先日の福井新聞に、福井の希望シリーズとして、福井には働きやすい環境があるという記事が出ていた。いわく、福井出身の県外在住者は帰ろうにも地元には仕事がないと言うが、県内にいる人は県外に比べれば働いている傾向がずっと高い。すなわち、福井は仕事こそ減っているが、働きたい人が働き続けられる環境があるとのことである。
福井の対外的な宣伝としてはそう言ってもいいだろう。必ずしもウソではないのだから。しかし、福井の就業率が高いのは、たぶん女性の就業率が高いことと、社長が多い=自営業が多いこと、大学生が少ないことが主な理由であると思われる。Uターンする価値のある仕事がたくさんあるかどうかとは別の話である。
福井の教育力を背景に、高い学力を身に付け、県内の大学では物足らず、実力に合った県外の大学で学び、さて福井で就職をと思ったときに、どんな仕事でも就ければそれでいいと思うだろうか。努力と引き換えに身に付けた知識や能力にふさわしい企業に就職したいと思うのは当然であろう。
そうしたときに、たぶん公式には認められないのだろうが、福井県にはそういうニーズに耐え得る企業が少な過ぎると思う。もちろん優れた技術を持つ企業や急成長している企業はたくさんあるのだが、大学生の目はそうしたところにはなかなか向かないのだ。「魅力のある」就職先が必要である。
どれだけ教育力が高く、どれだけ優れた人材を育てても、それが大学進学と同時に都会に流出し、そして都会で働き続け、働けなくなったころにしか福井に戻って来ないのでは福井にとってほとんど意味がない。福井は単なる都会のための人材と電気の供給地だろうか。しかも都会からまったく感謝もされていないのだ。
ふるさと納税は、所得をふるさとに還元するためのよい制度であると思うが、その程度ではとても追いつかない。都会と地方の富の再分配を真剣に考える必要があると思う。そして、その富により、発展を目指す必要がある。働きやすい環境があるという希望を持つのはいいことだと思うが、事実から目をそらして、幻想の上に立って物事を考えても発展はないだろう。
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