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自縄自縛日記

琉球新報『普天間移設 日米の深層』

2014-10-17 23:13:17 | 沖縄

琉球新報「日米廻り舞台」取材班『普天間移設 日米の深層』(青灯社、2014年)を読む。

現政権になってから、辺野古の新基地建設に向けた強行が、さらに過酷なものとなっている。長年に渡る住民の反対を無視し、環境アセス法をぶち壊しにし、オカネで従わせようとし、工事を強引に開始している。民主主義国家、近代国家などとはとても呼ぶことができない姿である。

辺野古は、そこまでして作らなければならない基地なのか。それが否であることはもはや明らかになっている。本書は、実状に基づき、そのことを丹念に追ったものである。

アメリカが、是が非でも作ってほしいと熱望しているものか?―――否。多くの要人が、住民の反発を増加させ、重大事故のリスクを高めるようなことはすべきではなく、別の策を講じるべきだと説いている。作ってほしいのはむしろ日本側であり、実際に、日本政府は、「復帰」直後の1973年にも、民主党政権が成立した2009年以降にも、基地が去っていかないよう工作した経緯がある。

新基地がないと、「抑止力」が機能しないのか?―――否。海兵隊が沖縄に駐留しなければならない根拠は既にない。また、アメリカは、沖縄の海兵隊をグアムやオーストラリアに移転する計画を進めている。

もう、こんなことは当たり前の常識だ。(それが常識になりきっていないからこそ、本書のような良書が広く読まれてほしい。)

そもそも、「普天間移設」という用語を使うこと自体がおかしいのであり、危険な普天間の撤退と、新機能満載の辺野古の新基地とはまったく別のテーマである(1996年のSACO合意によってパッケージ化されたに過ぎない)。「琉球新報」ともあろうものが、定着した用語だからといってこれを使うべきではないし、「危険な基地を固定化してはならないから新基地を作るのだ」という倒錯した論理の横行に、間接的に加担することにもなりかねない。

●参照
前泊博盛『沖縄と米軍基地』
屋良朝博『砂上の同盟 米軍再編が明かすウソ』
渡辺豪『「アメとムチ」の構図』
渡辺豪『国策のまちおこし 嘉手納からの報告』
高野孟『沖縄に海兵隊はいらない!』
宮城康博・屋良朝博『普天間を封鎖した4日間』
エンリコ・パレンティ+トーマス・ファツィ『誰も知らない基地のこと』
押しつけられた常識を覆す
琉球新報『ひずみの構造―基地と沖縄経済』
沖縄タイムス中部支社編集部『基地で働く』
来間泰男『沖縄の米軍基地と軍用地料』
佐喜眞美術館の屋上からまた普天間基地を視る
いま、沖縄「問題」を考える ~ 『沖縄の<怒>』刊行記念シンポ
ガバン・マコーマック+乗松聡子『沖縄の<怒>』
由井晶子『沖縄 アリは象に挑む』
大田昌秀『こんな沖縄に誰がした 普天間移設問題―最善・最短の解決策』
浦島悦子『名護の選択』
浦島悦子『島の未来へ』
新崎盛暉『沖縄現代史』、シンポジウム『アジアの中で沖縄現代史を問い直す』
『世界』の「普天間移設問題の真実」特集


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