とんびの視点

まとはづれなことばかり

次男、立春の日に最後の持久走大会 

2017年02月06日 | 雑文
さてさて、ノルマである。今日、ブログをアップしないと早くも計画が崩れることになる。何かを書かなくてはと思いとにかくキーボードを叩くが、たんなる日記のようなものになりそうだ。

この一週間、少し風邪に捕まりつつあった。ノドが少し痛み、咳が出ていた。わが家では相方が風邪を引き、長男も風邪を引いた。僕の症状はたいしたことない。ふだんなら攻めで治そうと、ランニングをしている程度だ。でも、今回はすごく慎重にしていた。金曜日の夜に芝居のチケットを取っていたからだ。

金曜日の夜、野田マップの『足跡姫』を見に行った。宮沢りえ、妻夫木聡、古田新太など力のある役者と、野田さんの演出のすごさで、なかなか圧倒的な芝居だった。中村勘三郎への思いのつまった作品と言えば、いちおう作品を説明したことになる。しかし、それだけではなかった。じゃあ何だ、言われるとうまく言葉にできない。圧倒されたが、まだ消化しきれていない感じだ。(いまその作業に入ると、この文章は書けないだろう。だから一時、撤退)

土曜日には、次男の小学校で持久走大会があった。小学校最後の大会だ。次男は入学当初から背が低いほうだ。今でも学年男子で前から2番目。それでも2年生で足を骨折するまでは走るのが速かった。走ることが好きで、得意だった。短距離ではリレーの選手になれるくらいだし、長距離では5キロくらい平気でランニングしていた。とにかくフォームに無駄がない。いずれはフルマラソンを一緒に走ることもあるかも、などと思っていた。

しかし、骨折して数ヶ月たつと走ることがダメになっていた。折れた足をかばっている数ヶ月で、体の使い方がぜんぜん違うものになってしまった。次男としては同じように走っているつもりかもしれない。でもスピードは出ない。同級生たちは体が大きくなったり、野球やサッカーで走り込んでいる。いつの間にか、走ることが苦手と感じるようになった。

土手や公園へランニングに誘っても、「いかない」と言うことが増えた。強く誘ったり、優しく促したり、なんとかして走りに連れて行った。おまけに次男は「できない」ことが嫌いな性格だ。「できない」ことに腹を立てて努力するならよい。でも、走ることに関しては苦手意識ができてしまったのか。本気で取り組むことをいやがっていた。本気でやってもできない、そういう自分に向きあうのは大人でも苦手なものだ。それなら、本気にならないほうが言い訳の余地が残る。(本気を出せば、もっとできるはずだ、と)。

今回は小学校最後の持久走だ。「少しはがんばれ、男子で半分よりは上を狙え」と言った。多少は一緒に練習をしたが、あまり本気になっている雰囲気はなかった。それでも、大会の二日前からクラスの友達の自主練習に参加するようになった。あさ6時前、まだ暗いなか公園に集まりみんなで走る。たった2日の練習だが、気持ちにはスイッチが入ったようだ。夜には一人で縄跳びもしていた。

大会は土曜日。立春。暦の上では春だ。風もなく、とても暖かい日差しだ。ランニングには理想的だ。6年男子は最後のレース。子供たちがスタートラインに並ぶ。合図とともに一斉に走り出す。先頭の5、6人は短距離走のようなスピードで走る。(持久走は1キロなので、走れる男子にとっては長距離ではない)。走力のない人が、この集団に下手についていくと途中でバテる。

次男を見ると、半分よりは前の位置、悪くないフォームで走っている。このままのペースで走り、最後にスパートをかけられれば、12、3位には入れるかもしれない。目の前のすこし太った生徒の後ろをしっかりとついていく。悪くない作戦だと思った。でも、その生徒のスピードが落ち始め、他の生徒に抜かれ始める。他の生徒がスピードをあげたわけではないので、彼が勝手に落ちていっただけだ。しかし、次男は律義に彼の後ろを走る。そして一緒に抜かれていく。でもスピードが落ちたぶん、次男はけっこう余裕の走りをしている。

順位がどんどんと落ちる。半分よりも下の位置になった。次男は自分のおかれた状況をわかっているのか。残り三百メートルくらい。「前に出ろ」と次男に声をかける。少しずつ、スピードをあげる。前を走っていた男子を抜く。けど、それほど余裕があるわけではない。周りもラストスパートをかけ始める。がんばって何人か抜く。どうだろう、うまく半分くらいにはなれるだろうか。

最後のコーナーを曲がってゴールに向かって直線を走る。必死な表情でスパートをかけている。周りもスピードを上げるので、簡単には抜けない。前の生徒を抜こうと必死で走る次男。ああ、こういう表情を見るのは久しぶりだなと思った。彼が真剣に走っている顔を見るのはほんとうに久しぶりだ。たしかにかつてのようなスピード感はない。それでも全力で走る表情はとても良い。小学校に入学した頃の走る姿と重なって見えた。

結果は34人中17位。ぎりぎりで目標を達成した。次男も満足しているようで、言い分けめいたことも言わないし、もっとうまくやれたとも言わない。何より、走り終わった姿が楽しそうだった。小学校の最後に良い感じで持久走を終えることができた。

午後には、おいしいパンを買って、相方と次男と三人で荒川の土手に行った。立春にふさわしく、土手の日差しは本当に暖かく、風もなく、穏やかだった。芝でボールで遊んだり、犬を散歩させたり、ジョギングをしたり、たくさんの人たちが土手に出ていた。僕らは、本を読んだり、枯れ枝でチャンバラをしたりした。そして夜には、長男も加えて焼き肉を食べに行った。

