かぼちゃを、食べ物が少なくなる冬に食べることが多かったのです。
3.なぜ、北海道が断トツのトップ生産量を誇るのか?
西洋かぼちゃが江戸時代末にアメリカから日本に入ってきて、栽培を開始したのは北
海道でした。日本一の和寒町のかぼちゃは、8月~9月にはもう収穫が始まります。
収穫後、10~20度くらいで低温乾燥処理し長期貯蔵します。こうして、ホクホクと甘
味が増すことになります。出荷は10月ですが、冬至まで出荷できるとして、国内で最
も栽培期間が長い産地であること、盆地ゆえの昼夜の寒暖の差が大きいこと、寒冷地
である故に害虫も少ないことが、日本一の生産量を維持している要因です。
「江戸崎かぼちゃ」は完熟収穫なので、栽培中も収穫後も、とにかく手間がかかるの
です。水洗いをして乾かし、傷や重さ、形状などからA~C、規格外にランク分けし
て箱詰めする。出荷前には専門の検査員が部会内全ての品質検査を行っている。検査
は目視だけにとどまらず、実際に料理してホクホク感や甘さを確かめるなど入念です。
是非、購入日が食べごろの江戸崎カボチャをご賞味あれ!