Sightsong

自縄自縛日記

ポール・オースター『冬の日誌』

2017-04-27 21:58:48 | 北米

ポール・オースター『冬の日誌』(新潮社、原著2012年)を読む。

「冬」すなわち老境に入ってきた作家による、自伝的な作品である。

さまざまな状況や事件があった。怪我。両親の離婚。貧乏と困窮。引っ越し。性欲。恋愛。確執。結婚。離婚。愚かな行い。大事故。偶然。

そのひとつひとつが記憶に刻みこまれ、偶然という意味や無意味という意味を与えられる。まるで偶然と必然とが支配し、時々刻々、同じものがふたつとない物語を創ってゆく野球のように。これを読む者は、間違いなく、要素の数々を刻み付け縒り合わせるプロセスを自分のものとしてとらえることだろう。

「ニューヨーク三部作」に魅せられてから長い時間が経つが、オースターを読み続けてきたことにも大きな意味があった。「生きていることも悪くはない」と思えてしかたがない。

●ポール・オースター
ポール・オースター+J・M・クッツェー『ヒア・アンド・ナウ 往復書簡2008-2011』(2013年)
ポール・オースター『Sunset Park』(2010年)
ポール・オースター『Invisible』(2009年)
ポール・オースター『闇の中の男』再読(2008年)
ポール・オースター『闇の中の男』(2008年)
ポール・オースター『写字室の旅』(2007年)
ポール・オースター『ブルックリン・フォリーズ』(2005年)
ポール・オースター『オラクル・ナイト』(2003年)
ポール・オースター『幻影の書』(2002年)
ポール・オースター『トゥルー・ストーリーズ』(1997-2002年)
ポール・オースター『ティンブクトゥ』(1999年)
ポール・オースター『リヴァイアサン』(1992年)
ポール・オースター『最後の物たちの国で』(1987年)
ポール・オースター『ガラスの街』新訳(1985年)
『増補改訂版・現代作家ガイド ポール・オースター』
ジェフ・ガードナー『the music of chance / Jeff Gardner plays Paul Auster』


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