Maintenance SHIOHOUSE

■SHIOブログ■
「店主の独断と偏見でつづる個人的な日誌」

錆に注意!

2009-08-31 20:03:00 | CB400F/350F
しばらくサボっていたので拡大版です(笑)

最近、当店オリジナルのキャブレターO/Hセットがご好評なのですが
キャブのO/H時に気を付けたいことがあります。

タンク内の錆です。せっかくキャブをきれいにしてもタンク内に錆があれば
キャブにまわってしまいます。
※純正コックのストレーナーや後付けタイプのメッシュタイプのストレーナーでは網の目より細かい錆は通過してしまいます。
マグネット付きなら少しは回収が出来るかもです。
ろ紙タイプのストレーナーはよりろ過性能は良いですが、燃料ポンプの無い自然落下タイプではタンク容量が少なくなると落ちにくくなる場合がありますね。

沖縄より単体で送られてきたCB400Fのキャブレター
本来、届いてから車両に装着して試乗し、診断を行うのですが
このキャブ、外して2年熟成ということでパッキンも入っていないため即バラすことに

むむむ..なにげに赤いぞ!、

錆の粉末が堆積していました。

絶句!

端一箇所だけフロートレベルが変!逆さにしているからフロートバルブのピンを押し下げて傾いているはずが、一箇所だけ規定のレベルになっている(もちろんピンを押し下げていてこの状態)
乗っていたときはここだけ異常に薄くなかったのだろうか?

そんな状態でも、O/H後はこんなにきれいになります。



ステープレートはオプションでO/Hを行います。

この、岐阜からはるばる来た車両、依頼事項はオイルもれ、オーバーフロー
オイル漏れはケース合わせ目のオイルシールすべてから出ているのでエンジン全バラ作業となります。(後日書きますね)

さて、このキャブレター、再メッキが掛かっていて確実に分解作業が行われているのは確実
お客様とディスカッションすると
購入時すでに再メッキ掛かったきれいな状態だったが調子が悪く挙句乗らなくなり
4年熟成させ、今年の6月にキャブのO/Hをして車検を通したものですが....オーバーフローが止まらない
実際、当店に届いてみてコックをひねったら即尿漏れ状態というか、だだ漏れでした。

ぱっと見、きれいなんですけどね~


あれぇ、チョークシャフトのメクラ蓋が脱落!?かしめが甘かったか


チョークリンクのピンの割ピンがいない!?脱落するものじゃないですよ~


純正のガスケットセットが使われているようですが、ドレンのOリングが交換されていない、ここからも滲んでいました
(せっかく、セットに入っているんだから替えなきゃ損だぜぃ!)


ステープレートもわざわざ分解し、スロットルレバーも再メッキを掛けていますが、かしめのピンを外してそのまんま。
ピンで位置決めしているのでなければ左右に遊びますね~

この部位は当店ではオプション作業とし、きちんと工作機械でピンを削り取り、加工ねじ切りして、着脱可能なピンを作成し再度分解が容易にできるようにしています。

やっぱりここにも......


タンクを確認すると....ほれ、

タンクの天井部分に錆が発生していることが多くあります。
空気に触れている時間が長い部分です。
タンクの錆取りを行ってもやり方が悪いと天井の錆は取れません
定期的に万遍なく転がす必要があるのです。
チェックするには?
給油口から覗いても底は見えても天井は見えません
給油口から指を入れて周囲の天井をナゾって見ましょう

ためしにジョッキに5リットルほど石油ポンプ(しゅぽしゅぽ/醤油ちゅるちゅる)で
底の合わせ目周辺を重点的に抜いてみました

こんなに居ます。
定期的にこのように石油ポンプで底をさらうのもゴミを貯めない方法です。

でも、その前にタンク内の錆を無くしましょう
最近ではリプレイスのタンクが発売されたので
無理に程度の悪いタンクを使わずに新品に替えた方が結果安上がりだったりしますね。
自分でやれば手間はタダでも、キャブ掃除をしょっちゅうやるのも大変ではないでしょうか?

