女房は久しぶりに女子会でランチするという。
布切れで小物を作って遊んでいるサークルの仲間と出かけるそうだ。
どこで食事をするのかとたずねたら、なんとウナギで有名な料亭ではないか!
ウナギのランチだったら安くても3,000円はするだろう。
高いウナギを食べるのかと聞いたら、ウナギにするか、別の安いものにするか、皆で相談して決めるという。
安い料理だってあると思うというのだ。
しかし、あの料亭では、かけそばとか、きつねうどんなどの安いものが、あるはずがない。
女房は今朝の食事で使った食器を洗い、水切りかごに入れたまま出かけて行ってしまった。
残された俺は食器を拭きながら、お昼をどうしたらよいかと悩む。
俺の得意な料理は、「ゲゲゲの鬼太郎の目玉おやじライス」だ。
俺が名付けた「目玉おやじライス」とは、お茶碗にご飯をよそって、梅干を一つトッピングするだけのものだ。
しかし、これでは物足りない。
俺はスーパーの弁当にしようかと頭をめぐらす。
スーパーの弁当だと、女房の高級ランチに対して、500円か。
みじめだなあ。
そこで俺は外食しようと考えた。
俺と女房が二人で行くことのある韓国料理店へ、今日は俺一人で出かけようと思う。
そして、また考える。 この店のカルビランチは、千円でおつりがくる。
3回食べてもウナギの値段には追いつかない。
もっと高級なところへ行こう。
俺は、一度も入ったことのないイタリアン料理の店へ行くことにした。
いかにも高そうな造りのレストランなので、入ったことはない。
俺は度胸を決めてお店のドアを開けた。
すると、客は誰もいない。ランチタイムなのに誰もいないのだ。
コックが出てきて席へ案内してくれた。
店員はコック一人だけだ。
20席ほどあるお店に客は俺一人だけだ。
コック兼ボーイがメニューを持ってきた。
ランチタイムのメニューは1,600円、から3,200円だ。
女房と釣り合いの取れるメニューは3,200円となる。
しかし、高いものを注文する気になれず、一番安いものにした。
最初に、冷たいトマトのスープが運ばれてきた。
次は大皿に「サラダグルマンデジーズ」というものがでた。
メニューを見て、初めて知った名前だ。
トマトを小さく切ったものや、ハーブやレタスや、玉ねぎ?、その他、
チーズらしきものなど、食べたことのないものが少しずつ盛り付けてある。
次にメインのパスタだ。
トマトやハーブ、小エビなどがからめてある。
最後にデザートとコーヒーが出た。
食事を終えても、客は俺一人のほかに誰も来なかった。
きれいなお店だ。 静かだ。
CDから小さな音で音楽が流れている。
高級ワインのメニューがある。 夜には客が増えるのだろう。
昼間だったら、ここは一人静かに物思いにふけりながら食事をする人には、最適なところだ。
俺は物思いにふける。
今日の女房達7人は、ウナギを食べながら、うるさくおしゃべりをしていることだろう、と。
そして、それぞれの旦那たちはどんなお昼をとっているのだろうか、と。