Sightsong

自縄自縛日記

関川夏央『砂のように眠る』

2019-06-19 21:44:08 | 政治

関川夏央『砂のように眠る むかし「戦後」という時代があった』(新潮文庫、原著1993年)を読む。

戦後、地にへばりつくように生きてきた人たちの姿が、小説と評論とを交互に繰り返す形で描写されている。もっとも「地にへばりつく」と大袈裟に言ったところで、それはほとんどの人がそうであったということに違いない。そしてその中には著者も入っている。著者の「実感」は、体験したという重さと時代とに縛られている。それゆえ、四半世紀前に書かれたことの古さをどうしても感じてしまう。

小田実が勢いにまかせて活動したこと、しかし後で振り返っての内省が乏しかったことは、きっと的を射ているだろう。しかし、60年安保の反対運動の盛り上がりについて、あたかも若者が反対するという自己満足をしたかっただけだと言わんばかりの記述は、悪い意味で「実感」に引きずられたものだ。たとえば、「父親は南京でそんな事件を見なかったと言っていたよ」という雑さと何が違うのか。


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