絵画指導 菅野公夫のブログ

大好きな絵とともに生きてます

画家の力量2

2013-01-15 | 美術
画家の力量について考えている。

風景画、静物画、人物画と分けて考えた場合、面白いことがある。
美大を出て来た人は、人物や静物が得意だけれど、風景が苦手だという人が多い。
その逆に素人で始めた人は風景画が得意で、人物は苦手だという人が多い。

これは、それぞれどの分野を一生懸命追究してきたかが違うだけの話なのだが、後者は素人だからと言っている。
やはり、美大を出て勉強してきた人には敵わないよと言う。人物が描けるかどうかという点は、描けない人にとってはかなりのコンプレックスなのだ。

私もつい、人物が描けなければ本当に力があるとは言えないと思ってしまう。
それだけ、人物が描けるようになるには、時間と訓練が必要で、かなりのデッサン力が要求されることではある。

しかし、裏を返すと、人物が描ける人は、その自分の絵のレベルに見合う風景が描けないととても恥ずかしくて見せられないというプレッシャーを感じることも確かだ。だから、風景を描かないでいると、いつまでたっても人に見せられる風景画にならない。

それもやはり、本当には力があるとは言えないと思う。

画家の力量という場合、私はこれら全てをトータルしてその画家の力と思っている。

それで、最近言いだしたのだが、風景画力、静物画力、人物画力という言葉を使い始めた。
もっと言えば、抽象画力というものも加えたい気がする。
これらの総合力で、その画家の力と言いたい。

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実は、今上げた力には、その背景にデッサン力と構成力と色彩力がある。
どの絵にも、この三つは共通して必要なことである。

画家がどのくらいの力量であるかという場合、私は以上の力を総合して考えたいと思う。

また、審査員をする場合、これらの総合力を持った人にやってもらいたいと思う。
その力を判断するバロメーターは、その人が教えている人たちの絵である。
その画家が全ての絵を描かなくても、生徒たちは様々な絵を描く。
どの分野の絵を描いたとしてもそれを教えられる画家ならば、審査を任せても問題ない。
人物は描けるけれど、風景はどうもという人、その逆に風景は描けるけれど人物はどうもという人、
これらの人には、まだ審査をする力量がないと判断するべきではないだろうか。

描けなくても見る力があればというかもしれない。しかし、それは説得力がない。
描いて示せなくては、言う言葉も説得力を持たない。
描いて直してやれるくらいの力量を持つべきだと思う。








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画家の力量

2013-01-15 | 美術
画家の力量ということを考えてみたい。

展覧会で特選を取る。すごいねと言われる。確かになかなか取れないので特選は凄い。
しかし、では、特選にならなかった人より特選になった人の方が力が上かというとそうではない。

実は、私が教えていると、まだあまり力があるとは言えないのに、特選を取ってしまうことがある。
昨年の麓原展での東京のSさん、群馬県展でのAさん、お二人とも初めて描いた水彩画である。
このお二人が、他の画家より力があるから特選が取れたのだと考えたら大きな間違いだろう。

実は今回、私はある人から「菅野先生に教えてもらうと、みんなそうなるのですか?」と質問された。
誰でもそうなるなら、そうですと答えてもいいが、そういうわけではない。だから、その答えは、「うまく騙されてくれるとそういうこともあるんです」と答えた。

今回のSさんは、静物のモデル組みにかなりの時間をかけた。私が良いと言うまで、何回もやり直した。
色をつけてアドバイスをした回数より、モデル組みの方が多かったかもしれない。
モデルが完成した時は、写真そのままでももう既に良い絵になっている気がした。
後は、写真を丁寧に写し取るように描くだけで、良い作品になっていった。
最後の最後に、生かす殺すを教えた。写真をそのままでは、ややうるさい部分があり、地味に暗く落とすだけで、主役を目立たせることができた。

Aさんの場合は、あまり色がたくさんなかったので、モノクロ調で行ったことが成功した。その方法ならデッサンの勉強がそのまま生かせる。選んだ題材が良かった。それは、たまたま物置にあったものである。絵を描くために特別に高価なものを買ってくる必要はない。生活の一場面のあるもので、料理した感じである。
モデル組みは、私と本人とお母さんでいろいろ話しながら決めて行った。

画家の力量を考えた時、どんな絵を描くときにも、デッサン力が必要である。それと、構成力、色彩力ということを言い始めた。
色彩力は、あまり以前は言わなかったけれど、構成力は以前から言っていたことである。

デッサン力は、まだとても美大に合格できるような力はない。構成力も知らないに近い。色彩力はほとんど経験がないのだから、無いに等しい。
それでも、言われるままやっていると、その力でも特選になることがある。
お二人とも何が良かったのかというと、私のアドバイスを受ける姿勢である。
言われることに素直に反応する。適当にやらない。自分勝手にやらない。
その辺の姿勢が良かった。

初心者の場合、自分がありすぎると、大抵は上手くいかない。素直な人ほどうまくいく。
だから、上手くはまってくれたということだろうか。
上手く騙されてくれるとそうなることもあるというのはそういう意味である。

Aさんは、いつもやり足りなかった。だから、指導がしやすかった。行きすぎると取り返しがつかなくなることがあるからだ。

自分でこうしたいというのは、申し訳ないけれど、とんちんかんなことが多い。
だから、私がいくら教えても、ダメだなと思う人もいる。我が強すぎる人はダメである。
言うことを聞かない。

最終的には、自分の絵なのだから好きに描いていいんですよと私は思うので、我の強い人は、
どうぞ、お好きなように描いてくださいと言って、突き放す。これはしかたがない、本人の自由なのですから。

ただ、良くなりたいと思う人、私から何かを学び取りたいと思う人は、素直に話を聞いて指導される通りに一度はやってみるべきである。

画家の力量ということで書いているが、展覧会で賞を取ることと、画家の力量は必ずしもイコールではないと思うので、書いてみました。





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