鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

「グリーンマイル」

2007-09-14 11:20:16 | 本(小説)
「グリーンマイル」全6巻 
スティーブン・キング 著
新潮文庫

映画「グリーンマイル」
公式サイト(日本版はすでに無いので米公式)
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最初、この本を本屋で見かけたとき「…なんだこの大量の薄い本は?」とひたすら疑問でした。
全6巻…背表紙の厚みは5ミリほど。しかも、一冊一冊がマンガ本なみの価格。
全部で…2600円、くらい?

『これ、一冊に纏めてくれたら、もっと安上がりなのに!!』
という気持ちが強くて、手に取る気にならなかった…というか。
先に映画のほうを見てスジを知り、しかもそっちが今までのキング作品映画化と比べても、
なかなかにデキが良かったので、それほど文章ベースに拘らなかった…というか。
そんな感じで…読んでなかったのですよね。

で、今回それが纏めて古本屋に出ているのを見て、一括購入。
一度読み出したら、どうせ、最後まで一気に読みたくなるに決まっているし。
しかもこんな薄べったい本…私の読む速度では多分、1冊1時間かからない。
とりあえず纏め買いして~…結局その日に全部読んじゃったよ!(笑)

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1935年のコールド・マウンテン州刑務所。
そこには「オールド・スパーキー」と呼ばれる電気椅子が置かれていた。

老人のための施設に入所しているポール・エッジコムは、かつてコールドマウンテン刑務所の
Eブロック看守主任を務めていた。
Eブロック…それは、死刑囚が、最後の短い余生を過ごす場所である。
そこで1935年に起こった出来事…一人の死刑囚にまつわる奇跡と真実について、
ポールは拙い記憶を手繰り寄せながら、記録にとどめていく。

巨大な黒人の凶悪犯罪者、ジョン・コーフィ。
知能もそれほど高くないらしいこの男の罪は、いたいけな双子の少女を強姦し虐殺したことだった。
ポールは、最初からこの黒人がそれほど凶悪な犯罪を犯すようには見えない、と感じていたが、
自分の病気を、コーフィが不思議なちからで直してくれたのを切欠に、さらにその疑いを強める。
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感想は「映画版は本当に内容・イメージ共、原作に忠実に作ったんだなぁ」と。

超有名な「シャイニング」「キャリー」「ペットセメタリー」「バトルランナー」
「炎の少女チャーリー」「スタンド・バイ・ミー」「クリスティーン」「ミザリー」「IT」
「痩せゆく男」「ドリームキャッチャー」等々!
今まで、キング原作で映画化した作品は山ほどあれど。
一部のものを除いて、その多くは「なんでやねん!」と文句つけたくなるような…
とくにバトルランナーなんかは、原作と読み比べると、その差にガクゼンとしますよ~

でも、小説家スティーブン・キングはやっぱり好きですね。
本当にストーリーテラーと呼ぶに相応しい作家は、現代において、彼だけなのではないでしょうか。
容赦なく「人間」というものをありのままとらえる視点、残酷な描写とスパイスの効いた風刺。
強烈な皮肉と当てこすりは、そのまま「お前はそれを許すのか?」と読者へ向けた問題定義へ。
そして、その裏側に流れる、静かな優しさ。うわっつらだけではない、本当の友情や信頼。
時に作中に垣間見る、諦観にも似た思いやり。
読んだ人間ごとに全く違う感想が出てくるだろう、懐の深さもさすがー。

主人公・ポールを助けてワキを固めるブルータスを初めとした看守たちが、またカッコいいのさー。
そして、それらの善なる人たちと対照的な、戦慄するような悪役たち。
正直、凶悪殺人犯であるエディより、パーシーのほうが余程邪悪に感じるのは何故でしょう?
そして、案外世の中、こういうタイプ多そうだよなー、なんて思ってみたり。

もちろん、キング作品ですから、いろいろ容赦ない残酷描写もあるわけですが
(映画を見た人は、その辺わかってるよね?)それを超えても読んで欲しいなーと。

で、最初に文句ぶーぶー言っていた分冊の経緯は、1巻の最初で書かれているのですが、
それならそれで! もっと装丁に力を入れてくれればいいのに!!
ふつーのペーパーバックと同じカタチであの薄さ・あの分冊はあんまりざんす。
もっと安っぽい、読み捨てっぽい感じの装丁で(こんな要求すんの私だけ?)
その分値段安くしてくれよー。

本編には関係ないけど。 ちょっと好きな話。
キング自身がシャレが通じる方でもあるようで、今回のグリーン・マイルの序文には、
彼の執筆途中の長編「ダーク・タワー」の続編を急かすファンレターについて書かれた一文が。

『…鎖で縛られたテディベアのポラロイド写真を同封したものがあった。
添えられた手紙には、新聞の見出しや雑誌の表紙から切り取った文字をを組み合わせて、
こう記されていた…「いますぐ暗黒の塔の続巻を出版しろ。さもないとこの熊の命はないぞ」』

…このファンレター(?)を送った人間サイコー!



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