黒沢清、本来の現代における不気味で意味不明な狂気というものに久々に挑戦した感があり納得です。快作です。
印刷工場から転売屋へと主業を変える吉井。なるほどアブナイけれど現代的職業ではある。そんな菅田が意図しない狂気の暴力にさらされてゆくその過程、いやあ、面白かった。黒沢監督、初期、中期作品のざわざわする狂気を復活させたかのようだ。
なぜそうなるのか、原因が全く不明のまま、観客が辿る恐怖の過程は、現代という時代を象徴させるに十分だ。何気なく取った態度、言葉を選んで言ったはずの会話が相手には180度違って解釈される現代社会。これはよく経験することでもある。そうだよなと僕も日常的によく感じる。
そしてネットから派生するクラウド。決して想像上のことではないように思える。このラスト近くに延々と続くアクションはまあ目新しいところはないけれど、普通の人間がガンを持つことで強くたくましくなるという過程を見せる。菅田いい演技。さすがです。
ところがここで最後まで正体不明の奥平が主役を乗っ取ったかのような展開となり、妖気さえ感じさせるほどだ。ここがこの映画の魅力でもあり、面白いところだ。菅田がこんな無様な仕打ちを受けるのも初めて見た。これは黒沢が意図したのかどうかは不明ですが、、。
かなり黒沢の映画も見てきたが、原点に戻り、人間の、現代のホラーをシンプルに描いたのは評価したい。映画を見る喜びを久々に感じた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます