イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

入場料を払った価値はあり、建築史の見本帖ウィンチェスター大聖堂

2023年12月16日 23時09分57秒 | ロンドンとイングランド南部

イングランド南西部の古都、ウィンチェスタ ー Winchester の名所、ウィンチェスター大聖堂 Winchester Cathedral、続きです。

12ポンドの入場料を払って二十数年ぶりに入りました。(前回の記事参照)

「年間パスポート」でもある入場券といっしょに手渡された案内リーフレットを手に1人で見学してまわるつもりでしたが、ちょうど無料ガイデッド・ツアーが出発するところだったので、参加することにしました。

少人数グループで、充実した内容のツアーでした。

32年前にも参加したガイデッド・ツアーです。内容は、ほぼ同じだったように記憶しています。

英語力も知識も向上している今、いちおう分かったつもりだった当時よりもずっときちんと説明が頭に入ったことが嬉しい驚きでした!

大聖堂の建築が始まったのは1079年、ノルマン時代です。

征服者のノルマン人は、イングランドでキリスト教の布教が始まったアングロ・サクソン時代のものすごくたくさんの教会を取り壊して、自分たちのヨーロッパ大陸式のやり方(ロマネスク)でいちいち建て直したそうです。

(ノルマン様式は、そのヨーロッパ大陸式の建築様式のイングランドでの呼び名です)

イングランド独自の建築様式であるアングロ・サクソンの教会がほとんど現存していないのは、ノルマン人の この「こだわり」のせいだそうです。まあ、ノルマン様式の建築もあまり残ってはいませんが。古いですから!ボロッちくなってきたら、新式の様式で建て直したくなるのはいつの時代も同じですね。

 

入口を入ってズッドーンと見渡せる長い長いネイブ(身廊)部分は14世紀の改築です。

 

当時のウィンチェスター司教のウィリアム・オブ・ウィカム(通称)という人の発案で、当時ヨーロッパ中ではやりの「垂直様式 perpendicular(後期ゴシック)」に建て替えられました。

正面入り口です☟

 

大聖堂の付属施設(創設当時)で、リシ・スナク首相の出身校、ウィンチェスター・カレッジ Winchester College を創設したのもこの人だそうです。

ウィリアム・オブ・ウィカムのお墓です。

チャントリー chantry (廟?)という墓室におさまった石棺に彫刻された本人の遺体の枕元の天使と、足元のマンガのキャラクターようなずんぐりむっくり修道僧がかわいいでしょう?

 

「史蹟アトラクション」のように入場料をとるウィンチェスター大聖堂、もちろん英国国教会の「司教の座」を有するちゃんと現役の宗教施設です。

見学中、数時間おきのお祈りの時間になりました。もちろん無視してもぜんぜんかまわないのでしょうが、ガイドさんが座るように促したので、5分ぐらい堂内アナウンスで流れてくる「主の祈り」を黙とうして聞くはめになりました。

クラシック・コンサートでもあったのでしょう。ミュージシャンがリハーサルをしていました。

そうそう、30年ほど前(入場料をとる前)はネイブに並ぶ礼拝用の椅子は全て伝統的な造り付けでした。

今回行った時は、不要な時は重ねて別の場所に収容できる集会用の木の椅子が並んでいました。ウィンチェスター大聖堂、お前もか?!

このごろ宗教施設ではおなじみの、椅子を片付けて広大なスペースをイベント等に(もちろん有料で)貸し出せるシステムにしたようです。史跡の修復保存にかかる費用は莫大でしょうから。

繊細で優美な垂直様式はとにかく荘厳!

 

アングロ・サクソン時代の建築物がほとんど残っていない現在、イングランド最古の(現存する)建築様式、ノルマン様式の建築物はすっごく貴重です!

ネイブから両側に直角に伸びている「南北トランセプト(袖廊)」が、1,079年に建造されたノルマン様式そのままに残っています。

上の全景写真の、右側、横に長く伸びているのがネイブです。トランセプトというのは真ん中よりちょっと左寄りの三角屋根の3層に分かれ突き出した部分です。

 

トランセプトの内部です。

ノルマン様式はどこもかしこも素朴でどっしりしているでしょう?

天井も平べったい板張りで単純な連続模様が描かれていて...ネイブの凝ったファンボウルティング fan vaulting という扇のように広がる筋状の天井装飾と大違い。

静謐で重厚...悪く言えば粗削り。

そう言えば、説明がなかった(あるいは聞きのがしたのか?)このキリスト像はなんだろう?十字架がない、あ、ハダカではない!

たぶん、現代アーティストの作品だと思うのですが、調べられませんでした。よく古い宗教建築で見かける、とってつけたように飾ってある宗教モチーフの現代アートって「ジャマ」(個人的感想)なことが多いのですが、これは素朴なタッチがけっこうサマになっていました。

ノルマン時代の壁にはどっしり厚みがあります。

建築技術があまり進んでいなかったので重い天井を支えるのにしっかりした壁が不可欠だったからだそうです。

壁の厚さを利用してアーチの内側を二重、三重の層に装飾するのも特徴です。

ところで、私がウィンチェスターに住んでいた32年前も、マンチェスターに移った後、何回か友人を訪ねてウィンチェスターに戻ってきた時も、とにかく大聖堂の入場が無料だった25年ぐらい前までいつ行ってもこのあたりは修復中でした!足場が組まれていて通り抜けられなかったはずです。この部分を見たのはこれが初めてでしたから!

ついに見た、11世紀のノルマン建築!感慨無量です。

段差が多い場所です。車いすの見学者が行き来できるようにちゃんと完備された車いす用のリフトが使われるところも見られました。

 

ノルマン時代のトランセプト見学を終え、「レトロクワイヤ retrochoir 」という、イングランドの大聖堂にはめったにない「おまけ」の部分(こっち側)に入るところです。

このレトロクワイヤというのは、1200年代の「アーリー・イングリッシュ・ゴシック様式 (初期イングリッシュ・ゴシック)early English」 の改装で...ややこしい...!扇の天井のネイブ部分(1420年頃完成)より時代が上がります。

大聖堂の心臓部(交差部)である「チャンセル chancel /クワイア choir(内陣)」ももちろん見学しました。

長くなるので...次回に続きます。

 

コメント (6)
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