Maintenance SHIOHOUSE

■SHIOブログ■
「店主の独断と偏見でつづる個人的な日誌」

CBX400F続編

2011-10-30 20:46:00 | ノンジャンル
さて、先日の続編です。
エンジンを掛けると結構音が大きい
エンジン異音も依頼事項の一つ
ただし車検が切れているので試乗ができない
(まさかテンプラナンバーで乗るわけにはいきませんからね。
良い子はやったらダメですよ!)
心配なのでオイルを抜いてまたオイルフィルターを外して沈殿物のチェック、
それとタペットを調整して
「それらの状態によりエンジン開けるか判断しましょう」
とはいったもののマフラーの出口に指を挿入しカーボンの状態を確認すると「べた~っ」としたタール状のカーボン!
かなりの不安を感じます。

ヘッドカバーを開けてタペット調整、かなり広めである。
せっかくなのでヘッドの増し締め.....なんだぁ!全体的に緩んでいる!!

エンジンを掛けてみると.....
(セルモーターの分解前にこの作業は行っている)

<script language="JavaScript" src="http://www.magicalmaker.com/js/mm.js.php?upwh=1812528-1319975822m-320-320"></script>

エンジンが掛かってからのすぐの異音に注目!

大分静かにはなったもののまだ出ている。
オーナーさんと連絡を取り、現況を伝える
そのときに白煙を噴いていたことも伺い
シリンダーなりバルブ周りにトラブルを抱えているのは予想できる為
腰上を開けることを具申
その上で
「コンロッドのガタを確認し必要があれば全バラしましょう」と提案

早速、分解し始めると.....
ヘッドを外すとピストンヘッドが皆ウエット状態


ヘッド側もこんな状態

シリンダーを外すと..

意外とピストンは大きな傷は少ない

が、しか~~~し!シリンダー内壁は酷い状態。
シリンダー内壁インレット側
#1

しっかりと縦傷が入っていますね~
#2

追い討ちをかけるように太いのが一本!
上部には錆の痕が...
#3

ここにも錆の痕がみられます。
#4

同様

シリンダー内壁エキゾースト側
#1

深いのが何本も...
#2

上部の錆の痕跡がちょっと酷いですね
#3

大きな錆の染みがあります。
#4

.........................

錆の痕はもちろんのこと
縦傷が酷い!その割にはピストンスカートがきれいなこと
また、ガスケットは新車当時からのものではない
そこから判断して、確実に一度開けているエンジンである。
そのときにボーリングはせずにピストンのみ交換したのではないかと推測する。

縦傷が多ければオイル上がりは起きてしまいます。
このコンディションであればボーリングは必須です。
しかしながら、オーバーサイズが手に入らない車種であれば
オイルを噴くことを承知で組むか、シリンダースリーブを製作するかで対応となります。
CBX400Fの場合は社外品でオーバーサイズピストンが存在しますから
ボーリングしなくちゃでしょう!

この辺の考え方は組む人次第になってしまいますね
神経質なのか(っていうか普通だと思う)?、大雑把なのか?

問題のコンロッド
#3がガタが大きい、それも縦方向にも!!!

#4も動きが渋いし....
メタルが逝ってるのは確実
軽度なものでラッピングで済めばよいのだが....

エンジンを降ろして分解
元は点検整備だけで済むはずで予定組んでいたのが
エンジンO/Hか!?
しかしながらCBX400F/550Fでは良くありがちな話
何しろ「異音」が出たらアウトな場合が多いので要注意です。

ケースを割ってみると....
Oh my god!


メタル全滅
更に#4の受けのネジ穴がおかしいことに...

ネジ山あげた?

ヘリサート失敗した?

スリーブ入れた?

肉厚薄くて側面が割れた?

アルゴン溶接で補修~ぅ!!!


こんな熱掛けて歪ませたく無いところにアルゴン溶接ですか~
いやぁ~~~(汗)

プライマリーチェーンやクラッチアウターが
何をやらかしたのかケースに引っかき傷がありますね~


ここも溶接補修ですか~、確かに割れている車輌を良く見かけます。


ロアケース側のメタルも同様ですね。


おびただしい傷、めり込んだ異物、赤い地金が見えていますね。

コンロッドメタルも全滅

(デジカメだと上手く写らなくて...)
小端も一本酷いです。


例の#3クランクピンが特に酷くみごとにかじっています。


計測してみてラッピングでいけそうか、NGかが決まります。

クラッチ
プレートが焼けていますね~
それよりもリフタープレートが割れたまま組んでありました。(怖)

4本を均等に少しずつ緩める、締める
そうすれば割れることは無いのに......
横着して1本ずつ外していくから(締めていくから)無理がかかって割れてしまう。

プライマリーチェーンのガイドも変形している

クラック入ってますやん!

先ほどのケースの引っかき傷といい、何が起きたのやら?

