Maintenance SHIOHOUSE

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「店主の独断と偏見でつづる個人的な日誌」

エンジンフルO/H車両

2010-11-30 03:26:00 | CB400F/350F
車両をお預かりする前に内容によっては一度診せに来てもらうことがあります。
不具合箇所をある程度特定することでお預かりしてからの作業を円滑化するためです。
今回の車両も「一度診せていただいて、そのときに入庫する予約しましょう」
という話で茨城県からはるばるお越しになった車両ですが
来た時の問診時に
「フルレストア、エンジンフルO/Hしてもらったがどうも調子が悪い
その後、1年くらいかけて自分なりに部品交換、整備して今に至るが
スピードは120km/hがせいいっぱい!オーバーヒートはするし!
ギアのはいりが悪い!ヘッドガスケット部からのオイル漏れ等
究極はオイル交換の際にへんな細いピンが出てきた、金属粉も多かった」
なんて話を聞いたらこのまままた茨城まで乗って帰らせるわけにいかなくなりました。
ミッションのニードルベアリングなら万一のことが有っては一大事です。
店の置き場所はきついのですがそのままお預かりして
順番が着たら作業始めるという話になりました。
そのときで預かるのに1ヶ月待ち状態でしたから
順番が来るまで置きっぱなし状態になっていました。

見事なフルメッキ車両!
混み合ってしまって1ヶ月ちょいオーバーしての作業開始

まずはオイルを抜いて、フィルターケースも外して内部チェック

出たぁ~~ ピンが出た!
このサイズのピンといえば…

プライマリーシャフトのワンウエイに使われているニードルベアリングに間違いがない
なぜこんなものがバラけて落ちている??
こんなの初めて見ました。

フィルターケースも金属粉でいっぱい、不安でいっぱいです。
あ、もちろんスプリングシートは居ませんでした。

分解しながら各部のチェック

キックのナックル割れていますね~、ここまで開いてしまう前に溶接補修しておきたい部分です。


エアクリーナースプリングが居ないじゃないですか!

また、バッテリーが合わせ目から液漏れを起こしていますね
よーく見ると、違う組み方されている部分が多いですが
いろんな車種を扱っているお店ではそこまで把握していないことが多いので仕方ない部分かもしれませんね

バッテリーを外してみると
あ~あ見事に錆びてしまっています。

しかしバッテリークッションラバーがひとつも付いていない!リジット状態ですね。
リアエンジンハンガーとのジョイント部、ワッシャー、ナットが居ないです。

ドライブチェーンにおびただしい金属粉が…

カウンターシャフトの斜め上側のリブを削ってしまっています。

CB400Fの場合、シールチェーンを使う場合は幅の狭いものを選びたいですね。

もちろん全バラ決定ですが
まずはクラッチカバーを外して…

ボルトの長さが足りないものばかり
本来6X40のところ6X35ばかり、オイルフィラーの上はちょうどいい長さです
全部緩めた時点ですがボルトの頭の出方が違うのに注目!

クラッチアウターを外しミッションだけで空回しして動きを確認

変に重くなるところが有るのでミッションにもトラブルがあることを確信する。

「スピードが120km/hしか出ない」
「始動性が著しく悪い」ということから
キャブレターもチェックします。
一応、O/Hされているとのこと
まず目に付いたのがスロットルバルブが全開にならない

スクリューを目一杯締めこんであるのでスロットルバルブが途中で止まっています。
これじゃぁスピードが出ないのは当たり前
サービスマニュアルにも出ていますよ~


また、チョークの作動もチェックすると

あ゛っ!スプリングがずっこけてる
チョークのカムとアームに隙間がありすぎるため

チョークレバーを引いてカムが動いてもアームを押してくれません
アームを押してスロットルレバーを動かしアクセルを少し開けた状態にして回転を上げるのです。
コレじゃバタフライが閉り混合気は濃くなりますが、ファーストアイドルは効きません
コレもマニュアルに出ているのに~~
お客様もキャブはいじっているようなので
双方チェックし忘れたのか?

