鼠喰いのひとりごと

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「誰のための綾織」 飛鳥部勝則

2006-07-22 03:25:50 | 本(小説)

「誰のための綾織」 飛鳥部勝則
2005年 原書房

注:2005年11月に絶版回収。

***

最近、読書といえば、図書館で子鬼のために借りてくる「かいけつゾロリ」
ぐらいだった私ですが、先日ふと目にとまって、読んでみました。
以前の記事でもチラっと書きましたが、盗作…というか、アイデア盗用?があり、絶版回収となった作品です。
今を逃したらもう読めません(笑)

どーれどーれ。どんな風になってたのかなー? と見てみたのですが、
んんー、微妙な味わいですね。

盗用された「はみだしっ子」。名作ゆえ名前くらいは存じてますが、
全話通じて読んだことはなく、今回問題になった部分など目も通してません(笑)
んー。だって、私の世代のころでも既に絵柄が古く感じたし、内容が重かったんだもんよ。
そんなわけで、さほど気にならずに最後まで読めてしまいました。

むしろ読んで思ったのは「…この人、腹芸のできない人なのかな」ということ。
最初の部分の「飛鳥部」と編集者のやり取りの中で語られる、
『死体はそこにあったが見えていなかった、なんていうのが通用するならなんでもアリだ』
という趣旨の発言は、間違いなく実在の某先生を名指ししているようなものだし。
新潟地震のときの、救助や寄付についての批判めいた暴露話も、
あまりにも書いてる作者の姿が背後にスケスケで、ちょっと照れてしまう。
ついでにいえば、作中の中で自分の作品を引き合いに出すのも…(汗)
なんだかね、物語の世界を読むのではなく、作者の言いたいことを
ただ書き写してるだけのように感じてしまったんだな。作者の自己主張強いっていうか。

===

物語は、とある作家と編集者の会話から始まる。
推理小説の定義と、読者の予想を裏切る「禁じ手」を越えた作品を語るうち、
彼らの話題は、作家の教え子が書いた作品「蛭女」へと移っていく。

誘拐され、無人島へ閉じ込められた少女たち。
彼女達は、その島で自分達の過去の罪と向き合わされ、
恐ろしい「蛭女」の復讐が始まった。
おりしも中越地震が起こり、その余震にさらされる中、
彼女達は一人、また一人と惨殺されていく。
果たして、蛭女の正体は誰なのか。

噛みあわない文章と奇妙な違和感。その理由こそが、事件のすべての真相を語る。

===

盗用部分については、以前検証サイトで見たとき、何もこんなに丸写しにしなくても…
と思ったけど、今回読んでみて、何も全部セリフで伝えなくても…という気分がさらに追加。
あんな説明セリフでなくても、もっと伝えようがあったんじゃないかな。
そして、丸写しでさえなければ…ここまでの問題にはならなかっただろうに。
(まぁ、あれだけ類似箇所が多いと、わかる人にはわかるだろうけど)

さて、物語そのものは「砂漠の薔薇」という作品と通じる、女同士の愛の物語(汗)
ただ、彼が書く世界はいつも、普通の(?)百合モノと違って、
女の子達がやたらバイオレンス。

私は殆ど女子高みたいなところの出身なのですが、
確かにあの年齢の女生徒は、可愛いだけではないですよ。
同じ年頃の男の子がそうであるように、粗野で凶暴で動物的で、
爆発しそうな不満とエネルギーとを持て余している。
私の世代ではまだ、この作品の中に出てくるような酷いリンチめいた事件は
ありませんでしたが…そうですね、中学の時には、隣のクラスの苛められていた
女の子が、休み時間にトイレの水に頭を突っ込まれてた、なんて話はありましたっけ。
そんなことをして一体何が面白いのか、私には今も昔も理解できませんが、
だからといって彼女を助けようって気もなかったことは事実です。
集団の中で自分が泳いでいくだけで精一杯だったしさ。

もちろん、作中の彼女達は、飛鳥部さんの好みであろう理想化された容姿と
性格なんだけど(笑)そのバイオレンスさが妙にリアルっぽくってね。
さすがは美術教師。身近でいつも女子学生を見ているだけのことはある。
オンナの本性まるわかり。(なんてね、男子校の教師だったらどうしよう♪)

とりあえず、この作品と「砂漠の薔薇」をあわせて読むと、
作者は、美しいけど野獣っぽい、互いに傷つけ血を流し合う少女達(比喩ではなく)
っていうモチーフが基本的に好きなんだろうなぁ…と思わずにいられない。

物語の特殊な組み立て…物語の中で、登場人物の書いた小説を展開する、
という異例な手法については、いろいろ論議を呼んだようですが、
私はさほど気にならなかったな。
この人、ほかの作品も同じような反則だらけだし。

というか、最近の「ミステリ」ジャンルは、今までの推理・探偵小説とは
違ったものだと思ってます。
作中でも引き合いに出されている京○さんの作品にしても、
館シリーズの綾○さんにしても、アレを探偵小説とは…言わないんじゃないかと(汗)

この人の作品は「砂漠の薔薇」と「冬のスフィンクス」しか読んでません。
ですが、「砂漠の薔薇」は面白かったですよ。

1.百合ネタがへーき
2.美少女残酷モノがへーき

な方なら読めると思います。


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