外したバルブ周り

バルブもコンディションが悪く、特にIN側はシールの当たり面に縦傷、錆びの痕だろうか黒い染みが何本にも


また、てっぺんはタペットアジャストボルトが当たる部分が凹んでいる
メタルの状態といい「過走行車」か!
ヘッド側のシート面も幅が広くなっていますから
シートカットは必須です。(O/H工賃に含んでいます。)
すり合わせだけでは当たり面を研磨して密着をよくするもので
幅が広くなることは有っても狭くなることはありえません


カムホルダーは相変わらず状態は良くないですね
かじりが有ったり、


金属粉が噛みこんでいたり、


深い傷が入っていたり、


おかげでカムの軸部分も傷が入っています。


カムチェーンガイドも変形!


しかしCBXのエンジンは開けてビックリのパターンが多いこと
オーナーさんも予定外の出費ということで驚かれたことでしょう
しかし、このまま乗り続けていれば被害は拡大し更なる出費につながることでしょう

CBXのエンジンは音が出てからでは遅い場合が多いため
オイル交換時のオイルに混ざった金属粉のチェックを推奨しています。
ドレンボルトを外して廃油ポイに直行なんて本当にもったいない
せっかくの情報をそのまま捨てているのですから。

今回は遠方のお客様のため
バラしたエンジンを見に来るまで時間が掛かると思われるので
詳細にUPしました。
通常の点検整備からエンジンO/Hとなるため
通常整備から重整備のタイムスケジュールに変更になります。
ある程度お時間を頂く形になります。


10/31更新
計測始めたら出て来る出て来る!
(なんか全損状態のいきおい)
#4コンロッド良くみるとスラスト方向に焼けと段つき磨耗

これは何事か!
クランクの振れを測定して納得

#2:0.05、#3(中央):0.16、#4:0.16
ちなみに使用限度は0.05mm、
プライマリーチェーンに何かトラブルを起こし引っ張られたことが推測できます。

カムシャフトも

使用限度0.03mmに対して0.07!(IN,EXとも)

ぱっと見では曲がりまでは判りませんが計測し数字で見ると一目瞭然ですね
目視だけで判断して組み立てるのはリスクが高いですね。
当ブログの読者ならお気づきかと思われますが
結構、安易に組まれたエンジンが多いです。
また、見積もりの時は基準値を超えている、コンディションが悪い部品はすべて書き出します。
また、最近ではボルト類も新品で計上しています。
その中からお客様の予算に合わせて許せる範囲で調整します。

ただ動けばいいやで目をつぶって安上がりで組んだエンジンも
後に壊れてしまえば高いものについてしまいます。
「せっかく開けたならキチッとやらなきゃ損だゼィ!」






急告:JJコバスミーティング

2011-10-30 08:43:00 | マニア向け
先日の記事で書いた
スペインのコンストラクター製コンプリートマシン
「JJコバス」(ほたほたこばす)

なかなかお目にかかることが無い絶滅危惧種的存在
<ブログ記事バックナンバー>
http://wind.ap.teacup.com/applet/hondainlinefour/msgsearch?0str=%82%A0&skey=%83R%83o%83X&inside=1&x=28&y=3

その2台が本日当店で初顔合わせ!
プチミーティングといったところでしょうか?

1台のオーナーさんから昨日電話が入り
本日、店に集まることになっているとのこと
もっと早く行ってくれれば
早く告知できたものを~~

と言うわけで、読者のお仲間で同車輌に乗ってる方が居たら
「15時、SHIOHOUSE集合」とお声掛けください
(急な話ではありますが)

また、是非見てみたい方もお越しくださいませ。
国産レプリカとは一味も二味もちがう
GPレーサー製作コンストラクター製のスペシャルマシン
一見の価値ありですね。



今日の出来事!

2011-10-29 20:48:00 | CBX400F/550F
本日長らくお預かりしていたCBX400Fを引き取りに来ていただきました。

(本人了承済みのため、修正無しで全国公開です!)

せっかく遠方よりお越しになったので
鯨食堂で遅めの昼食をとりました。
鯨にも本人ご満悦
(今日に限って鯨の刺身が一皿ずつサービスで付いた!「おばちゃんサンクス」)
さぁ、じっくりと慣らしを行ってくださいね

さて、最近セルモーターのO/Hなどの単品作業も多くなっています。
今回送られてきたセルモーターは
インターネットオークションで買ったらしい
詳細は聞いていないがおおよそ
「O/H済み」なんてことで出品されていたのではないだろうか?
依頼事項は
「セルモーターが動かなくなってしまった。」
とのこと

分解してみると

なんてことはないブラシホルダーとブラシターミナルが接触しショートしていた

しかしよくみると共にまだ新しいし
本来接触することなどありえないはずだが......何故か?

