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自縄自縛日記

『南方熊楠 100年早かった智の人』@国立科学博物館

2017-12-24 20:10:32 | 環境・自然

上野の国立科学博物館で、『南方熊楠 100年早かった智の人』という企画展を観る。

南方熊楠の評価、またこの企画展の位置づけは、次の文章で明らかに示されている。

「南方熊楠は、森羅万象を探求した『研究者』とされてきましたが、近年の研究では、むしろ広く資料を収集し、蓄積して提供しようとした『情報提供者』として評価されるようになってきました。」

本展は熊楠の活動ぶりを、かれが採取した標本や、文献を書き写した膨大なノート(抜書)や、やはり膨大に描き残した「菌類図譜」などの紹介によって示さんとするものである。紹介される分野としては、菌類、粘菌(変形菌類)、地衣類、藻類などのよくわからない生物ども。

こうして自然・世界の不思議をミクロな目でひたすら観察・収集し、しかも分野間をなにかにこだわることなくつなぎおおせる。公開され自由にピックアップ可能なアーカイブであり、インターネット時代にふたたびシンパシーの対象となることはよくわかる。神社合祀への反対は貴重な鎮守の森の生物が消えてしまうことに対するマニア的な活動であり、『十二支考』などはとにかく多くのネタを集めてつなぎなおすという知的快感のもとで書かれたものだったに違いない(熊楠は、確かどこかに、『十二支考』の執筆にあたり、「締切がやばいなー、ただのコピペだと芸がないしなー」なんてことを書いていた)。しかも、この常軌を逸した分量の「菌類図譜」は、どうも、書き続けることによって熊楠が自身の精神を安定させるという目的もあったようなのだ。まさに現代。

この企画展の分野に近い『森の思想』においては、中沢新一が、80年代の雰囲気でマンダラがどうの東アジアがどうのともっともらしいことを書いている。いずれ河出文庫のシリーズもその恥ずかしい「解題」を変えざるを得なくなるだろう。

それはともかく、展示は面白い。街路樹にも生きている地衣類は、藻類と菌類とがwin-winの関係で共生して成り立っている(サンゴのようだ)。粘菌(変形菌類)も、まあよくこんなヘンなものに注目したねと思えるものばかり。そして4000点近く作成した「菌類図譜」では、また妙な形のきのこばかりが描かれ、余白にはびっしりと情報が書き込まれている。会場内で流されるヴィデオの中で、安田忠典・関西大学准教授が、「絵は下手だが情報収集量に価値がある」といった発言をしている。なるほど下手で楽しそうだ。


変形菌類


菌類


地衣類


「菌類図譜」

●南方熊楠
南方熊楠『森の思想』

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2 コメント

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Unknown (kincyan)
2017-12-26 09:19:28
これは、面白そうですね。年末までにみにいこうと思います。
Re:Unknown (齊藤)
2017-12-26 09:22:06
夢中になりますよ。地下の地衣類の展示とあわせてぜひ。

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