goo blog サービス終了のお知らせ 

Sightsong

自縄自縛日記

平岡正明『昭和ジャズ喫茶伝説』

2025-03-22 07:40:46 | アヴァンギャルド・ジャズ

平岡正明『昭和ジャズ喫茶伝説』が文庫化(ちくま文庫)。

それぞれの店の話はあまりなくてほとんどが平岡正明の心象風景、というのは読む前からわかっている。はちゃめちゃでぐちゃぐちゃ、これがかれの芸。たとえば、新宿について自分自身が書いたことの意味を考えるだけの文章。

「「癲癇女の胃袋」「胡瓜の脅迫」というのは、腹が減って一軒目のジャズ喫茶を出て、歌舞伎町「スカラ座」斜め前の天丼屋「鶴亀」で、酸っぱい天丼を食ったことを意味する。アミノ酸醤油と称したが、木屑から作るといわれた安い調味料の味だ」

稲葉佳子・青池憲司『台湾人の歌舞伎町』によると、このスカラ座は新宿西口に移転したのち軽井沢にふたたび「新宿スカラ座」という喫茶店を開いているらしい。「鶴亀」はいまもあるつるかめ食堂か、木屑の醤油とはひどい。

行徳のホットハウスで長いことピアノを弾いていた松井節子さんのインタビュー記事をまとめるとき、平岡正明の『日本ジャズ者伝説』と『毒血と薔薇』を参考にした(というか、それしかなかった)。松井さんと夫の郷間和緒さんが通ったという新宿三丁目「バードランド」のオーナー「つやさん」は行徳に「ジャズ屋えん」を開いた人だが、本書によれば、そのつやさんは平岡の妻の従妹だった。本名は広瀬つや子。なんだそういうことだったのか。 はちゃめちゃでぐちゃぐちゃでも読み解くおもしろさはある。

松井節子インタビュー(JazzTokyo)