さて、いよいよエンジン降ろして分解です。
ヘッドガスケット部のオイル漏れはスタッドガスケットNGでのオイル漏れ


シリンダーを外しピストンを見ると???
なんだこりゃ?まるで砂を噛みこんだような傷が一面に

もちろんシリンダーもおびただしい縦傷


オイルポンプを外すと…

ノックピンが1本もおらんやん!大、小2個ずつ使います。

落ちていたピンの正体は読みどおりワンウエイのニードルベアリング

しかし、何故ここのベアリングが破損する??????

いや~~~な感触のミッションの正体はこれだ!
メインシャフトのニードルベアリング側

コレは幾度となく記事で掲載しているので分かりますね

ニードルベアリングのシェルとクランクケースとで位置決めのピンで回らないように保持されます
ベアリングのシェル側の穴をあわせずに組んだ結果
ピンに押されてベアリングが変形、シャフトを異常磨耗させる結果となるわけですね。

接した部分の痕跡がピンの頭とシェルとで分かりますね。
ピン自体も押されてケース側に埋もれてしまっていますから
そちらの処置も必要です。

最も驚くべきはクランクシャフトの軸の磨耗


分かりにくいかもしれないのでUP画像


メタル側もこの惨状



コンロッドメタルも…


メタルの計測間違いでピンポイントでかじるならまだしも
全部がNG、
一部メタルの色が分かったので調べたら間違えてはいない様子

可能性が非常に高いのがウエットブラストのメディア
サンドブラストより微細なものですが
研磨剤に変わりはありません
洗浄が足りなくて残っていれば充分に悪さをします。
おそらく、メインギャラリーに残っていたメディアが
メインギャラリー→クランクメタル→コンロッドメタル
と流れ、飛沫潤滑でシリンダーに飛んでシリンダー&ピストンに傷を入れた
このように仮定するとつじつまが合います。
メタルの状態、クランク軸の様子は砂を噛んだトラブルまさにそのもの

実際洗浄して微細なメディアらしきものは残っていました。

オイルとともにオイルパンに落ちたメディアはまたオイルラインを通ってエンジンに回って行きます。

結果オイルポンプもこの有様


クランク、オイルポンプ、メインシャフト使用不可
シリンダー要ボーリング
大変なことになりそうです。

総合点検も依頼されていて車体回りも診なくちゃですが

場合によっては乗り換えた方が良い場合もありそうです。

これまでに安易にサンドブラストしてトラブルを起こしたエンジンを
「砂の恐怖」と題して幾度となく紹介してきましたが
先にも書きましたがウエットブラストはサンドブラストほど切削力はなくメディアも細かいものですが研磨剤にはかわりはありません
サンドブラストでは完璧なマスキング
ウエットブラストでは施工中の洗浄が肝になります。
また施工が終わり手元に戻ってきたら自身で徹底洗浄を行いたいですね
自分でエンジン組みする読者も居ると思いますが
この臨床例を参考にしていただけると良いでしょう。

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ガソリンは生ものですよ~

2010-11-30 01:24:00 | CBX400F/550F
エンジン不調ということで陸送で運ばれてきたCBX400F
ミラー以外はほぼノーマルの車両
(うちのお客様でノーマルマフラー付きは結構多いのです。)

25年所有しているということなので2オーナー車くらいかな?
走行距離も実走でしょうか?約5000km



シートカウル内には取説が入っています。「すばらしい!」

早速、エンジン始動を試みるも掛かりが悪い、掛かっても全気筒爆発していない!
プラグを確認するも

焼けが一定していない

#1はカーボンの付着がない!!

プラグが外れているうちにコンプレッションを測定
ほぼ全気筒、11.5kg

さらにプラグに火花が飛ぶことを確認!

