入谷のなってるハウス(2019/10/22)。今回の長沢哲さんのツアーでは関東初日である。
Tetsu Nagasawa 長沢哲 (ds)
Kazuto Shimizu 清水一登 (p)
Yuriko Mukojima 向島ゆり子 (vln)
最初は長沢さんのドラムソロ。タムやスネアの打面は硬く張られており、そのテンションがとても澄んだ打音を生み出している。マレットで多くの太鼓を叩き、そのときハコの中を伝わる音が縦波となって目に見えるようだ。存在がまるでマリンバである。それに加えて微細な音までが連続的につながっているシンバル音。終盤には太鼓のエッジも叩き刺激を付加した。
続いてトリオ。向島さんは摩擦音を中心に発し、長沢さんはスティックに持ち替えて、ピアノとともにサウンドを鼓舞する。やがて向島さんが楽器を持ち替えてより澄んで歌うような旋律を弾き始めてから、潮目が変わった。清水さん主導でフォーク的なうたに誘い込み、向島さんもまた呼応して実際にうたも歌った。三者がいい形で組み合い、インプロとは思えないほど曲に近づいた。
セカンドセットでは、長沢さんはぎりぎりと摩擦音を発し、ブラシもスティックも使った。先のトリオよりもスピード的な表現が重視され、そして再びうたへと接近した。
アンコールでは、やはり向島さんは摩擦音で攻める。驚いたことに、清水さんはドラムスの三連打の三番目に鍵盤を合わせ、そこから即興を発展させる。長沢さんもそれを十分に意識してか逆に呼応してみせる。そして再び向島さんが旋律を主軸に据え、清水さんも歌い、知的でも躁的でもある音世界が出来上がった。さすが百戦錬磨の人たちである。全員が全員に向けて長い拍手をした。
終わった直後にギターの小沢あきさんと息子さんがあらわれ、それではと再アンコール。深くもあり、機敏に愉しくもなるサウンドは、このトリオならではに違いない。
Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4
●長沢哲
蓮見令麻+長沢哲@福岡New Combo(2019年)
長沢哲+齋藤徹@ながさき雪の浦手造りハム(2018年)
長沢哲+近藤直司+池上秀夫@OTOOTO(2018年)
齋藤徹+長沢哲+木村由@アトリエ第Q藝術(2018年)
#07 齋藤徹×長沢哲(JazzTokyo誌、2017年ベスト)
長沢哲『a fragment and beyond』(2015年)
●清水一登
障子の穴 vol.2@ZIMAGINE(2019年)
クリス・ピッツィオコス+ヒカシュー+沖至@JAZZ ARTせんがわ(JazzTokyo)(2017年)
ヒカシュー@Star Pine's Cafe(2017年)
大工哲弘一人唄会@浅草木馬亭(2017年)
唖蝉坊と沖縄@韓国YMCA(2017年)
向島ゆり子@裏窓(2016年)
ジャスト・オフ『The House of Wasps』(2015年)
向島ゆり子+関島岳郎+中尾勘二『星空音楽會 Musica En Compostela』(2010年)
星の栖家『plays COMPOSTELA』(2005年)
川下直広『漂浪者の肖像』(2005年)