あれよあれよと4月になってしまった
年度末も過ぎて、また新規の修理を受け無くして多少なりとも余裕が出てきたので
今年の頭からサボっていた修理部門のブログを再開します。
っていうか溜めすぎると収拾付かなくなるし何をやったか忘れてしまう
1月分は「載せないで~」というお客様も居て少なく、今回から2月分からとなります。
今回の車両は平成25年にフルメンテナンスをして、その後は24カ月点検
地元で車検を通したりで実にフルメンテナンスは11年振り
当店のお客様でも数名居るが、当店でフルメンテナンスした次の車検は地元で通すだけ、その次は当店でフルメンテナンスと1回飛びで当店を利用するお客様。
遠方だったり走行距離が少ない場合が多い、これは前もって「次回は地元で通すので4年後お願いします」と申告いただければ権利をキープしておく
しかし、意思表示が無く無断でキャンセルされた場合には次回の権利を失ってしまう。
今回の車両のように車検の時期になり「次も地元で.....」と申告してあれば間が開いたとしても大丈夫
ただ今回は前回のフルメンテナンスから時間が経っておりどんな状態だかドキドキものです。
まず来た時受付時の問診で走り始めてエンジンから異音がするとのこと「排気漏れじゃないの?」と聞くも違うという
エンジンを掛けてみるもチンチンに温まっていてこの状態では出ないというので後で冷間でエンジンを掛けて確認することにする。
別の依頼事項はメインハーネスの取り回しが正規では無いので変更して欲しいというもの
あぁこれはひどい、メインハーネスやスイッチのハーネスがヘッドパイプの横を通っています。
以前に事故修理を他所でやってもらったらこんなことになって帰って来たそうな
っていうかサービスマニュアルにワイヤリング図が載ってるし、マニュアル無ければ分解前に写真を撮っておけば分かりそうなもの
排気音量が非常にうるさい!音量を測る必要もないくらいの爆音仕様
バッフルの穴径も大きい
99dBを大幅に超えています。
良くありがちな話ですが、自分的に良い音で音量がオーバーしていると分からないパターン
またバイクに乗らない一般ピープルからしてもうるさい訳でうちみたいな住宅地でうるさいマフラーで来られると苦情の原因となる
予め対応するバッフルに交換してきて欲しい
また、余計なものも外してきて欲しい
作業するうえで邪魔になる
こういう場合は外させていただき、すべての作業が終わり引渡し前に取り付ける
もちろん脱着工賃は別途申し受ける
事前に外して来ることを推奨します。
お客様からは悪いところはすべてやってほしいとのことで「おっ、腕を振るわせてくれるんですね!」
お預かりした後、お客様から車検対応というバッフルが届いた
この穴の大きさの違いですよ
早速装着して音量チェック
ありゃ!まだオーバーするな
原因はバッフルが緩くて隙間が出来ていてここを排気ガスが抜けてしまう
この場合はグラスウールで対応
キジマ製のプレスウールタイプが重宝する
バッフルにこれを仕込んで隙間が出来ないようにする
さて音量は....
こんなに静かになりました。
ただし、あのグラスウールにもデメリットがありマフラー内部に水蒸気が発生し水分を含みマフラーのパイプと接している部分が錆びて固着して
バッフルが外れなくなる場合がある
受付時に言われたエンジン異音
単なる排気漏れでした
全部締まります
エキゾーストガスケットを交換した場合は熱でなじんで緩くなる場合が多いので定期的にチェックをすること
ツーリング先でナットを落として爆音仕様で恥ずかしい思いをするのも嫌ですよね
ブレーキレバーがおかしい
マグラ製のレバーだが角度がおかしい、指の先端しか掛からない
多分違う車種のだと思うが本人に聞くとこれで慣れているので問題ないそうな
工場内に入れリフトに乗せてとりあえずタンクを外してメインハーネスの状態を確認
正規の取り回しはこれ
しかも結束バンドの嵐
ワイヤーハーネスホルダーが何もすることが無くうなだれています(笑)
左サイドカバー内
配線の取り回しがムチャクチャ、マグネチックスイッチが「何故そこに!!」
エアクリーナー固定ボルトは不在
これも正規は
北米向け輸出仕様のマニュアルのためシリコンレクチファイヤーの位置が違うが他は一緒
少し前方に目を移すと......
