油揚げでネギ味噌チーズ焼き
今回の男の料理は一度に三種類も作るのだ。
油揚げでネギ味噌チーズ焼き、照り焼きつくね、ディップを作って野菜を食べる、の三つだ。
先生は最初に三つの料理の作り方を説明した。
三種類を同時進行で作るそうだ。
俺は一つの料理を作り終えてから、次の料理を調理するのでなければ、頭が混乱して理解出来ない。
『ディップ』と言われても何のことだか分からない。
だから、俺は他人の真似をしながら、野菜を切ったり、鶏の挽肉に片栗粉などを入れてこねたりした。
ネギをみじん切りにし、味噌、砂糖、みりんを混ぜて、ネギ味噌を作った。
これを三人で味見をした。減塩に慣れている俺は辛いと思うが、他の二人は甘いから味噌をたした方が良いという。
意見が分かれた。多数決で味噌が追加されてしまった。
油揚げをフライパンでこんがり焼き、その上にネギ味噌をぬり、チーズをのせて、レンジで焼くのだ。
チーズはうどんを短く切ったような形をしている。こんなチーズを俺は初めて見た。
チーズを山盛りにしてのせた。
俺は減塩を考えて、自分用の油揚げにネギ味噌を薄くのばしてぬった。
そして、目印に油揚げの隅に菜箸で穴をあけた。
他の二人はたっぷりとぬった。
レンジから取り出してみたら、チーズが溶けて目印にした油揚げの穴がふさがっている。
どれが、俺の減塩味噌チーズ焼きか、分からなくなってしまった。
だから、適当なのをとってお皿にきれいに盛り付けた。
全員で調理台をテーブルにして食べた。
俺はお箸で油揚げのチーズを寄せて、菜箸の穴があるか調べた。
穴はない。
俺の所に来たのはネギ味噌をたっぷり付けたものに違いない。
仕方がないから、食べることにした。
しかし、驚いた。
ネギ味噌をたっぷりつけた油揚げはとても美味しいのだ。
ということは、俺の作った『減塩油揚げ』を誰かが食べているのだ。
さぞ、まずいだろう。
俺は黙って自分の皿の『油揚げでネギ味噌チーズ焼き』食べた。