当庵の最大の売り空間はこの大曲面の総ガラス張りの廊下だろう。
本来廊下は脇役的存在だが、ここでは圧巻の空間として
主役、メインステージになっていると思う。
今回昼の顔と夜の顔両面をアップしましたが、夜の回廊は夢のような非日常の世界に変身している。
因みにこの廊下の高さは約8mあり、解放感に溢れ、自然の中を歩いているような空間を作りだしている。
大曲面の総ガラス張廊下と同じくらい圧倒的インパクトを与えているのが
随所に芸術的表現を主張している京土壁だ。
この左官工事を施工したのは高崎市に本社がある西澤工業(株)、
そして元請施工は前田建設工業(株)だ。
このスサ入り京土壁は地元群馬の土を使用し、土壁の中にはワラ・スサ、
部分的に鉄錆のチップを入れて赤錆を浮き出させている。
自然土壁に木鏝や刷毛で流麗な模様を描き、節引き、模様仕上げなど
随所に見られる高度な職人技の数々はまさに圧巻だ。
玄関ホール正面にある墨流しのスサ入り土壁は日本初めてのもの。
又、玄関に敷かれた畳はステンレスの細かい糸を織入れたものを使用。
そして土間は斜めに張った石の間に豆砂利を洗い出した仕上げの桂離宮の「あられこぼし」と
とことんのこだわりには驚きの連続だ。
フロントデスクのペンダント照明、長短2基も好みのタイプで気に入った。
形はひょうたんの形をしていて飾りの彫り物がそれぞれ違っていて芸が細かい。
エントランス正面の腰壁に存在感の強いアールのリブ付コンクリート打放しが迫ってきた。
個人的には入口アプローチの丸窓的打放しといい、
全体的にこの打放しは素晴らしい空間に溶け込んでいない気がする。
食事処「乍茶屋」のエントランス扉には大胆な図柄の細かい組子障子が使われている。
ここに限らず様々な所に匠の技によるデザインが施されている。
曲面廊下の所に埋め込まれた消火栓器具も全体の雰囲気を壊さないように
地味なカラーに抑え、こんな所にも気配りを感じさせられた。
当庵の売りの大廊下のフローリングには4色のフローリングが使われお洒落な廊下を演出している。
又、ゆるやかな傾斜の所には滑り止めになる手斧が施されていた。
このアイディアは素晴らしい。
建物のエキスパンションジョイントの所にはこの印象を与えない為か(?)、
壁に板目の無垢板を張ってあった。
一瞬何の為の意匠かと思ったが、費用対効果の面でいくともったいない気もする。
このフィックスのガラス窓はどんな所に使われていたか忘れてしまったが
センターにあるお洒落な柄はとても上品で素敵に見えた。
たまたま行った日はご覧の様に大屋根の塗装工事をしていた。
ご当地の豪雪地帯で大雪が降り続いた時は1階が埋もれてしまう程になるそうだ。
この屋根を見ても勾配がきつく雪対策になっている。
因みに1枚目の写真を見れば大廊下の大曲面がわかると思う。
部屋の表示も和紙に墨で書かれ、人の温もりを感じさせていいですネー。
部屋の扉も2重になっていた。
外側は椿の花が3輪と金箔が施されていた。
内玄関には組子障子の引き戸になっていた。
本当に心憎い程の気配り。
手すりとしては小さめだが実用性と意匠性に富んだものを採用している。
この小さな手すりから建築関係者の思い入れが伝わってくる。
部屋付の露天風呂手前のシャワールームと部屋のトイレ。
それぞれの床には伊豆石とあたたかみのある木調CFシート。
これも納得の仕様です。
部屋エリアの廊下共有部分の京壁にはオシャレなワンポイントデザインとしてかえでと木の葉が。
ちょっとした遊び心が目を止めさせる。
部屋の間接照明器具が素敵なものを使って雰囲気を作っている。
2枚目の写真を見るとこの部屋の天井高が高いのがわかると思います。
夜のバージョンはさらに素敵な空間になっていたのでアップしました。
建築の中の光と影は大事なテーマです。
エレベーター前の柱の下の方2ヶ所にそれぞれ縄が巻き付けてあった。
これは何?
決して意匠的発想ではないと思う。
機能的(傷防止など)なものか?
このわずかなエリア面積に石、ジュータン、フローリングが、カラー的には6色も集まったおもしろいことに。
当然と言えば当然だが床に敷かれたじゅうたんの所にある点検口の所は
じゅうたんにピッタリと柄が合うようにされていて職人の心意気を感じる。
おそらくこの現場にはピーンと張りつめた空気が流れていたのだろう。
館内から庭園に出る出入口の先にアトランダムに敷かれた飛び石が
出入口空間から見ると何か生き生きした石に見えてしまう。
アプローチ、エントランス玄関サイドの妻側の左官仕上げの一部斜面リブ付の大胆な白い壁と
室内の芸術的ウエイブの壁のコントラストが庭に出ても訴えてくる。
石をくり抜いた手湯の温泉。
よく見ると温泉の中に手形が刻み込まれているという芸の細かさ。
良い意味で遊んでいますよネー。
食事処「乍茶屋」の和室の京土壁にも左官仕上げで竹と竹の子、
木の枝と天然土壁かぐや姫で絵を書き込んでいた。
入室するとビックリ。
ここまでもやるのか!
食事処「乍茶屋」の中には「SAKE Bar 蔵」というバーコーナーがあり、
この中から見た天井の空間がまた素晴らしい。
この一枚も素晴らしい夜の空間を切り取っているでしょう。
月夜の空にススキが浮き出ているみたいだ。
この季節の仙寿庵のテーマは「十五夜お月さん・・・」だ。
食事処へ行き来する回廊の脇に竹のボンヤリした光が誘ってくれる。
ここにも幽玄の世界があった。
3回にわたって書き込んだ仙寿庵全体から受けた気持ちは感動、感激、そして感謝であった。
当庵には季節の違う時期にまた来てみたいと時間が経つほどその思いが強くなってきた。