拝啓 夏目漱石先生

自称「漱石先生の門下生(ただのファン)」による日記

「ペンション」

2008-12-22 01:47:45 | 音楽
岡村靖幸の名曲「ペンション」。1990年リリースの名盤『家庭教師』に収録されているスローバラードで、優しいピアノの音色と鼓膜に沈み込むベース、哀愁漂うサックス、そしてドラマティックなメロディーが、聴く者の胸を締め付ける。数ある岡村ちゃんの楽曲の中でもダントツで1番好きな曲だ。去年の秋のライブでは「ライブ延期ごめんねソング」をキーボード弾き語りで即興で披露してくれた岡村ちゃんだが、あの時私は「ペンション」弾き語りを期待してライブに足を運んでたんだよなぁー。ただ、「ペンション」の歌詞は、yujiさんのブログでも指摘されているが謎フレーズのオンパレードだ。岡村ちゃんのソウルフルかつ切ない歌唱や素晴らしいバックトラックに身を任せて聴いてるとあまり気にならないが、本当不思議な歌詞だよな。この曲に出てくる男女の関係がイマイチ掴めないもん。「ペンション」というタイトル自体も異様。カラオケで曲名が表示されると、同席してる人に必ず笑われるし。でも先日カラオケで久々に歌ってみて、「ん?つまりこういうことか?」と思った事があったので、強引に解釈してみる。どうせ岡村ちゃんだって妄想で歌詞書いてるんだし(すいません)、聴き手が自由に妄想解釈したっていいだろう。以下、歌詞からの引用は『』で。
「ペンション」の歌詞に出てくる男女の関係が掴みきれない最大の原因は『仇名から「さん」づけ呼びへの距離を測れない』というフレーズのせいだろう。「普通逆だろ!」みたいな。気になる異性に対して初めは「さん」付けで名前を呼び、距離が縮まるにつれてあだ名で呼ぶようになるのが普通。でもこれ、歌詞に出てくる二人が幼馴染…という関係だったら納得がいくし、その他の奇妙なフレーズにも整合性が出てくる気がする。幼稚園ぐらいの頃から親しい二人は当然お互いをあだ名で呼び合う仲。しかし思春期に入った頃から、それがちょっと恥ずかしくなる。「人前で親しげに話したりしてたら、同級生に付き合ってると誤解されるんじゃないだろうか」。そしてなんとなく距離を置き始め、やがて気軽に相手をあだ名で呼べなくなってくる。
中学・高校と同じ学校に進学しても、学校で話すことは殆ど無くなる二人。そんなある日、女の子が何を思ったか、雑誌片手に突然男の子にこんなことを言う。『このペンションの食事に連れてって』。『そんなに学校でも話したりしたことない』男女がペンションに行く、というシチュエーションも名曲「ペンション」の謎だったのだが、この男女が幼馴染同士なら納得できないだろうか。ただの接点の少ない二人ではなく、昔は仲良しだった二人なんだから。冒頭の『「足が疲れちゃった」って君は拗ねてしゃがみこむ』、これは子ども時代のなごり。思春期に幼馴染との距離を一旦置いた女の子だったが、ここでは昔の二人のノリで、自分の気分を素直に発する。しゃがみこんだ女の子を見て『でもこんな場所じゃおんぶできないよ』と男の子。子どもの頃、足の疲れた彼女をおんぶしてやった経験を思い出すが、「うーん、おんぶしてあげたいけど今はちょっと無理だなぁ。僕らもう大人だし、人目とかもあるし…」と躊躇する。
「ペンション」は、思春期の初めに一旦別れた幼馴染の二人が、思春期の終わり頃にもう一度距離を縮めようとする物語ではなかろうか。遠すぎないけど近くもない、微妙な距離の二人は、時折ノスタルジーに浸りながらペンションに向かう。そして、希薄になりかけた仲を見つめなおす。『曲がる順序間違えて最終のバスに乗りそこねた』は、距離を置いてしまったことへの後悔。「幼馴染のまま、そのままストレートにどんどん仲が深まって恋人同士になってたら、今とは違う未来があったのかもなぁ…たとえば、何の躊躇もなくおんぶしてあげられたりさぁ…」という切ないぼやき。
「えー、幼馴染なら大人になってもあだ名で呼べるよ」と思う人も居るかもしれないが、私は成人式で久々に再会した異性の幼馴染をあだ名で呼べなかった。彼のあだ名がちょっと滑稽だったというのもあるかもしれないが、なんか照れくさくて「くん」付けで呼んだ。向こうも私を「さん」付けで呼んだ。結構仲良かったのになぁ。もちろん一緒にペンションの食事に行きたいなんてことは思わなかったけどさ。

…屈指のパンチライン『平凡な自分が本当は悲しい』の謎は解けなかった。ちなみに1995年リリースのアルバム『禁じられた生きがい』以降の楽曲の歌詞は難解過ぎて検証する気にもならない。

追記
今年のM-1で一番笑った瞬間は笑い飯・西田の「思てたんと違う!」だった人、結構多いんじゃなかろうか。

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2 コメント

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Unknown (yuji)
2008-12-23 21:00:47
なるほど。幼馴染だとしっくりきますね。「仇名からさん付け呼び」も「そんなに学校でも話したりしたことないじゃん」も幼馴染なら納得。女は「足が疲れちゃった」と拗ねて昔のノリを発するのに、「いやいや、おんぶとかムリ」みたいな、昔のノリになりきれない男の感じが凄くリアルに思えてきました。

「平凡な自分が本当は悲しい」は、周りが気になっておんぶできなかったり、最終のバスに乗り遅れたり、ペンションの受付でどう名前を書けばいいのか分からなかったりする自分にかかっているのかなぁと思いました。
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Unknown (shallow)
2008-12-24 00:18:14
岡村ちゃんが「あー幼馴染とペンションとか行きたいなー、幼馴染なんて居ないけど」みたいな気持ちで書いた詞だったら個人的に最高なんですけどね。まぁ、真相は闇の中…。

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