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自縄自縛日記

庄子大亮『アトランティス=ムーの系譜学』

2022-09-28 06:53:07 | 思想・文学

庄子大亮『アトランティス=ムーの系譜学』(講談社選書メチエ、2022年)を読む。

拙著『齋藤徹の芸術』において、妄想のワールド・ミュージックという観点で、かつてムー大陸の存在を主張したジェームズ・チャーチワード、それを信じた沖縄の音楽学者・山内盛彬のことを書いた。もちろん本書でもチャーチワードや山内について言及されている。山内はともかくとして、19世紀・英国生まれの元軍人チャーチワードは、鉄鋼技術者を辞めてから妄想の偽史についての著述活動を始めた人であり、作家や別分野の学者がトンデモ歴史論を展開する伝統はこのあたりから始まっていることがわかっておもしろい。

本書はムー、アトランティス、レムリアといった「失われた大陸」論がどのように日本で受容されてきたのかを検証している。それによれば、戦前の「皇国日本」の物語を強化しようとするあやういもの、地震や火山活動が激しい日本ゆえ太古の昔もそうだったに違いないとリアリティに結び付けるものなど、さまざまな言説の類型があった。そして新たな言説も次々に生み出され続けている。これはまさに著者のいう「事実と想像の絶えざる相互侵食」。


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