思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

NHKの名誉回復は、まだ。昨晩の「承久の乱」男性中心主義によるすっとん狂な解説(呆)

2022-01-19 | 社会批評

 昨晩のNHK Eテレの知恵泉選「承久の乱」は、従来の歪んだ北条政権評価(明治維新政府の天皇絶対史観による)ではなく、基本的に「正しい」解説で、NHKの名誉回復と言いたいのですが、

肝心の2点がおかしく、残念でもありました。

 それは、後鳥羽上皇側の武士たちが攻めてくるのを待つという多数意見に対して、
京都の官僚出身で鎌倉幕府のご意見番・大官令覚
 大江がそう言ったことは、「吾妻鏡」(あずまかがみ)にある通りですが、大江は、頼朝が雇ったご意見番(役人)であり、最高権力者の政子が決めなければ、決まらないのです。

 番組でも、執権の北条義時は、姉の政子(鎌倉幕府トップで実際上の第四代将軍)に聞いたことは言いましたが、「念のため政子に聞いた」という素っとん狂な解説でした。京都の朝廷のやり方と後鳥羽上皇の性格については、直接会いもし、幾度も煮え湯を飲まされてきた政子は知悉していたのであり、役人の大江以上に知っていたのは当然です。

 吾妻鑑には、明確に書かれています。

「義時が両方の意見(後鳥羽軍を待つ、こちらから京に攻める)を政子に申したところ、
政子が言った『上洛しなければ、絶対に官軍を破ることはできないでしょう。安保刑部丞(あぼきょうぶのじょう)実光以下の武蔵国の軍勢を待って速やかに京に参るべきです』

 それにより、すぐに、わずか18騎で出陣したことは番組でも触れていましたが、それが、執権・義時の長男で、叔母の政子を慕い敬愛する22歳の泰時とその兵であったことは伝えないのも意味不明でしたが、

 この肝心な2点をぼかしたり無視するのは、男性中心主義のイデオロギーを知らずに身に着けている日本の学者やNHKのディレクターだからではないでしょうか。女性の政子を小さく扱いたいという無意識の意識です。日本という国の後進性には毎度あきれ返るばかりです。


 ついでにいえば、もうだいぶ以前のことですが、NHKは大河ドラマで、北条政子をドラマにしましたが(「草燃える」)、
驚くことに第三代将軍の実朝(さねとも)が公暁(くぎょう)に殺害=孫に子を殺されたという悲劇でおわってしまい、第四楽章はカットというありえない話で、視聴者を唖然とさせました。

 明治維新政府が、水戸学による天皇中心の真っ赤な嘘の日本史=北条政子と北条政権を悪に仕立て上げたことが、主権者が天皇から国民にコペルニクス的転回を果たした戦後もまだ色濃く残っていることを示した「事件」でした。原作者の永井路子さんは、第四楽章=承久の乱を書いているのですが(「炎環」1964年光風社刊)、わざわざ四楽章を外した「北条政子」(1978年講談社刊)を書かせて大河ドラマにしているのですから、あまりの酷さに身が震えます。

 800年前の歴史まで改ざんする国が、世界のどこにあるでしょうか。



武田康弘

 

 

 

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