昨日お知らせした住民監査請求の結果が届きましたのでPDFにて公開します。
監査結果1(請求部分)
監査結果2(結果部分)
なお、公文書開示請求で公開された事実証明書で明らかであるにもかかわらず何故か監査結果中の県職員ら事件関係者の表記だけイニシャルとなっているので以下注釈しておきます。
・株式会社S : 株式会社静鉄アド・パートナーズ (受託事業者)
・契約担当者M : 契約担当者望月保宏 (静岡県職員)
・K課長代理 : 京極仁志文化政策課長代理 (静岡県職員:事件後、文化政策課長に)
<経過リンク>
・8月11日 監査請求の概要
・8月12日 監査請求全文
・8月25日 事件の経過及び損害額推計
・8月27日 損害額積算根拠
・9月17日 県の意見書公開
またPDFで見られない人のための結果の概要版を載せておきます。(県の記者提供資料より)
なお、注目点は赤表示しておきました。
その前に若干コメントを付しておきます。
・「違法」ではなく「(法の)規定の趣獅ノ反する」、「不適切」又は「違法若しくは不当」なので理由がないと言っているようですが、静岡県らしい解釈です。
・また、損害はあったが暗黙に損害の請求をしない(免除)という意志を示し合意したので現在は損害がないということですが、地方自治法で認められた議会の議決(地方自治法第96条第1項第10号)なしに県職員レベルで県の損害免除(権利放棄)ができるというのも議会が口出しできない知事部局の強さを象徴して、やはり静岡県らしい解釈・規範です。今後も損害を与えた相手と県からの損害賠償請求の免除を合意すれば、県職員だけの判断で免除していいよと県監査委員が公認したわけですので職員にとっては良い結果でしょう。
・さらに、PDF版の全文には業者調査の結果、契約額を定めずに事業実施後に請求してきた額の適正について「株式会社Sに対する調査でも不当に高額とは認められないことから」との記述があって監査委員は額を適正と認めていますが、不当に高額でなければ、すなわち不当ではない程度の高額であっても良いというのは何のための入札制度なのか、契約金額決定の根幹を否定する見解であります。最初の競争入札は一体何だったんでしょう。もう1割り増しで請求しても不当に高額ではないと判断してくれたでしょうからこの業者としては儲け損なったといえるのでしょうが・・・
PDF版中には担当者の「記憶にない」などという国会答弁のような記述もあるとても面白い監査結果となっていますので是非全文の掲載されたPDF版もご覧ください。
では、以下に監査委員による監査結果の概要を掲載しておきます。
<概要(本日の記者提供資料から引用)>
3 請求の要
監査委員が知事に対して、以下の勧告をすることを求める。
(1) 本件契約の手続及びそれに基づく支出は違法又は不当であり、これらの財務会計行為の事後的是正を行うこと。
(2) 是正によっても治癒できない瑕疵に基づく損害については、瑕疵の原因者(浙江省文史研究館又は契約担当職員)に対して損害の補填を求めること。
4 請求の理由(1) 知事が本件契約の契約書に記名押印した日は、平成24年8月23日であるにもかかわらず、同月20日に遡及して契約をしており、地方自治法第234条第5項に違反する。
(2) 本件契約の変更契約は、「浙江省文史研究館書画作品展」を中止し、「静岡県のすごい産業遺産・輝く静岡の先人パネル展」を追加する内容のものであったが、対価も定めず、変更契約書も交わさないまま、新たに追加したパネル展の業務の履行を先行させ、業務完了後に委託額を定め、変更契約書を交わしたもので、地方自治法第232条の3及び第232条の4第2項に違反する。
(3) 書画作品展は変更契約で中止された業務であるにもかかわらず、その業務に係る補償の実質を有する支払を、変更契約を根拠にして支出しており、地方自治法第232条の4第2項に違反する。
(4) 書画作品展の中止は、中国側の一方的申出が原因であるので、中止に伴う損害は中国側が負担すべきものである。しかし、県が何らの請求をしていないのは財産の管理を怠る違法がある。
5 監査結果
請求には理由がなく、認められない。
〔理由〕
本件契約の受託業者に対する支払には根拠があり、その支払額をもって損害ということはできない。
また、その支払の一部には県に対して便益をもたらしていない役務に対する支払も認められるが、それは県が負担せざるを得ないものであり、財産の管理を怠る事実もない。
しかし、本件契約の手続には問題があったので、県(文化・観光部文化政策課)に対して意見を付した。
〔意見〕
(1) 適正な執行体制づくりの必要性
本件契約に係る手続については複数の問題点を指摘したが、文化政策課においては、経理処理等の基本に則り、事務処理体制を整え、今後適正な事務執行に努められたい。
(2) 記録の作成・保管
本件契約では記録がほとんど残っていないことなど、経過が明確にはわからなかった。
記録を残すことは、事業執行の適正を担保することになるので、処理過程の記録の保管に努められたい。
監査結果のャCント
1 請求に理由がないとした主な判断根拠
(1) 当初契約について
本件契約で当事者双方が契約書に記名押印したのは平成24年8月23日であるから、契約日も同日とすべきであり、日付を8月20日に遡及したのは自治法第234条第5項の規定の趣獅ノ反する事務処理であった。
