「ペギー・スー」 セルジュ・ブリュソロ
角川文庫 平成17年発行
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ハリポタが大ヒットしてからこっち、ぽこぽこと現れ始めた
「少年少女魔法冒険物語」の一つ。
それをどうしてここで紹介するのかっていうと、この物語、おそらく少年少女向け
に書かれたにも関わらず、やることがけっこう残酷なのですね。
なんでも、原作者のブリュソロさん、地元フランスではサスペンスやホラーの名手で、
「フランスのスティーブン・キング」と呼ばれるほどだとか。
(どんな作品で有名なんだ?と検索したけど、日本語検索ではググルでも
ウィキでも出てこなかった…フランス語で検索なんてできないよぅ)
とりあえずー。ホラー魂を持つものがファンタジーやるとこうなるんだなぁ、
というのを、まざまざと感じさせる作品でありました。
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第一巻 魔法の瞳を持つ少女
世界でただ一人、『見えざるもの』と呼ばれる悪戯好きなお化け達の姿が見える少女、
ペギー・スー。
彼女が思い切り睨みつければ、見えざるものたちは焼け焦げて力を失う。
ただしその力は無制限ではなく、使ったあと疲労のあまり酷い頭痛が襲うので、
いまだペギーは見えざるものに抵抗できる存在ではない。
まだ彼女がか弱い少女のうちに、なんとか殺してしまおうと色々な悪巧みをする
見えざるもの達のせいで、ペギーは周囲から頭のおかしい女の子と思われ、
家族からも孤立していた。
やがて、見えざるもの達は、彼女の引越し先のある町に罠を仕掛け、
住人たちをそこに閉じ込めてしまう。
彼らを照らす不気味な青い太陽。それは、その光を浴びたものの知能を
飛躍的に増大させるものだった。
「天才」になるべく、自ら進んで青い光を浴びたがる住人たち。
やがて、その光の影響は動物たちにも現れはじめ、人間に不当に支配されていた
ことに不満を持ち、逆に人間を支配下におこうとする動物たちと、
人間たちとの対立が始まる。
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あらすじだけ見ても、別に怖そうでもないでしょ。
文章も、ぜんぜんオドロオドロしくなく、それこそハリポタ風の少年少女ものって感じ。
…でもね、食糧難で皆が餓えてる中、催眠暗示にかかった親が自分の子供を
子豚と思い込んで、丸焼きにして食べてしまう、だなんて、
フツー日本のジュブナイルではありえない展開ですわ。
多分作者さんは、多くのホラー中毒患者(?)たちと同様に、
食事中、にこにこ笑いながら水死体の話で盛り上がれるタイプの人かと思われる…
(親近感)
で、その傾向はこの続編にもそのまま引き継がれており、魔法をかけられた子供が、
「悪魔に食べてもらえるような立派な野菜になる」ために首から下を土に埋めていたり、
魔法ではちみつパンに変えられた子供を、他の子供が食べてしまったり、
雲の上で暮らすうちに全身真っ白になってしまった男が、自分の色を取り戻すため、
色つきのものを片っ端から食べてしまう(おそらく人間も!)など、
「人間が人間を食す」タイプの残酷なエピソードがテンコ盛り。
また、登場人物がみんな一癖二癖あって、常に主人公の味方ってわけでもないところも、
大人のシビアな目線の物語だなーと感じます。
利益の方向が一緒なときは味方でも、何か起こればあっという間に離反しちゃう
みたいな。
よくある、主人公に何故かみんなが共感し、その働きを助けるために一致協力する、
って感覚無いの。
みんなまず自分のことを考えてて、ペギーのやることを否定はしないけど、
でも自分は自分、て感じをガッチリ持ってる。
それぞれの登場人物が「自分が主役」な感じ。
考え方に甘さが無い話だなー、と思いましたですヨ。
現実って本来こういうものかもしれない。
一応作品リスト書いとく?
ペギー・スー 魔法の瞳を持つ少女
蜃気楼の国へ飛ぶ
幸福を呼ぶ魔法の蝶
魔法にかけられた動物園
黒い城の恐ろしい謎
宇宙の果ての惑星生物
ここまでは文庫化してます。私が読んだのもここまで。
あとは単行本として、 ドラゴンの涙と永遠の魔法 があるようですー。