国分寺の駅を出て、南口のバス通りを歩いてゆくと、やがて左手に、たくさんの蔦に覆われた古ぼけた家屋が現れる。店の扉を開けると、時間の流れが止まっているかのような、ゆったりした空間。扉が閉まり、喧騒がシャットアウトされると、すれ違うように耳に入ってくるBGMの音質が心地よい。
ほんやら洞というお店の歴史は、他にも詳しいサイトが幾つか見つかるが、簡単に紹介すると、京都の出町柳にあった同名の喫茶店をルーツとして、同様のコンセプトで1974年にオープンしたのが、この国分寺のお店だ。京都のほんやら洞は、岡林信康さんや中川五郎さんのライブが行われたり、朗読会が行われてCDになったりもしたことから、関西フォークの拠点としても名が知られている(現在は火災により閉店)。
こちらのお店は、女性フォークロックの草分けで“女性ボブ・ディラン”とも形容されたシンガーソングライター、中山ラビさんが現在もオーナーを務めている。
野狐禅というフォークユニットをやっていた頃は、遠藤ミチロウさん、あがた森魚さん、なぎら健壱さん、遠藤賢司さんなど、たくさんのフォークの伝説の方々に出会ってきたけれども、カレーを通じて出会うというケースは初めてだ。というわけで、ちょっと緊張してしまったけれども、ラビさんは昼間は不在らしい。ちょっと残念な思いを感じながら、スパイシーチキンカレー、850円を注文。
カレーはサラサラとしたスープ状で、大き目のお皿になみなみと注がれている。そこに小島のように、レーズンの載ったライスがちょこんと浮かんでいる。
しっかりと時間をかけて煮込まれているのだろう、繊維質を感じるカレーは、複雑なスパイスの風味がピリリと舌を刺激して、濃厚なコクのあるカレーを引き締めている。そのスパイスの奥に、チキンと玉ねぎの甘味もしっかり感じられる。ライスも、このカレーの海にあってちょうどいい硬さだ。舌触りはやや辛めといった感じだが、気づくとじんわり汗をかいていることに気づく。
つけ合わせで供される玉ねぎのアチャールもまた美味しくて、トータルで非常にレベルの高いカレーだ。都内でも屈指のカレーと言っていいだろう。
「ほんやら洞」(国分寺)
東京都国分寺市南町2-18-3 B09
042-323-4400
12:00~25:00
定休日:なし
★★★★