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エレニの帰郷(ギリシャ・ドイツ・カナダ・ロシア)(2008)(テオ・アンゲロプロス) 85点

2014-01-31 10:40:10 | 映画遍歴

わが敬愛するアンゲロプロスの遺作。見ることは出来まいと思っていたが、ようやく公開されて感激する。創作方法が、分かりやすい最近の諸作品から、また20年ほど前の詩情豊かなアンゲロプロス独特の混迷漂う時間・空間を超えたまさにポエムとなっているのがスゴイ。

俳優陣が今回は国際スター級であるのが目を見張る。古くは「ベルリン・天使の詩」のブルーノ・ガンツ、フランス映画の至宝ミシェル・ピッコリ、 キェシロフスキの最高作「ふたりのベロニカ」のイレーヌ・ジャコブ、鬼才ラース・フォン・トリアーアンチクライスト」のウィレム・デフォー。だからかもしれないが到底ギリシャ映画だとは思われない。語られる言語は英語であった。

今回は従来の作品に比べてギリシャ内戦を見据えた現代史がそれほど基本軸として設定されておらず、舞台はベルリンの壁まで及び世界的、有体に言えばグローバルに登場人物を移動させる。時間軸も解体され観客はまるでバラバラになったジグソーパズルを綿密にはめ込む作業を強いられている。

そこにあるのはアンゲロプロスの詩情であった。映像は霧が覆い、セリフは美しい。音楽はきらびやかだ。うとうとといつもの眠気が誘う。そう、20年ほど前のアンゲロプロスの映画群そのものである。この感覚が僕は好きなんだよなあ。まさにアンゲロプロスであります。

登場人物すべてが映像の中を駆け巡るが、彼らはすでに帰郷するところなどないことに気づくのだった。すべての事象が歴史に埋もれ、時間の塵(原題)となって現代に降り注ぐ。アンゲロプロスは死にゆくとき最後に何を見たのであろうか、、。

 


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