Sightsong

自縄自縛日記

種まき種まかせ 第3回ー冬の手ー@OTOOTO

2019-01-14 22:17:44 | アヴァンギャルド・ジャズ

東北沢のOTOOTO(2019/1/13)。

Kokichi Yanagisawa 柳沢耕吉 (企画, g, cassette tape)
Jumpei Ohtsuka 大塚惇平 (笙)
Chiho Suzuki 鈴木ちほ (bandoneon)
Yusuke Kawamura 川村祐介 (tp)
Hideo Ikegami 池上秀夫 (b, チラシ)

前回の「種まき種まかせ」が各々の行為の効果を試すようなものだとすると、今回は、全員が全員のサウンドを見渡して貢献してゆくような面白さがあった。これには同じメンバーという理由も、演奏者と目撃者とが同じ場を共有するという理由もあるのかもしれない。

ファーストセットでは、まるで薄紙を重ね合わせるような感覚のサウンドで始まった。ところが、柳沢さんが弦で撥音を発したことを機に、誰もが足や楽器を使って擦音を出してゆく。そのようなつながりがあった。

セカンドセットは、重ね合わせから混ぜ合わせに移り変わる。池上さんの使うチラシは、もみほぐされて次第に柔らかな音になる。それは媒体にもなり、バンドネオン、トランペット、笙、カセットテープが層ではなく一体化してゆく。そのため誰が音を出しているのかわからないことがあり、気が付くと、別のほうから聴こえてきたはずの音が大塚さんのヴォイスでもあったりした。こちらの意識も混濁した。

次の「種まき種まかせ」は春か。各々自らの貢献の確認(前回)、多層化と混濁(今回)、さて次回はどうなるか。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、7Artisans12mmF2.8

●柳沢幸吉
種まき種まかせ 第2回ー秋の手-@Ftarri(2018年)

●大塚惇平
種まき種まかせ 第2回ー秋の手-@Ftarri(2018年)
ユーラシアンオペラ東京2018(Incredible sound vision of Eurasia in Tokyo)@スーパーデラックス(2018年)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)

●鈴木ちほ
種まき種まかせ 第2回ー秋の手-@Ftarri(2018年)
impro cats・acoustic@なってるハウス(2018年)
鈴木ちほ+荻野やすよし(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2018年)
鳥の未来のための螺旋の試み@ひかりのうま(2017年)
毒食@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
晩夏のマタンゴクインテット@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(2017年)
りら@七針(2017年)
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年) 

●川村祐介
種まき種まかせ 第2回ー秋の手-@Ftarri(2018年)

●池上秀夫
長沢哲+近藤直司+池上秀夫@OTOOTO(2018年)
種まき種まかせ 第2回ー秋の手-@Ftarri(2018年)


ケリー・グリーン@サンフランシスコ Black Cat

2019-01-14 21:42:55 | アヴァンギャルド・ジャズ

サンフランシスコのBlack Cat(2019/1/11)。

Kelly Green (p, vo)
Evan Hyde (ds)
Alex Tremblay (b)

というのも、クリスチャン・マクブライドが「one of the most talented and spirited people I know. Everything about her is joyous and swingin’!」と言ったとか。確かに鍵盤とヴォイスとがハモっていくのはすごく気持ちいい。

「Jitterbug Waltz」などでゴキゲンに始めて、さてこんな感じでスインギーに続くのかなと思っていると、「If I Love Again」のあとはバードの「Relaxin' at Camarillo」にちょっと驚かされた。「It Might As Well Be Spring」、そして、ロイ・ハーグローヴに捧げるとして「Never Let Me Go」。この何日か前に観たセオ・クロッカーのライヴでも同じようにロイにと同曲を演奏した。みんなのロイの記憶はこれなんだな。ファーストセットの最後は「Gone with the Wind」。

客席は大声で話に夢中なカップルや女子軍団などでかなりアレだが、そして別に驚くほどのことではないのかもしれないが、ジャズ愛は良いものである。(翌朝の早朝便のことを思い出して、セカンドセットは聴かずに帰った。)

Nikon P7800


Luggage Store Creative Music Series@サンフランシスコ Luggage Store Gallery

2019-01-14 10:05:27 | アヴァンギャルド・ジャズ

サンフランシスコのLuggage Storeに足を運んだ(2019/1/10)。

ここではサックスのレント・ロムスが定期的にインプロのキュレーションを行っている。周辺はホームレスが多い地域であり、また雑然としていてどこが入口がわからない。ロムスにメッセンジャーで訊くと、いやドアには鍵はかかっていない、と。いやそういう問題ではなく、近くの店で道を尋ねてうろうろしていたら、ロムスに頼まれたのだろう、あとでプレイしたホルヘ・バックマンが道に出てきてくれた。

この日はロムスはプレイせず、キュレーションと受付とMCのみ。

■ Usfruct

Usufruct:
Polly Moller Springhorn (fl, vo)
Tim Walters (laptop, processing)

Usufructはポーリー・モーラー・スプリングホーンとティム・ウォルターズのデュオである。

ポーリーは2種類のフルートに加え、奇妙に具体的でもある詩を朗読し、叫び、呟く。「学校から家に帰ったら、病院はどうなっているの?わたしの人生はなんなの?」、「家に行った、ガスステーションに行った、道路に出た」などと。