なお、落札者にとっては契約締結前であっても履行の準備行為を行うことは当然で、受託業者が契約日(8月23日)前に行った行為があったとしても、これに対して委託料を支払うことに法的根拠は認められる。
(2) 変更契約手続及び時期について
書画作品展の中止は、尖閣諸島を巡る日中間の問題として「当事者の責めに帰することのできない理由」によるもので、本件契約第7条第1項の規定による解除があったものと認められる。したがって、書画作品展に係る印刷経費の支払は、本件契約第13条第2号で、県が認める履行部分に相当する額として、委託費の正当な支払と認められる。
パネル展は書画作品展とは関連性もない新たな業務であるから、新たな契約を締結する場合の手続をとる必要があったが、文化政策課が安易に本件契約の変更という方法をとったことは不適切であった。また、変更契約締結の時期がパネル展が終了した後であったことは、違法若しくは不当であった。
パネル展開催に関しては受託業者に契約に基づかない業務を行わせたことになるが、それによって県は便益を受けており、この対価相当額は県が支払うべきものである。その支払をしないことは県が不当に利得することになる。
(3) 請求人の財産の管理を怠るとの主張について
書画作品展開催に係る合意内容をまとめた平成24年3月10日付けの中国側との協定に基づいて、県が作成したャXター等は活用されなかったので、県は十分な便益も受けておらず、県に損害が生じている。
同展は中国側からの同年9月24日付け延期通知によって中止に至ったが、県は延期及び延期に伴う損害等を中国側に請求しないということを了解し、暗黙のうちにその意思は中国側に伝わったと認定できるので、この協定が両者の合意により解除されたと認めるのが自然である。したがって、協定に基づく債務の不履行による損害賠償請求権が発生していないことになり、県に財産管理上の正当な手続を違法・不当に怠っている不作為があるとはいえない。
(4) 出納審査課の審査の適否について
書画作品展に係る経費は、本件契約の一部解除に伴う既履行部分相当額の支払として認められるので、債務が確定したと出納審査課が認めたことに問題はない。
パネル展に係る経費は、県が受けた便益に対する対価として支払うべき債務(額)として存在するので、出納審査課が認めたことは自治法第232条の4第2項に違反しない。
(※)このほか、変更契約(仕様)が事業終了後に締結されているものの実績とは異なる数量となっていたことや、契約上再委託を行う場合での県の書面承認がなされていないなどの問題があった。
以上
監査結果1(請求部分)
監査結果2(結果部分)
なお、公文書開示請求で公開された事実証明書で明らかであるにもかかわらず何故か監査結果中の県職員ら事件関係者の表記だけイニシャルとなっているので以下注釈しておきます。
・株式会社S : 株式会社静鉄アド・パートナーズ (受託事業者)
・契約担当者M : 契約担当者望月保宏 (静岡県職員)
・K課長代理 : 京極仁志文化政策課長代理 (静岡県職員:事件後、文化政策課長に)
<経過リンク>
・8月11日 監査請求の概要
・8月12日 監査請求全文
・8月25日 事件の経過及び損害額推計
・8月27日 損害額積算根拠
・9月17日 県の意見書公開
またPDFで見られない人のための結果の概要版を載せておきます。(県の記者提供資料より)
なお、注目点は赤表示しておきました。
その前に若干コメントを付しておきます。
・「違法」ではなく「(法の)規定の趣獅ノ反する」、「不適切」又は「違法若しくは不当」なので理由がないと言っているようですが、静岡県らしい解釈です。
・また、損害はあったが暗黙に損害の請求をしない(免除)という意志を示し合意したので現在は損害がないということですが、地方自治法で認められた議会の議決(地方自治法第96条第1項第10号)なしに県職員レベルで県の損害免除(権利放棄)ができるというのも議会が口出しできない知事部局の強さを象徴して、やはり静岡県らしい解釈・規範です。今後も損害を与えた相手と県からの損害賠償請求の免除を合意すれば、県職員だけの判断で免除していいよと県監査委員が公認したわけですので職員にとっては良い結果でしょう。
・さらに、PDF版の全文には業者調査の結果、契約額を定めずに事業実施後に請求してきた額の適正について「株式会社Sに対する調査でも不当に高額とは認められないことから」との記述があって監査委員は額を適正と認めていますが、不当に高額でなければ、すなわち不当ではない程度の高額であっても良いというのは何のための入札制度なのか、契約金額決定の根幹を否定する見解であります。最初の競争入札は一体何だったんでしょう。もう1割り増しで請求しても不当に高額ではないと判断してくれたでしょうからこの業者としては儲け損なったといえるのでしょうが・・・
PDF版中には担当者の「記憶にない」などという国会答弁のような記述もあるとても面白い監査結果となっていますので是非全文の掲載されたPDF版もご覧ください。
では、以下に監査委員による監査結果の概要を掲載しておきます。
<概要(本日の記者提供資料から引用)>
3 請求の要
監査委員が知事に対して、以下の勧告をすることを求める。