今年は異常事態が発生しています。
昨年秋のリーマンショックで冬場のエンジンO/Hがほとんど無かったのですが
ここに来て「フルO/H祭り」

エンジン一度開けてるにも関わらず、肝心なところを処置しておらず
ただ開けて締めただけ?状態のCB400F
お客様が見に来る為、リフトの上に並べた状態
O/Hの場合、出来る限り分解した状態を見に来ていただきます。
見積り、カルテを見ながら不具合箇所の説明、作業内容の説明、提案を行います。
実際に自分の乗っていたエンジンがどんなだった、
ひどい場合はどんな状態になっていたのか
ご自身の目で見てもらうのが後々「よい状態で維持しなくちゃ」という気持ちを芽生えさせます。


高知ナンバーのCB350F、フルO/H&ボアアップの依頼
走行の少ないよいエンジンです。

こちらは遠方なので、不具合箇所の画像をメールまたはCDに焼いて見積もり、カルテと共に送付します。

単体(半バラ)で持ち込まれた長期熟成のCB400F


このほかに先日の記事のCBX400Fのエンジン

分解済でお客様が見に来るの待ちのCB400F、
これから分解する岐阜ナンバーのCB400F

工場内はエンジンの無い車両に占拠されてしまいました。
しばらく、重整備車両はお受けできない状態です。

書籍のご紹介

2009-08-27 09:57:00 | ノンジャンル
新刊のご紹介
「カースタイリング」という本をご存知でしょうか?
いろんな4輪車の開発時のデザイン画やクレイモデルなどが紹介される本なのですが
今回、ご紹介する本は出版社は違いますが
ホンダモーターサイクル版といった感じの本。
Part1では1957~1984までの車両をピックアップして
開発時のデザイン画やプロトモデル(モックアップ)が各デザイナーのコメントとともに掲載されています。

「Honda DESIGN Motorcycle Part1 1957~1984」
日本出版社 定価¥3800+TAX 
ちょっとお値段しますが、「ホンダマニア」には必須でしょう。


掲載車種はこのとおり

CB400Fは特集本が数多く出ていて、デザイン画やプロトモデルの画像は見たことがあるものが多いかと思われますが

DVDに有る、デザイナー佐藤允弥氏のインタビューは興味深い話が聞けます。


取材時当店でお貸しした車両、以前の記事でリアフェンダーにサインを頂いた車両です。

当店でも大盤振る舞いでタンクにサインを頂きました。
CB400Fのデザイン上の大きな特徴はタンクですものね~

CBX400Fも初めてみるデザイン画や試作車(モックアップ?よく特集本で紹介されるショーモデルではなくそれ以前のもの)も載っています。


最近の傾向でこのような大人向けのMOOK本が多く出てきます。(ターゲットは40~50代ではなかろうか)
しかしながら作る方も同世代で欲しいものが一緒の世代
良いものがどんどん出版されます。
見たことが無い秘蔵画像がどんどん公開され「紙フェチ」には堪らないですね~




CBXは重症患者多すぎ

2009-08-25 23:37:00 | CBX400F/550F
当店ではCBX400F/CBR400F/CBX550Fに関してはエンジン単体でのO/Hを行わなくなりました。必ず車両ごとお預かりすることにしています。
完成後はキャブ調整も含めて、ある程度試乗してからお渡しするようにしています。

今回の作業は単体O/Hでの最後の仕事
九州は熊本のショップさんから送られてきたエンジン
(CBXのオーナーさんがどうしても当店にとショップさんでエンジンを降ろして送ってきたものです。)
現在当店ではショップさんの販売車両のエンジンなどのO/Hの外注作業もお受けしていません
ショップさんの販売用の車両のエンジンとなるとコストが絡んできて
やりたい部分をすべてやらせてもらえず中途半端なO/Hになってしまうことがよくある話なのです。
そんなエンジンを「シオハウスで組んだエンジン」として話されたくないのです。
話の成り行きで「O/Hやってもらえませんか」といった話になったときに
「妥協しないでやらせてもらえるのなら良いですよ。」というのですが
仕事が来たためしがありません(笑)