ブローバイホースが潰れている
これ、エンジン内からのブローバイガスが抜けずに内圧が上がってしまう
ホースがブローバイカバー部ですっぽ抜けてくれれば良いが、抜けないで内圧が上がり続ければエンジンのいろんなところからオイルを噴いてしまう
シート下はヒューズBOXとシリコンレクチファイヤー用のハーネスがエアダクト上を通って(本来は下というか後ろというか)
エアクリーナーケース固定部にはエアダクトワッシャーが入っていないし
前方部はメインハーネスのアース線がボルトと共締めされていない
またエアクリーナーは「合掌」状態(日付は撮影後に書くようにしました)
完全に詰まっているでしょう
右サイドカバー内は
ヘッドライトリレーハーネスのリレーが鎮座しているくらいだが
バッテリーが棒グラフ状態
一応こちら側もマニュアルの図を載せておきます
結構いい加減な車両が多かったりします。
さて、足回りをバラしていきましょう
フロント周りから、メーターギアがなんかステーで固定されています
だいたい予想は付きますが
案の定、アクスルナットが締まっておらず手で回ります
どんな意図があるんだろう
ホイールベアリングは指で動きを確認
フロントブレーキ、内部はヘドロが沈殿
ピストンも錆が出ています
反対のキャリパーも同様
マスターシリンダーにも堆積物
この5/8マスターシリンダー用のインナーキットが廃番で手に入らなくなった
シールだけは流用できるものを探したので一安心
ただしピストンが終わったら困ってしまう、早いところ使えるものを探さなくちゃ
洗浄後乾燥させたキャリパー
シール溝の結晶や、パッドスライド面の錆などきれいにしなければ
一通り洗浄~掃除完了
リアホイールのベアリングも指で確認
オイルシール部にグリスっ気無し
スプロケットの軸部分もグリスっ気無し
ここは摩耗を防ぎたいのでグリスを塗布したいところ
ステムベアリングの確認はフロントホイールを外した時に行う
重いものが無くなれば引っ掛かりの確認がしやすい、なんならフロントフォークを外すと更に分かり易くなる
引っ掛かりがあるためステムベアリングを交換する
なんでも以前に事故をしているとのことでボールレースにダメージがあったのにスルーしているのか?
とりあえずフロント周りを分解しようと速度警告灯を外した時にステムナットが締まっていないことに気が付いた
指で回るよ!
トップブリッジのサイドのボルトもスプリングワッシャーの場所がおかしい
この場合ナット側に入る
また、アルミ製のトップブリッジに傷を入れないように平ワッシャーも入れたいところ
このようにフロントフォークが無い状態だとあからさまに引っ掛かる
外したステムは事故のダメージだと思われるがブラケット部が押されて後ろ方向にずれている
ブラケット部の輪とステムシャフトの隙間を見れば一目瞭然
外したボールレースやコーンレースにはしっかりと打痕がある
これまではリテーナー付きベアリングが使われていたが
今度は正規のスチールボール仕様
依頼事項であるフロントフォークオイルの交換
左側
右側
トップボルトはスプリングを抜いて「どこから噛むか」マーキングしておくと組むのが楽になる
ボトムケースのフェンダーブレース取り付け部のねじ山が1カ所おかしなことになっている
右ボトムケースの前側、ここだけ長いボルトが使われていた。
本来の長さのボルトが掛かる部分が舐めているため、長いボルトでその奥の生きているねじ山を使っている
無論ヘリサート修正
パイロットタップで真っ直ぐにヘリサート用のねじ山を切る
(先端のガイド部分があるため奥が行き止まりの場合は途中までしかネジが切れない)
次に普通のヘリサートタップで更に先までねじ山を切る
ヘリサートコイルを挿入し
最後にステンレス用のM6x1のタップでさらい仕上げる
施工完了
ボルトは純正品に交換M6x28mm
キャリパーホルダーシャフト下側のナットはナイロンのロックナットが使われていたがナイロン部が傷んでロックがイマイチ
ステンレスリングのロックナットに交換した。
フロントホイールを組む際にはダストシールのリップ部にグリス塗布
アクスルシャフトにはスレッドコンパウンドを塗布
リア周り
ブレーキパネルの分解洗浄
ブレーキカムのスプラインが凄いことに
トルクロッドが外れたり、社外トルクロッドの折損などと同時にリアブレーキを掛けるとパネルがぐりん!と回ってしまいこんなことになる
凄い力が掛かるということ
これだけずれるとブレーキアームを組む際にはポンチマークをずらさないといけない
ブレーキカムの軸部分とブレーキシューの摺動面はブレーキグリスを塗布して組み上げた
リアハブのダストシールにもグリスを塗布
ドリブンスプロケットの収まる軸部分にはスレッドコンパウンドを塗布、これは摩耗対策
無論ドライブスプロケット側もスプラインにスレッドコンパウンドを塗布
エンジンのヘッドカバー面からオイル漏れ
ブリーザーホースが潰れていたため内圧が上がり出てきたものか?
