鼠喰いのひとりごと

DL系フリーゲームや本や映画などの感想を徒然に

「動物園の鳥」

2007-08-01 06:55:19 | 本(小説)
「動物園の鳥」坂木司
東京創元社 創元クライム・クラブ

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図書館で借りてきたー。
例によって例のごとく、「鳥」の一字でたまたま手に取ったってだけなんだけど(笑)
で、内容はといえば「桜井京介」を彷彿とするタイプのミステリ(?)小説。
そしてなんとシリーズ三作目にして、シリーズ完結編(汗)
(シリーズ前作は『青空の卵』『仔羊の巣』)
シリーズもので初めて読む本が完結編だなんて、私はなんという邪道な真似を…(ガクリ)

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ひきこもりの探偵・鳥井真一と、それを支える友人、坂木司のもとに、
過去の事件でかかわりを持った木村栄三郎が、友人高田安次郎を伴い、相談事を持ち掛けてきた。
高田がボランティアとして働いている動物園で続けざまに起きる、野良猫の不審な怪我。
それを気にかけ悲しむ、周囲の人間関係から浮いた存在の若い女性ボランティア。
その謎をとくために、二人は動物園へと向かう。
そこで再会したのは、奇しくも、かつて、鳥井の引き篭もる原因を作った存在だった。
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さて、ミステリ…とはいうものの、別に殺人事件が起こるわけじゃなくて、
日常の中の謎解きを通してみた、人間観察というか、心理分析本に近い感じ。
あ、最初に「桜井京介」と言ったのは、探偵役の鳥井くんと桜井のキャラが近い感じだからであって、
物語のつくりや何かが似てるってわけじゃないっす。
あと…似てるのは多分、作者のイメェジ。
わざわざ男文体であとがきを書く篠田さんと、どっか似た匂いがするのよ。
司という、作者と同じ名前をつけられたキャラは、物語の中では男性ですが…
…えーと、書いてるのは女性…なのかな? 多分?

こう書くと偏見かもしれませんが。
男性は、ここまで人の感じ方考え方をセンチメンタルに分析しないと思います。
んー、いや、心理分析的なものを書く方も、もちろんいますが…視点がなんか違うんだな。
「黄泉がえり」を書いたSF作家の梶尾さんも、男性にしては叙情的な物語を書きますが、
やはり、女性の感性とはどこか違うし。
あと、出てくる女性キャラが妙にみんな強くて凛々しくて媚びないところ?
(…こんなこと書いて、モロに男性だったらどうしよう)

物語は、読みやすくて、それなりに面白かったですよ。
ああでも、物語・人物像がいささか甘めなので、リアリストな人には向かない。
あと、ミステリと思って読んではいけない。多分物足りなく感じると思う。
主人公を取り巻く人たちは皆、妙に冷静で客観的で善良でお利口で、
全員が主人公と鳥井をとても大事に考えていて…
舞台は全て、彼らのために誂えられた優しい揺りかごって感じ。

物語の「コーヒーに砂糖おおさじ3杯」的な甘さは、いろんなレビューで叩かれているのだけど。
確かに読んで「こりゃ無いよな」と思う反面…
ひきこもりの人が本当に望んでいるのは、こういう環境なのかなぁ、と思ってしまう。
優しく受け入れてくれるひとたちと、慰めと。
それは、あまりにもご都合主義の楽園とわたしたちの目に映るとしても、
ある種の傷ついた人たちにとっては、そういった無条件の愛情の中で自分の存在を肯定することが、
世の中のいろんなことに立ち向かう力を得るために必要な基盤にもなるわけでー。

うん、まぁ、そんなようなことを考えていました。

しかし、なにしろシリーズ最後の作品を先に読んじゃったからなぁ。
案外、前ニ作を先に読んでれば、これが自然な流れに感じられるのかな。

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