話がそれてしまったので本題に
届いたエンジンは専用のエンジン台に載せファイヤリングテストを行い
不具合箇所の確認を行います。
(長期放置のエンジンであれば状態に応じて、オイルラインにオイルを強制注入したり(ドライスタートを防ぐ)、そのまま即分解したりします。)

今回の訴えは「エンジン異音」(うなり音がする)、オーバーヒートする(あからさまにパワーダウンする)との内容。
エンジンを掛けてみると確かにモーターが回るようにうなり音を発する
サウンドスコープであらかた位置を確認し分解します。

ちょっと判りづらいですが、#1ピストンヘッドがオイルでべっとり
2型エンジンなのに純正のメタルガスケットではなく社外品のガスケット
最近開けているのは確実ですね


シリンダーを見ると....愛読者の方にはいつもの風景ですが
シリンダー内壁が錆びた痕跡で巨大なクレーターが出来ています。


すべてのシリンダーに錆の痕、#2シリンダーIN側にはかじりまで
長期放置歴のあるエンジンでしょうね、
しかしながらいつも思うのですがこんなシリンダーで平気で組んでしまう気持ちがわかりません。
オイルが上がるのがわかりきった話です。
オーバーサイズピストンも社外で出ていますから
セオリーどおりの作業ならボーリングは必須でしょう。

そんなエンジンですから、他にもおっつけ仕事はたくさん露呈してきます

トルクの掛かっていなかったボルト


クッションラバーが居ない。微振動などで分岐部分にクラックが入らないようにラバーが入っているのですが....


そのパイプのエンドのオイルボルト本来8mmのアルミワッシャーが入りますが、こともあろうにブレーキのオイルボルトワッシャー10mmが1枚ずつ使われていました。(笑うしかないですね)


フィルターケースが合わさる部分には液体パッキンがはみ出すほど大量に塗布されています。普通なら塗りません(その前にOリングを新品にするでしょう)
もちろんフィルタースプリングシートも入っていませんでした。

さてセルモーターも大変なことに

ブラシが収まるホルダーが傾いているのが解りますか?

ブラシがこんなに偏磨耗しています。組む時にひん曲げて直しもせずに組んだのでしょう、内部はしっとりオイルまみれです。

スラストワッシャーが何故ここに!?、(左側軸部分)
パーツリスト、マニュアルを見ながら組めば間違えることは無いのに...
せめてデジカメで各作業ごとにバックアップすればよいのですがねぇ

スターターカバーを開け、ワンウエイクラッチを外してびっくり

パルスジェネレーターの配線をカバーする鉄板がついていません

クラッチ側は....あぁプレートがいい塩梅に焼けていますね~


これがオーバーヒートの原因でしょう
ピストンを外した時にすでにコンロッドの動きが重かったのでうすうす感じていましたが焼ついています。

小端側も3箇所かじりが酷く、要交換
手持ちの中古良品で対応します。(注意:単品販売は一切行っておりません)


クランクメタルも見事に傷だらけ


クランクシャフト、メインジャーナル、クランクピン共に傷が有りラッピングが必要ですがあまりに傷が深いと焼入れの硬質層がどれだけ残るか、対応できるメタルがあるかが肝になりますね。

振れも5/100あり修正が必要ですね~

これもおそらく原因はドライスタートと考えます。
長期放置後完全にオイルが落ちているところで回してしまったのではないでしょうか

これ以上に細かい部分の不具合があり
見積もりも大変な金額に.........
中古のエンジンパーツも決して安くはありません
特にコンロッドはエンジン買ってきて分解して必ず使えるものが入っている保証はないのです。何基か分解して1台分とか手に入ればいいほうです。
最近ではエンジン自体が高騰していますので難儀しています。

その前に
「磨耗させない、壊さない」ですね。



いろんなナンバーが!