いずれにせよ一度噴いたら収まらないので分解してガスケット交換
いよいよ分解
液状ガスケットが塗布されているがはみ出ていますね
凄いものを発見
またよく見るとカムチェーンホール脇のM6x60mmのボルトが4本不在!?
組み立てる時に余るだろうに
他のボルトは場所が違っているものもある
緩めたときに出ている長さがまちまち
ヘッドカバーガスケット部も液状ガスケットだらけ
結構はみ出ていますね
こんなのが落ちてオイルスクリーンに張り付いて目詰まりしたら焼き付きの原因となる
オイルパイプ、穴に液状ガスケットが詰まっている
おそらくオイルオリフィス以降のオイル通路に液状ガスケットを落としたのだろう
カムは下にあるプールのオイルでも潤滑出来るので焼き付きは無かったが怖い話だ
洗浄して出た液状ガスケット
ヘッドカバーを開けたならヘッドのトルクチェックも行いたいもの
交換部品、当店では基本的に純正部品を使う
洗浄後
もちろんタコメーターオイルシールも交換します。
液状ガスケットはきれいに除去できました。
ボルトが不在だったkamuche-脇のボルト穴はオイルが満ちています
これは除去しておきます
残っているとボルトを締める際にオイルは圧縮できませんから締めているうちに穴の周りが割れたりします」。
新品ボルト4本用意
エンジンを組み立てた後は電気周り
変なバイパス線を発見
どうやらヘッドパイプのあたりでメインハーネスの緑線が断線している模様
バッテリーのアース端子からヘッドライトケース内の緑線に接続
美しくないので外します。
ヘッドライトのリレーハーネスが組まれており、その緑線を使用して短いバイパス線を作りヘッドライトケース内でメインハーネスの緑線に接続
ホーンのアース線もサブコードで接続
ヘッドライトケースに入る配線のギボシは事前にプライヤーで締めておく
ヘッドライトケースに入れてしまうと狭くてやり辛い
ヘッドライトケースにはカラーが入っていなかった
本来ならカラーを通してヘッドライトステーのアースを取る
カラーが無いのでウインカーに直接アース線を繋いでいる
これもいかがかと思うので正規の状態にする
ヘッドライトステーのウインカーがクランプされる部分の塗膜を除去する
ヘッドライトブラケット部の内側の塗装を除去
作業前はフランジナットで固定されていたが
ケースワッシャーを使う、内側にゴムが張られていてヘッドライトが動かないよう固定できる
アース線が繋がれており
メインハーネス(緑線)~ケースワッシャ~ヘッドライトケースカラー~ヘッドライトステー~ウインカー
このようにアースが繋がります。
左サイドカバー内、こうでなくちゃ
ヘッドパイプ周りのAfter画像を撮り忘れた(汗)
キジマ製フロントカバーグロメットに刺さる部分のカリの形状が悪く
社外グロメットは経年で硬化して外すのに一苦労、純正新品に交換(左)、シリコングリスを塗布して脱着をしやすくした
サイドスタンドピボットボルトのロックナットが脱落していた
動く部分だけに緩みやすい
ロックナットを装着します、これなら緩んでも脱落は無い
なんやかんやと大変な作業になりましたが
お客様は喜んでお帰りになりました。
ネタをたくさんありがとうございます。