燃焼に必要なものは?
「良い圧縮」
「良い火花」
「良いガソリン(混合気)」
ですね~

そうすると残るものはキャブレター

#1はキャブが付いたままフロートチャンバーが外せます。
外してみると…あ゛~~、

もちろんジェットも詰まっていました。
車検は切れているが定期的にエンジンは掛けていたとのことですが
タンク内のガソリンがどんどん劣化していきます
劣化すれば燃えにくくなります。
継ぎ足しでも劣化スピードが若干遅くなる程度です。
意外とガソリンは生ものであることが理解されてないようです。
2~3ヶ月に一度はタンク内部のガソリンを入れ替えて欲しいですね。



汚れ具合からガソリン漏れもあるようですね
フューエルジョイントのOリングも怪しいですね


まだ割れてはいませんがインシュレーターも硬くなっています
余裕があれば交換しておきたいですね。


エアクリーナーは合掌状態!
マグネチックスイッチも新車時からの物でしょう
もうすぐ30年経つ車両、壊れてからではリスクが大きい部品です
こちらも先手を打っておきたい部品ですね。

お伺いしたら
これまで車検でシール類は替えたことがないとのこと
ブレーキの引きずりも依頼事項ですから
前後ブレーキはフルO/H決定です。
私としては毎車検ごとが好ましいですが、最低でも4年ごとに交換して欲しいです。


また、タイヤも古くなると硬化してオゾンクラックが入ります。

さすがに試乗もちょっとですねぇ

ブレーキ周り(インナーパーツ)やタイヤなどのゴム製品は走行距離に関係なく時間で劣化します。

スイングアームのリンク周りもリフレッシュしたいので
総合点検でフル点検したいところですね。


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業務連絡

2010-11-26 18:03:00 | イベント
この読者でホンダSFOBの方、
または仲間にSFOBが居る方は是非言付けをお願いいたします。
幹事より通達が来ました。

「ホンダSF押上 OB及び関係各位

秋も深まり、朝夕はひときわ冷え込むようになりましたが
皆さま如何お過ごしでしょうか。


今年は久しぶりにホンダSF押上工場のOB会を実施したいと考えております。
(押上SFを中心に、港、文京、葛飾、江戸川、江東、足立などのOBも大歓迎です)

たまに会うのが冠婚葬祭だけでは、積もる話もままならない状況ですので
ぜひこの機会にご参加頂き、旧友と親交を深めて頂ければ幸いです。

尚、会場等の予約の関係で、12月3日(金)までに、下記連絡先(幹事)にメール返信か電話で参加・不参加のご連絡を頂きますようお願い致します。

おおよその参加人数が確定次第に、会場及び参加費を決め、最終確認を取らせて頂く予定です。
お忙しい中ですが、周りのSF・OB、関係者にも声を掛けて頂き、なるべく
多くの方々のご参加をお待ちしています。特に男性だけでなく、
事務担当だった女性陣も大歓迎です。SFOBとしてぜひご参加下さい。(奥様がSFOBの方はぜひご一緒に!)

OB会開催要領
日時:12月29日(水)17:00ごろ予定(宇都宮の方も帰れる時間にします)
会場:参加人数により、都内の居酒屋~ホテル宴会場まで考えております
会費:こちらも会場により変動あり(概ね7000円~10000円以内)
催し物:未定
以上、人数確定後に詳細再連絡致します。
よろしくお願い致します。」


ホンダを退社してから25年近く経ちました
すでに当時の工場長や上司はリタイヤしている方も多く
亡くなられている方も居たりします。
会えるうちに会っておかないとそのまま自分たちも歳取ってしまいます。
また、どこの企業も一緒でしょうが転勤~転勤で消息不明なんて普通に有ったりします。
是非ホンダSF(ホンダサービス)関係者で参加したい方はご一報ください
幹事の連絡先をお知らせいたします。
また、参加できなくても幹事がOBの名簿を作成中ですのでご連絡いただけると助かります。





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長期放置すると…(Part.1)

2010-11-26 01:12:00 | CB400F/350F
エンジンのフルO/Hでお預かりした車両(エンジン)

