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自縄自縛日記

太田昌克『日米<核>同盟』

2014-10-17 00:03:53 | 政治

太田昌克『日米同盟 原爆、核の傘、フクシマ』(岩波新書、2014年)を読む。

「60年安保」の大きな改正点のひとつは、「事前協議」の導入だった。すなわち、在日米軍が日本に影響の大きい軍事行動(重要な配置の変更、核兵器などの持ち込み、日本からの戦闘作戦行動)を取ろうとする場合には、そのことを事前協議するというものだ。それ自体が曖昧で弱い制約であることが、日米の力関係を示すように見える。

それはともかく、このようなクサビが、日本の「非核三原則」の確立につながっていった、と、広く信じられてきた。しかし、それは真実ではなかった。核を搭載した米艦船については、日本にいくら長く寄港しようとも、事前協議の対象からは外されていたのである。すなわち、日本はアメリカにとっての核の前線基地として機能してきた。これが「密約」のひとつであり、民主党政権になるまで、表に出てくることはなかった。 

著者は、この「密約」が、あえて曖昧な形で形作られ、外務省の中でごく一部の者のみが継承する形で続いてきたことを、綿密な取材によって明らかにしている。首相にさえも、信じるに足ると判断されたあとで、そのことを知らされる存在なのであった。 

冷戦が終結し、核兵器を搭載した艦船が日本に来ることはなくなった。著者は、従って、もはやこの無意味で有害な仕組みを取り除くべきだとする。それに加え、兵器ではなく、動力としての核のことも忘れてはならないだろう。東日本大震災のとき、横須賀港に寄港していた原子力空母ジョージ・ワシントンは、大変な衝撃を受け、横転などにより最悪の事態もありえた(ジョージ・ワシントンに装備された原子炉2基はそれぞれ40万kW相当、ほぼ福島一号炉と同じ)。さらに原潜の横須賀への停泊という問題もあった(2009年には延べ324日)。(前田哲男『フクシマと沖縄』) 核なき世界を掲げたオバマのアメリカであれば、このことを直視しなければならない。

アメリカの核前線という観点で、日本が大量に保有するプルトニウム(使用済み核燃料から抽出)についても、捉えられてきた。技術的・コスト的に大問題を抱えていても、また、核廃棄物フローが破綻していても(使用済み核燃料『"核のゴミ"はどこへ~検証・使用済み核燃料~』)、日本が核燃サイクルを中止しようとしないことは、アメリカの意向に違いないとの忖度もなされてきた。

しかし、本書によれば、実態はそのような単純な図式では捉えれらない。すでに70年代末のカーター政権のときより、核不拡散のためにも、アメリカは日本の核燃サイクル推進を快く考えてはいなかった。いかに誰の目から見ても矛盾だらけであっても止まらなかったのは、他の大型公共工事と同様だ。それに加えて、アメリカの意を汲んでではなく、日本独自の示威能力のため、核ポテンシャルを手放すべきではないという考えを持つ者もあるという。対米追従よりももっと恐ろしいことではないか。 

●参照
『"核のゴミ"はどこへ~検証・使用済み核燃料~』
『活断層と原発、そして廃炉 アメリカ、ドイツ、日本の選択』
前田哲男『フクシマと沖縄』
鎌田慧『六ヶ所村の記録』
使用済み核燃料
『原発ゴミは「負の遺産」―最終処分場のゆくえ3』
『核分裂過程』、六ヶ所村関連の講演(菊川慶子、鎌田慧、鎌仲ひとみ)
吉次公介『日米同盟はいかに作られたか』
東海第一原発の宣伝映画『原子力発電の夜明け』
山本義隆『福島の原発事故をめぐって』
『大江健三郎 大石又七 核をめぐる対話』、新藤兼人『第五福竜丸』
有馬哲夫『原発・正力・CIA』


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