2009-08-25 19:38:00 | ノンジャンル
最近は陸送業者も運賃が安くなり、車両を運びやすくなりました。
そんなこともあり最近は珍しいナンバーの車両をお預かりすることが増えました。
(先日はCBX400Fで「水戸」ナンバーを2台お預かりしていたりしました。)
さて、何度か記事で登場した京都ナンバーのCB400F
やっと完成して業者さんがお代わりを持って引き取りに来ました。

最後の最後に忘れ物が数件出てしまいご迷惑をおかけしました。

入れ違いで来たのは「高知」ナンバー
「鰹の国」ですね~
エンジンO/Hの依頼です。
コメント (1)

トラブルシューティング

2009-08-24 10:01:00 | CBX400F/550F
メールにてこのような問合せを頂きました。
良くありがちな話なのでこちらに載せてみます。

「いつもブログ楽しく拝見させていただいています。
xx県xxxxxでCBX400Fを乗っているxxxxxと申します。
昨日、素人が手を出してはいけない、スターターを分解してしまいました。
再度組み付けをお願いしましたら期日はどのぐらいかかり、修理費はおいくらぐらいかかりますか。
その際、スターターをお店に送り、修理後に着払いで返送をしていただくことはできるのでしょうか。

スターターを分解した理由は、バイクに1か月ぶり(一か月前に乗った時は近所のガソリンスタンドへガソリンを入れに往復3キロぐらいしか乗りませんでした。)に乗ろうとしたところ、セルは回るのですが、エンジンがかからず、押しがげでチャレンジするもかからなかったため、ブログにもあったスターターにオイルが混入したものと思い分解をしてしましました。
1か月前まではセル一発でかかっていました。
バッテリーの電圧が原因かと思い、車からケーブルでつなぎセルを回したのですがセルだけが回りエンジンはかかりませんでした。
プラグの点検をしたところ、右側の2本のプラグが濡れていました。
エンジン不始動の原因はなんでしょうか。」


まず最初にお聞きしたいのが、サービスマニュアルをお持ちですか?

○サービスマニュアルの故障診断(トラブルシューティング)の「始動不能または始動困難」を見て、書かれていることを一箇所ずつチェックしていくのがセオリーです。
○書かれていないことで最近多いのがガソリンの劣化
ガソリンは時間が経てばどんどん揮発、変質し燃えにくくなります。
距離乗らない方に多いのですが、保管中にフロートチャンバー内部のガソリンが劣化してかかりづらい、挙句プラグがかぶりそれでもセルを回し続けプラグが終る
タンク内のガソリンも補充を続けてもどんどん劣化するだけです
定期的に全部入れ替える必要はあります。簡単です「乗ってください」

さて、今回の場合
セルモーターは回っていたのですから、セルモーターを分解する必要があったのか?
その前に見るべきことはあるはずなのですから
マニュアルを確認すべきでしたね
ひょっとしてサービスマニュアルをお持ちで無いとか.....
マニュアルも無しにいきなり分解作業というのもいかがなものかと思います。

冒頭にもありますように
このブログにはパーツリスト、サービスマニュアルを見れば解ることは書いておりません(バックナンバーを見ても出ていません)
パーツリスト、サービスマニュアルを持っている事を前提で話を進めております。

単に金額で考えれば高いのかもしれません、
そんなのを買うんなら外装パーツにお金を使いたい
そんな方も少なくないでしょう

ここのところ、そんな風潮が多く感じられます。
確かにこの不景気、誰もが倹約をしている
また、若い方に多いのですが見えないところより見える部分にお金を使いたい
実際、何か起きたときに困るのは本人です。
「壊れたらインターネットで検索すれば良い、Mixiなどのコミュで聞けば良い、
究極は聞くだけタダなのでショップに聞けばよい」
皆さんが愛車とこれからどれだけ関わっていくかにもよりますが
自分で覚えていかなければいけないことなのです。
人から聞いた話はすぐに忘れますが、自分で調べて行き蓄積した臨床例は自分にとって財産になるのです。
私の基本もまさにそこにあるのです。
高校を出てホンダに入り退社したあと独立して始めて
(高校生中もブローカー状態MC誌やO誌の個人売買の常連でした(笑))
これまで携わった車両、エンジンは何百台にもなります。
その臨床例の蓄積量、覚えた技術が財産なのです。

口うるさい年寄りのたわごとと思われるかもしれませんが
頭の隅に残してもらえればと思います。


追伸:CB400Fの場合はサービスマニュアルにトラブルシューティングが出ていますが日常点検については触れておりません
メカ初心者は「取り扱い説明書」も持っていた方が良いでしょう。