Sightsong

自縄自縛日記

渡辺将人『アメリカ政治の壁』

2016-09-10 00:14:20 | 北米

渡辺将人『アメリカ政治の壁―利益と理念の狭間で』(岩波新書、2016年)を読む。

「アメリカって国は・・・」と、アメリカをひとつの人格を持った者であるかのように言い放つことは馬鹿げている。ましてや、そのときの大統領によってアメリカ政治を代表させることも、同時に馬鹿げている。なぜなら、大統領が内政に対してできることなど限られているからである。

著者によれば、大統領の質(玉)、世論=議会(風)、政策エリート集団(技)が合わさったときに、政治が実現化していくのだという。風を失ったオバマ大統領の状況をみればわかることである。また、愚かな悪人呼ばわりされたブッシュ息子でさえ、本人の権限でイラク戦争が実行できたわけではなく、9・11後の集団圧力的な議会の動きと、新保守主義(ネオコン)的な政策エリートがあってのことであったとする。

カーター時代のあと政権を失った民主党は、リベラル色が強まるままでは力を失うとみて、経済や国際ビジネスを重視する中道寄りに舵を切った。これにより成功したのがクリントン時代である。ところが、最近の調査によれば、民主党支持者はまたしても純化されたリベラルに、またその一方で、共和党支持者は純化された保守にシフトした。分極化であり、カルト化である。佐藤学さんも2年前にそのような指摘をしていた(佐藤学さん講演「米国政治の内側から考えるTPP・集団的自衛権―オバマ政権のアジア政策とジレンマ」)。極端な保守・反動化であり、そのあらわれがトランプ現象でありサンダース現象でもあるのだろう。

日本の民進党も、極端なリベラルではいまの自民党に対抗できないとみて、意図的に保守寄りに軸足を移そうとしているように見えるのだがどうか。

●参照
佐藤学さん講演「米国政治の内側から考えるTPP・集団的自衛権―オバマ政権のアジア政策とジレンマ」
室謙二『非アメリカを生きる』
尾崎哲夫『英単語500でわかる現代アメリカ』
成澤宗男『オバマの危険 新政権の隠された本性』を読む


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