Maintenance SHIOHOUSE

■SHIOブログ■
「店主の独断と偏見でつづる個人的な日誌」

エンジンロック

2010-05-07 09:25:00 | CB400F/350F
今回お預かりしたCB400F
依頼事項は
「普通に乗っていたのに、ある日エンジンを掛けようとしたらセルが回らない、キックも降りない」とのご依頼

この場合まず考えられることは
①エンジンオイルが少なくてシリンダーとピストンが焼きついて固着
②メタル周りの焼きつきのクランクロック
③キャブレターからガソリンがシリンダー内に入り「ウオーターハンマー」状態
④内部の部品がなにかしら破損して噛みこんでロック
こんなものが考えられます。

確認すると.....

びくともしない!
(セルは回しません、ウオーターハンマーの場合はコンロッドを曲げてしまうからです。)
クランクに直に力を掛けても....

わずかに動くだけ....
プラグを外してみてもガソリンは入っておらず、
プラグホールからシリンダー内壁を見るも焼きついている様子はない
①、③ではないことが確定

タペットキャップを外しクリアランスを確認
すると、全体的にありえないくらいクリアランスが広い!
本来0.05mmを0.5mmに間違えたどころではないクリアランス
#4のEXがぷらんぷらん!?

あ、確実に折れてると判断しヘッドカバーを開けることに

開けて見ると案の定折れてカム山部分に引っかかっていたため
ロックしていたのでしょう


何故折れたのかを検証します。

普通の状態ではまず折れません
○チューニングの為の無茶な軽量化
○バルブタイミングが狂ってバルブがピストンと当たり逃げ場がなく折れたか
これまでにそれくらいしか見たことがありません。

バルブタイミングを確認します。
まず、ガバナーを#1.#4側をTマークに合わせます。

カムスプロケットを見ると.....あ゛っ!!

本来、カムスプロケットのボルトが上下に位置して、けがき線がヘッドの上面のラインと合わさるのですがあさっての方向を向いています。

普通に乗っていてバルブタイミングが勝手に狂うことはありません

これが原因だと思われます。

カムチェーンスリッパーの破断、
折れてカムチェーンが緩みタイミングがずれてしまい~バルブがピストンと干渉~ロッカーアーム折れ~噛みこみ~ロック
こんな図式が安易に考えられます。

おそらくバルブも無事ではいられないでしょう

CB400FやCB500Fのレーサーなどで折れることは当時のレースの世界でも多くあったことでレースごとに交換なんてことは当たり前だったようです。
今回は街乗り車両ですからそんなに過激に乗ることはないでしょうから
カムチェーンがたるんだ状態でよっぽど過度なエンジンブレーキを多用する乗り方でもしていたか?
これからお客様にこの惨状を見ていただいて事情聴取してみたいと思います。

5/7 20:00更新

さて、やはり原因がつかめないのは気持ちが悪い
ヘッドカバーを開けた状態でもクランクはスムーズに回らない
クランクシャフトのカムスプロケットに何かが起こっているに違いない

こんな時に役立つのがデンタルミラー
(最近ではファイバースコープなど良いものがでています)

ライトを使いながら中を覗くと......

何かが居る!
そこで、お客様には「このままでどこが逝ってるか仮定して見積り書きましょうか?」
と話した後ですが、その異物がどうしても気になるので
シリンダーまで外してしまいました。

で、居たのは黒いヤツ

と銀色のくちゃくちゃになった物体

なんやろ?
で、よく見るとテンショナーアームのスリッパーの受けのダンパーが不在!

黒いものはダンパーのゴム、銀色のモノはダンパーの鉄板か!?
アームから外れてうまい具合にカムチェーンとクランクの間に落っこちて????
噛みこんだ時にチェーンがすべってタイミングがずれてしまった??
と、思うしかないですね。

ヘッドも外した為バルブの状態も確認できました。
(IN、EXポートからライトで照らしています。バルブがきちっと閉まっていれば光は漏れませんね。)
#1、

#2、

#3、

#4

ほぼ全滅、#3EX以外はすべて大きく曲がっています。

カムチェーンが切れてしまっても同じようなことが起こりえます。
ただ、言葉で
「カムチェーンが切れるとヘッドが大変なことになるよ」
と言われてもピンとこないと思いますが
このように
画像で見ると鳥肌が立ちませんか?

5/8更新
お客様と相談の上
現エンジンで修理の方向になりました。
早速、腰下も分解

分解してみると、中身は走行距離も少ないと思われる磨耗が少ないよいエンジン。


破損した破片もオイルパン内にいてはりました。

外れたクランクにはダンパーの破片が付いたまま

スプロケットの部分のダメージの有無でクランクが使えるかどうかが解ります。

へばりついていた鉄板、ゴムの破片(右)と本来の姿(左)


テンショナーアームも傷だらけ


これから正式に御見積りを作成し、
月曜日にお客様がお越しになりご対面となります。