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FOUJITA (2015/日=仏)(小栗康平)  70点

2015-11-19 21:57:10 | 映画遍歴

映像が素晴らしい。ため息が出るほどだ。特に舞台が日本になると水を得た魚のごとくクラシック風音楽と混合し独特の小栗映画を供出した。

けれどこの作品の主人公たるフジタが見えない。彼の内面に入らない。世界に名だたる芸術家なのに芸術の悩みでさえ全くない。これはこの手の映画にしては珍しい。

というか、見方を変えれば変な映画でさえある。伝記映画にしているのに彼そのものを全く描かないのだ。これは映画として稀有である。それを名だたる映画作家が作った、その意味は、、。

画家を描かなかったとしたら、時代を描いたのだろうか。その答えはノンである。ただ日本版になると戦争の意味合いは、多少出ては来る。でもそれは表層的である。さらりと人の言葉を借りて囁いているだけである。

けれど、日本の自然の営みの写真、そして音、音楽、音響、録音が冴えている。でもこれらは今までの小栗の映画で我々は経験しているのだ。題名等にフジタを出してくるから我々は面食らうのである。

でも小栗とはいえ、もう早々そういうことはできないのではなかろうか、、。今生きているみんな、余裕というものがなくなってきているのではないか。そういうものを痛烈に感じた映画であります。

なお、僕が一番関心のあった、フジタが絵画における戦争責任を問われてフランスに逃げてしまう挿話には全く触れられていない。

この件に関しても、小栗は観客を裏切っている。映画であれ絵画であれ、芸術作品なんだから、芸術と政治、それに対して何らかの考えを示すべきではなかったか。

とはいえ、この映画、映像と音楽がものすごくいいんだよネ。そこだけは捨てがたい、、。


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