引き上げてきた車両は以前オーナーさんがレストア済み

ぱっと見きれいですが…

多忙のため1年近くエンジンは掛けていなかった車両
それには場所の関係で当店が引き取りを伸ばしいたのも要因のひとつ(申し訳ありません)
とはいってもこれ以上引き伸ばして年越すわけにもいきませんから
車体を置くスペースが確保できないため
朝一で引き取り、エンジンを降ろし夜には車体を返却という強硬手段をとることにしました。
返却後の車体はオーナーさん自ら再度レストアするとのこと


そんな車体をよく見ると…

埃が堆積していますね~


あ゛っ!!ねずみの足跡が…


新品を付けただろうマフラーにもこんなに埃が…おやっ!
よ~~~~く見ると

錆が発生しています。
ポイントカバーも!

これらの画像を見て気が付きましたか?

ともに「点錆び」ですね~
これは本来クロームメッキの表面にはミクロン単位のピンホールがあるのです。
手入れが悪いとそこから錆び始まるのです。
インナーチューブも同様ですね。点錆びだらけのフォークよく見かけます。

錆びさせないようにするにはマメな手入れが必要ですね。
表面に油分を保持しておくこと、たとえばウエスにCRCなどを染み込ませた「油雑巾」を常に用意していてちょいちょい拭いているとか
中には、ツーリングから帰ってきたら水洗いして、水切りのために町内一周、帰ってきたら「アーマーオール」を車両全体に掛けてフィニッシュなんていうお客様も居ます。
当店で依頼しているメッキ屋さんでは研磨剤の入っていないワックスを薦めています。
たとえばシュアラスターみたいなやつですね、マフラーみたいに熱がかかるところは大丈夫かしら?今度聞いておきますね。
※注意:綺麗になるからといって研磨剤入りのケミカルは使わないようにしてくださいね
(マザーズ、ピカール、ネバーダル等)
磨いたその場はめっちゃ綺麗になりますが、表面を研磨しますからメッキが薄くなります。
特にスポークなどのユニクロメッキはすぐに地が出ますから逆に錆びやすくなります。
ご注意ください。

長期放置といえばここもなにかしらダメージがありますね。


白い粉を葺いて、ピストン表面に錆びも発生しています。

ピストンを外すと…

内部もフルードの変質した不純物が沈殿していました。


ピストン表面の錆、あぁもったいない!

キャブレターの内部も拝見

結構きてますね~

「さて、これから長期放置するぞ~」って
放置する方はほとんど居ませんから
長期放置=要キャブO/H
この図式は必然ですね~

東京でも寒くなってツーリングシーズンは終わり
OFFシーズン突入です
暖かくなるまでほったらかしなんてことにならぬよう
寒くても最低でもマフラー内の結露がなくなる程度乗って
錆が発生しないように手入れも怠らないように
メンテナンスを具申いたします。

実はこのシリーズ、もう2台続きます。(入庫済み)

追伸
このブログ、日に900~1000件アクセスがあります
その中にはメッキ関係業者、同業者、自称磨きのプロもいるかと思いますが
どうでしょう、ノウハウに当たらない程度に
「こんな方法もあるよ」、「私はこうしてます。」
みたいなコメントをお待ちしています。
CB400F/350Fはメッキ部品も多く
乗って楽しみ、磨いて楽しむバイクです。
仕事から帰ってきて冷蔵庫から缶ビールを持ちガレージに直行
バイクを磨きながらちびちびやる。
こんなお父さん居るんじゃないですか?


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メールでの質問

2010-11-23 21:17:00 | CB400F/350F
メールにてこのような質問を頂きました。

「質問が有るんですが
カムチェーンテンショナーアームを取り付けて
リダクションギヤーのセルモーター側の大きなギヤーに干渉してしまうのですが
正規の位置はギヤーに干渉せず奥に入るのでしょうか?
行き着けのバイク屋さんに見てもらって聞いたのですが納得出来ませんでした
宜しくお願いします。」

まず、どんな状況でもテンショナーアームとリダクションギアは干渉しません。

参考画像


本当に当たるのであればテンショナーアームの変形くらいしか思い当たりません

ご確認ください。