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自縄自縛日記

鶴見和子『南方熊楠』

2022-04-16 07:36:43 | 思想・文学

鶴見和子『南方熊楠』(講談社学術文庫、原著1978年)

南方熊楠と柳田國男との違いについて幾度となく言及しているのがおもしろい。南方は地方の定住者として地方を見、そこから中央を見た。柳田は中央の役人・学者として中央から地方を見た。それゆえに柳田の言説においては地方は安住の地を与えられず、逆に普遍に向けて拡散した。南方はただの博覧強記の人ではなく無数の断片を参照することで世界を見る人だった。

柳田は晩年に『海上の道』において琉球を日本の原型であるという願望論を展開するわけだけれど、なるほど、それも納得できるというものだ。そういえば、この物語的学説について、村井紀『南島イデオロギーの発生』では、日韓併合に関与した高級官僚としての柳田の傷心を糊塗するものだとし、佐谷眞木人『民俗学・台湾・国際連盟 柳田國男と新渡戸稲造』ではそれを根拠なきものとしていた。どうなんでしょうね。

●南方熊楠
南方熊楠『十二支考』
『南方熊楠 100年早かった智の人』@国立科学博物館
南方熊楠『森の思想』

●柳田國男
柳田國男『海南小記』
村井紀『南島イデオロギーの発生』
佐谷眞木人『民俗学・台湾・国際連盟』


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