なんだぁ!(怒)

ブラシターミナル逆向きに組んでますやん
コードが生えてる向きがあるのですから、逆組みしてUターンさせれば
無理がかかって浮いた状態になります。

ブラシ自体も.....
逆向きにホルダーに入れてあった(萎)

本来スプリング側に溝がある方を向けますが
このセルモーター溝がある方がコンミュテータに当たっていた
この場合、コードがきつく入れ辛いはずなのだが....
どうしたことなのか?

明らかに
「考えもせずに適当に組んだ」
状態ですね。

本来こんなこと書いても読者は間違えるわけないですから
意味が無いのかもしれませんが
ブラシターミナル.....

このように向きがあるのだからそのまま組めばいいじゃないか!

ブラシホルダー......

スプリングの形に溝があるのだから、そのように組めばいいじゃないか!

ブラシ.....

コンミュテータにあたる部分は軽くR(円弧)が付いているのだから、その面をコンミュに当てればいいじゃないか!

すべてが逆のことをやってある
よっぽど反骨精神の持ち主なんでしょうかね~

このようなものを落札してしまい
修理費用を浪費するハメになった落札者が気の毒です。

さて、問題のブラシの当たり面「コンミュテータ」

いい塩梅に磨耗していますね
均等に当たらないと良くないです
もちろん切削修正いたします。
※あまりに細くなってしまう場合はコンミュ交換となります。


キレイになりました。

最後に実働テストを行って完成です。

次の車輌は点検整備でお預かりしたCBX400F
まずはセルモーターの音を聞いてくださいね

<script language="JavaScript" src="http://www.magicalmaker.com/js/mm.js.php?upwh=1812528-1319892901m-320-320"></script>

その日初めてエンジンを掛けるときなど時間が開いたときは必ず
エンジンに火を入れる前に数回セルを空回しして
油圧を掛けてからエンジンの始動を行います。
(いきなりエンジンを始動して油圧が掛かるまでのほんのわずかな時間エンジンから音が出る場合があります。
俗に言うドライスタート、メタルにダメージを与えてしまう恐れがあります。「メタルアタック」
それを防ぐ為のものです。)

セルモーター回すと妙な金属音!
「キュルキュル」ではなく
「シャリシャリ」音!これはおかしい!

さぁ分解!
しかし、メッキのセルモーターこれまでにロクなことが無かった.....嫌な予感

って云うか外すときにスターターシャフトまで抜けてきた......
嵌め合いがやたらキツい.....
「なんだぁ!?」

なんてこったい!
シャフト抜くのにスプラインのてっぺんを鉄ハンマーで叩いたな!

油圧プレス使うなり、バイス使うなり、銅ハンマー使うなり思いつかないものだろうか?

こんな細かいスプラインを潰したら修正は超大変(汗)

「後先考えて作業しようよ!」

しかし、音の原因はこれではない。


カバーの中に居るブラシの粉砕した破片.....

これは一体!?


うわぁ、見事に崩れています。

何故か?


こんな凸凹のコンミュに当たっていれば
新品のブラシを組んでもあっというまに合掌状態!

更にはスラストワッシャーも何処に行ったのか入っていない???

「はぁぁぁぁ~~~っ」

明日はこの車輌の
ブレーキ編、エンジン編です。

穴開け時に気をつけて!

2011-10-28 04:04:00 | CBX400F/550F
「何~だこれ?」


社外品のフェンダーで汎用として穴が開いていないものがあります。
その場合、自分で穴を開けないといけないのですが
そこで注意!
タイヤとフェンダーのクリアランスが少なければ少ないほど「格好良い?」

そんなキツキツでくっつけて
高速走行中、なんかキナ臭い臭いがして
気が付くとフェンダーのど真ん中が溶けている
このフェンダーはまさにそんな状態

何故か?

タイヤは熱が掛かると思いのほか膨張します。
また遠心力で外径が大きくなります
冷えているときにはその分もクリアランスを考えて
穴あけをしないといけません。

ちょっと、みっともないけど
強制的に穴をあけ直します。

これで安心です。

ちょっとした気遣いを…

2011-10-27 02:55:00 | CBX400F/550F
CBXで社外のダイナモカバーが付いている時によくありがちな話ですが
純正のカバーと違いボルト穴の部分の形状が違う

純正のカバーではガスケットと同じ形状にえぐれているが
社外品ではそれが無いためガスケットの内側に飛び出た部分の行き場所が無い

それでも
「知ったこっちゃねぇ!」と
そのまま、かぶせてボルトで締めてあるのをたまに見かけます。

どこの家庭にもハサミやカッターくらいあるでしょうから
合わせてカットしてあげましょう

これでピッタリ納まりますね
これくらいの気遣いも欲しいものですね。

また、ノックピンすら居ないものも見かけます。
ノックピンを使うには訳があります。


何事も
「考えながら」作業して欲しいものです。