(1) 本件契約の手続及びそれに基づく支出は違法又は不当であり、これらの財務会計行為の事後的是正を行うこと。
(2) 是正によっても治癒できない瑕疵に基づく損害については、瑕疵の原因者(浙江省文史研究館又は契約担当職員)に対して損害の補填を求めること。
4 請求の理由(1) 知事が本件契約の契約書に記名押印した日は、平成24年8月23日であるにもかかわらず、同月20日に遡及して契約をしており、地方自治法第234条第5項に違反する。
(2) 本件契約の変更契約は、「浙江省文史研究館書画作品展」を中止し、「静岡県のすごい産業遺産・輝く静岡の先人パネル展」を追加する内容のものであったが、対価も定めず、変更契約書も交わさないまま、新たに追加したパネル展の業務の履行を先行させ、業務完了後に委託額を定め、変更契約書を交わしたもので、地方自治法第232条の3及び第232条の4第2項に違反する。
(3) 書画作品展は変更契約で中止された業務であるにもかかわらず、その業務に係る補償の実質を有する支払を、変更契約を根拠にして支出しており、地方自治法第232条の4第2項に違反する。
(4) 書画作品展の中止は、中国側の一方的申出が原因であるので、中止に伴う損害は中国側が負担すべきものである。しかし、県が何らの請求をしていないのは財産の管理を怠る違法がある。
5 監査結果
請求には理由がなく、認められない。
〔理由〕
本件契約の受託業者に対する支払には根拠があり、その支払額をもって損害ということはできない。
また、その支払の一部には県に対して便益をもたらしていない役務に対する支払も認められるが、それは県が負担せざるを得ないものであり、財産の管理を怠る事実もない。
しかし、本件契約の手続には問題があったので、県(文化・観光部文化政策課)に対して意見を付した。
〔意見〕
(1) 適正な執行体制づくりの必要性
本件契約に係る手続については複数の問題点を指摘したが、文化政策課においては、経理処理等の基本に則り、事務処理体制を整え、今後適正な事務執行に努められたい。
(2) 記録の作成・保管
本件契約では記録がほとんど残っていないことなど、経過が明確にはわからなかった。
記録を残すことは、事業執行の適正を担保することになるので、処理過程の記録の保管に努められたい。
監査結果のャCント
1 請求に理由がないとした主な判断根拠
(1) 当初契約について
本件契約で当事者双方が契約書に記名押印したのは平成24年8月23日であるから、契約日も同日とすべきであり、日付を8月20日に遡及したのは自治法第234条第5項の規定の趣獅ノ反する事務処理であった。
なお、落札者にとっては契約締結前であっても履行の準備行為を行うことは当然で、受託業者が契約日(8月23日)前に行った行為があったとしても、これに対して委託料を支払うことに法的根拠は認められる。
(2) 変更契約手続及び時期について
書画作品展の中止は、尖閣諸島を巡る日中間の問題として「当事者の責めに帰することのできない理由」によるもので、本件契約第7条第1項の規定による解除があったものと認められる。したがって、書画作品展に係る印刷経費の支払は、本件契約第13条第2号で、県が認める履行部分に相当する額として、委託費の正当な支払と認められる。
パネル展は書画作品展とは関連性もない新たな業務であるから、新たな契約を締結する場合の手続をとる必要があったが、文化政策課が安易に本件契約の変更という方法をとったことは不適切であった。また、変更契約締結の時期がパネル展が終了した後であったことは、違法若しくは不当であった。
パネル展開催に関しては受託業者に契約に基づかない業務を行わせたことになるが、それによって県は便益を受けており、この対価相当額は県が支払うべきものである。その支払をしないことは県が不当に利得することになる。
(3) 請求人の財産の管理を怠るとの主張について
書画作品展開催に係る合意内容をまとめた平成24年3月10日付けの中国側との協定に基づいて、県が作成したャXター等は活用されなかったので、県は十分な便益も受けておらず、県に損害が生じている。
同展は中国側からの同年9月24日付け延期通知によって中止に至ったが、県は延期及び延期に伴う損害等を中国側に請求しないということを了解し、暗黙のうちにその意思は中国側に伝わったと認定できるので、この協定が両者の合意により解除されたと認めるのが自然である。したがって、協定に基づく債務の不履行による損害賠償請求権が発生していないことになり、県に財産管理上の正当な手続を違法・不当に怠っている不作為があるとはいえない。
(4) 出納審査課の審査の適否について
書画作品展に係る経費は、本件契約の一部解除に伴う既履行部分相当額の支払として認められるので、債務が確定したと出納審査課が認めたことに問題はない。
パネル展に係る経費は、県が受けた便益に対する対価として支払うべき債務(額)として存在するので、出納審査課が認めたことは自治法第232条の4第2項に違反しない。
(※)このほか、変更契約(仕様)が事業終了後に締結されているものの実績とは異なる数量となっていたことや、契約上再委託を行う場合での県の書面承認がなされていないなどの問題があった。
以上
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