やはり、何だか普通の日記になってしまった。でも、まあ、とても気持ちよい春の最初の日だった。


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次男、立春の日に最後の持久走大会 

2017年02月06日 | 雑文
さてさて、ノルマである。今日、ブログをアップしないと早くも計画が崩れることになる。何かを書かなくてはと思いとにかくキーボードを叩くが、たんなる日記のようなものになりそうだ。

この一週間、少し風邪に捕まりつつあった。ノドが少し痛み、咳が出ていた。わが家では相方が風邪を引き、長男も風邪を引いた。僕の症状はたいしたことない。ふだんなら攻めで治そうと、ランニングをしている程度だ。でも、今回はすごく慎重にしていた。金曜日の夜に芝居のチケットを取っていたからだ。

金曜日の夜、野田マップの『足跡姫』を見に行った。宮沢りえ、妻夫木聡、古田新太など力のある役者と、野田さんの演出のすごさで、なかなか圧倒的な芝居だった。中村勘三郎への思いのつまった作品と言えば、いちおう作品を説明したことになる。しかし、それだけではなかった。じゃあ何だ、言われるとうまく言葉にできない。圧倒されたが、まだ消化しきれていない感じだ。(いまその作業に入ると、この文章は書けないだろう。だから一時、撤退)

土曜日には、次男の小学校で持久走大会があった。小学校最後の大会だ。次男は入学当初から背が低いほうだ。今でも学年男子で前から2番目。それでも2年生で足を骨折するまでは走るのが速かった。走ることが好きで、得意だった。短距離ではリレーの選手になれるくらいだし、長距離では5キロくらい平気でランニングしていた。とにかくフォームに無駄がない。いずれはフルマラソンを一緒に走ることもあるかも、などと思っていた。

しかし、骨折して数ヶ月たつと走ることがダメになっていた。折れた足をかばっている数ヶ月で、体の使い方がぜんぜん違うものになってしまった。次男としては同じように走っているつもりかもしれない。でもスピードは出ない。同級生たちは体が大きくなったり、野球やサッカーで走り込んでいる。いつの間にか、走ることが苦手と感じるようになった。

土手や公園へランニングに誘っても、「いかない」と言うことが増えた。強く誘ったり、優しく促したり、なんとかして走りに連れて行った。おまけに次男は「できない」ことが嫌いな性格だ。「できない」ことに腹を立てて努力するならよい。でも、走ることに関しては苦手意識ができてしまったのか。本気で取り組むことをいやがっていた。本気でやってもできない、そういう自分に向きあうのは大人でも苦手なものだ。それなら、本気にならないほうが言い訳の余地が残る。(本気を出せば、もっとできるはずだ、と)。

今回は小学校最後の持久走だ。「少しはがんばれ、男子で半分よりは上を狙え」と言った。多少は一緒に練習をしたが、あまり本気になっている雰囲気はなかった。それでも、大会の二日前からクラスの友達の自主練習に参加するようになった。あさ6時前、まだ暗いなか公園に集まりみんなで走る。たった2日の練習だが、気持ちにはスイッチが入ったようだ。夜には一人で縄跳びもしていた。

大会は土曜日。立春。暦の上では春だ。風もなく、とても暖かい日差しだ。ランニングには理想的だ。6年男子は最後のレース。子供たちがスタートラインに並ぶ。合図とともに一斉に走り出す。先頭の5、6人は短距離走のようなスピードで走る。(持久走は1キロなので、走れる男子にとっては長距離ではない)。走力のない人が、この集団に下手についていくと途中でバテる。

次男を見ると、半分よりは前の位置、悪くないフォームで走っている。このままのペースで走り、最後にスパートをかけられれば、12、3位には入れるかもしれない。目の前のすこし太った生徒の後ろをしっかりとついていく。悪くない作戦だと思った。でも、その生徒のスピードが落ち始め、他の生徒に抜かれ始める。他の生徒がスピードをあげたわけではないので、彼が勝手に落ちていっただけだ。しかし、次男は律義に彼の後ろを走る。そして一緒に抜かれていく。でもスピードが落ちたぶん、次男はけっこう余裕の走りをしている。

順位がどんどんと落ちる。半分よりも下の位置になった。次男は自分のおかれた状況をわかっているのか。残り三百メートルくらい。「前に出ろ」と次男に声をかける。少しずつ、スピードをあげる。前を走っていた男子を抜く。けど、それほど余裕があるわけではない。周りもラストスパートをかけ始める。がんばって何人か抜く。どうだろう、うまく半分くらいにはなれるだろうか。

最後のコーナーを曲がってゴールに向かって直線を走る。必死な表情でスパートをかけている。周りもスピードを上げるので、簡単には抜けない。前の生徒を抜こうと必死で走る次男。ああ、こういう表情を見るのは久しぶりだなと思った。彼が真剣に走っている顔を見るのはほんとうに久しぶりだ。たしかにかつてのようなスピード感はない。それでも全力で走る表情はとても良い。小学校に入学した頃の走る姿と重なって見えた。

結果は34人中17位。ぎりぎりで目標を達成した。次男も満足しているようで、言い分けめいたことも言わないし、もっとうまくやれたとも言わない。何より、走り終わった姿が楽しそうだった。小学校の最後に良い感じで持久走を終えることができた。

午後には、おいしいパンを買って、相方と次男と三人で荒川の土手に行った。立春にふさわしく、土手の日差しは本当に暖かく、風もなく、穏やかだった。芝でボールで遊んだり、犬を散歩させたり、ジョギングをしたり、たくさんの人たちが土手に出ていた。僕らは、本を読んだり、枯れ枝でチャンバラをしたりした。そして夜には、長男も加えて焼き肉を食べに行った。

やはり、何だか普通の日記になってしまった。でも、まあ、とても気持ちよい春の最初の日だった。


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