ウォルターズはフルートの高い音、低い音、ヴォイスを加工し、撒いていく。それは現実に近いだけなお悪夢的で、またそれゆえに心にざわりと触る感覚のサウンドを作り上げた。かれはときに「And a bread, and a cheese, and a bread, and a cheese,...」と、また「I will, and she will, and I will, and she will, ... and she went bad」と、ぼそぼそと呟き、さらに悪夢感を増幅させる。最後はウォルターズの「I got over, I got over」という謎の言葉で締められた。

生きることのおぞましさと生きていく力とが示されたようなものに思えた。

■ Thruoutin/ruidobello

Brad Seippel, Jorge Bachmann (modular synth, pedals, computer)

ブラッド・セイペルとホルヘ・バックマンとによる電子サウンドのデュオ。

背後には住宅街の風景が映し出されている。途中で気が付いたのだが、それは動画であった。ときおり鳥が飛び、道路をクルマが走っている。サウンドはミニマルな繰り返しでありながら、多方向から現実世界とも何ともわからない波動が攻めてきて、もはや自分たちがどこにいるのかという認識をぐらつかせる。

そして画面は次第に明るくなってゆき、こちら側とのスクリーンがあることを意識せざるを得なくなってゆく。このあたりの現実の遮断とも現実の取り戻しともつかないものは、安部公房『方舟さくら丸』の最後の反転を思わせた。

バックマンと話すと、渋谷だとかスーパーデラックスだとか東京に妙に詳しい。台湾も含めて来たことがあるそうで、この10月(2019年)にもまた来日する予定だという。


セオ・クロッカー@ロサンゼルス Sam First

2019-01-14 09:12:03 | アヴァンギャルド・ジャズ

ロサンゼルスの空港近くにあるSam Firstにて、セオ・クロッカー(2019/1/5)。

なおここでは従来の表記を踏襲するが、「Theo Croker」は、ヒロ・ホンシュクさんによれば、「シオ・クローカー」に近いとのことである。確かに本人もそのように発音していた。

Theo Croker (tp)
Paul Cornish (p)
Tabari Lake (b)
Justin Brown (ds)

ファーストセットは、ニコラス・ペイトンの曲、オリジナル、ラリー・ウィリスの曲、ロイ・ハーグローヴに捧げるとして「Never Let Me Go」。セカンドセットは、ジョー・ヘンダーソンの「A Shade of Jade」、オリジナル、「Embraceable You」(途中でモンクの「Nutty」を入れて自分で受けていた)、オリジナル(「Meditations」というカラフルな感じの曲)。

クロッカーのアルバムはこれまでに『Escape Velocity』を聴いただけなのだが、その若干トリッキーなサウンドとは違って、思いっきりどジャズである。何を体感できるのだろうと期待していただけに、半分は肩すかし、しかし半分はやはりうれしいのだった。ジャズ万歳。

そしてこれもCDではわからなかったことだが、クロッカーのトランペットは小さな音から激しい音まで実にレンジが広く、かつ繊細だ。今回の目当てはずっと観たかったジャスティン・ブラウンだった。たとえばアンブローズ・アキンムシーレの諸作などでは、まるで重力を無視して軽々と飛翔しながら、雲の上で異次元のドラミングをしているような印象だった。しかし、実際にはもっと強く重いものだった。バスドラムからシンバルまですべて正攻法で叩き続け、トニー・ウィリアムスさえ思い出させるものだった。期待を遥かに凌駕した。

ピアノのポール・コーリッシュは20代前半、Theronious Monk Institute出身の俊英だそうであり、クロッカーはその紹介後にああHerbie Hancock Institute、と含みを持たせるように話した。またラリー・ウィリスの曲の前にも、ハービーほど有名ではないけど素晴らしいミュージシャンだと口にしており、何か思うところがあるのかもしれないなと感じた。そのコーリッシュは、決して鍵盤に強くアタックするわけではないのだが、ソフトでとても存在感のある良いピアノを弾いた。

また、ベースのタバリ・レイクはセント・トーマス島の出身だそうであり、ウゴンナ・オケーゴを思わせる、力強く、ラインがはっきりしていて、歌うベースを弾いた。ディー・ディー・ブリッジウォーターと共演もしているようだ(これはクロッカーもそうである)。

クロッカーと終演後に話した。この10月(2019年)あたりに自身のグループで来日する予定があるとのことである。

Nikon P7800

●ジャスティン・ブラウン
アンブローズ・アキンムシーレ『A Rift in Decorum: Live at the Village Vanguard』(2017年)
ジャスティン・ブラウン『NYEUSI』(2015年)
アンブローズ・アキンムシーレ『The Imagined Savior is Far Easier to Paint』(2014年)
パスカル・ルブーフ『Pascal's Triangle』(2013年)
ジェラルド・クレイトン『Two-Shade』、『Life Forum』(2009、13年)
デイナ・スティーブンス『That Nepenthetic Place』(2010年) 
カーロ・デローザ『Brain Dance』(2009年)
アンブローズ・アキンムシーレ『Prelude』(2008年)