つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

君の名はテナー

2005-05-17 15:00:31 | ファンタジー(異世界)
さて、三部作二つ目の第168回は、

タイトル:こわれた腕輪――ゲド戦記II
著者:アーシュラ・K・ル・グウィン
出版社:岩波書店

というわけで、ゲド戦記第二巻です。
アースシーの東端にある独立国家――カルガド帝国が今回の舞台。

兄弟神を祀り、王の死後の安息所となるアチュアンの墓所には一つの伝統があった。
男子禁制の神殿を束ねる大巫女が死んだ時、時を同じくして生まれた娘をその生まれ変わりとして、次代の大巫女に据えるのである。今回選ばれた娘の名はテナー。

五歳になったテナーはアチュアンの墓所に連れてこられ、一年間教育を受けた後、神殿の大巫女『アルハ』となった。十四で成人し、十五になった頃にはもはや帝国最高の巫女として神殿の一切の権限を握っていたが、彼女は退屈しか感じてはいなかった。

そんな折、神殿の下にある巨大な地下迷宮に謎の男が侵入したという報告が入る。
闇を支配する名なき者と呼ばれる強大な存在は、自分達を崇めぬ者に容赦がない。
彼らを敵に回して無事な者がいるとすれば、外海から来た邪な魔法使いしかいない。

やがてその男は闇の力に屈し、捕らえられる。
だがアルハはその男を処分しなかった、墓所以外の世界のことを聞きたかったのだ。
彼女は禁を破り、虜囚となった男に会いに行く。彼の名は――ハイタカ。

もうお解りでしょうが、今回の主役はゲドではありません。
もっともこれはゲド戦記の特徴なので気にしてはいけない。

テナーは、言ってみれば女性版ゲドです。
ゲドが若気の至りで自らの影を放ち、それと対決するはめになったように、テナーもまた、かつては光の中にいたはずの自分と名なき者に仕えるアルハとしての自分との間で葛藤し、戦うことになります。
ここで、前巻でオジオンがやっていた役をゲドがやるあたり、いい歳の食い方してるなぁ……と。もちろん、実際のところゲドは自分一人で地下迷宮に挑み、目的を達するつもりだったのだけど。(笑)

前巻の戦いの決着が×××××(自主規制)であったように、本巻の結末も名なき者を強力な呪文でなぎ倒し、美少女片手にハブナー凱旋といった――

ハリウッド映画のようなオチはありません

ゲド一人、テナー一人では成し得なかった偉業を二人は達成します。
スーパーヒーローが大活躍、ってのも嫌いじゃないけどこっちの方が納得いくかな。
つかテナーが心を開いた後、それまでの疲れ切った状態から一転、やたら元気になってしゃべりまくるゲドって……色んな意味でオジサン化してますね(笑)。

というわけで、『エアの創造』の二行目の冒険は終わりました。
次回は三行目、さらに困難な生と死の戦いが待っています。



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