Sightsong

自縄自縛日記

グラウベル・ローシャ『アントニオ・ダス・モルテス』

2011-07-13 23:18:59 | 中南米

渋谷で若松孝二の映画を観るつもりが、急に気が変わって、グラウベル・ローシャ『アントニオ・ダス・モルテス』(1969年)を観る。ユーロスペースは今ではシネマヴェーラと同じビルにあるのだ。(昔の閑散とした方面を歩く方がストレスがたまらなかった。)

生きるために相手を必要とする殺し屋アントニオ。義賊と決闘して倒すが、歌い踊り狂う民衆たちや聖女に囲まれ、かたや町の権力者たる大地主や倦世感を剥き出しにしたその妻を目の当たりにし、アントニオは滑稽なほどの勢いで改心する。地主の雇った殺し屋との対決、活劇的な勝利。

文字通り狂乱の時空間が凄まじい。アナーキーによってアナーキーを超え、そしてアナーキーと静寂という矛盾する域に至る。ハズレ者アントニオは再びハズレ者へと回帰し、どこかへと歩いていく。そこには無間地獄が見える。

当時ATGによって配給された作品であり、機関誌『アートシアター』に、山田宏一がこのように書いている。

「『アントニオ・ダス・モルテス』には無限の解釈が可能であり、あらゆるアプローチが許されてはいるが、同時に、なにを言っても見当はずれになるだろう、といった暴力性がある。」

●参照(ATG)
実相寺昭雄『無常』
黒木和雄『原子力戦争』
若松孝二『天使の恍惚』
大森一樹『風の歌を聴け』
淺井愼平『キッドナップ・ブルース』
大島渚『夏の妹』
大島渚『少年』


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