さて、三部作三つ目の第169回は、
タイトル:さいはての島へ――ゲド戦記III
著者:アーシュラ・K・ル・グウィン
出版社:岩波書店
であります。
いよいよ、ゲド戦記第三巻です。
壮年となったゲドが三度、危険な戦いに身を投じます。
前二巻については、第167回、第168回を御覧下さい。
古き歴史を持つモレド家の末裔アレンは不安を胸に賢人の島ロークに降り立った。
西の島から領地エンラッドにもたらされた奇妙な噂の真偽を問うために。
正確に言えばそれは既に噂ではなく、エンラッドすらも侵し始めていた。
凶報はアレンのもたらしたものだけではなかった。
南海域及び、世界の中心に位置する多島海南部からも同様の知らせが届いていた。
魔法の泉が枯れ、人々はその使い方はおろか存在すらも忘れかけていると……。
今だ確固たる魔法の力を有し、鉄壁の守りを維持するローク島。
その頂点に位置する九人の長と大賢人は、その夜、会合を開いた。
様々な意見が飛び交う中、大賢人は自ら原因の究明に乗り出すことを宣言する。
若きアレンは大賢人の誘いに応じ、危険な航海に出ることを決めた。
探すべきものは未だ判然とせず、行く手には死の危険が満ちている。
連れはアースシー最高の大魔法使い――名はハイタカ!
映画にしたら一番受ける話
ロード・オブ・ザ・リングもそうでしたけど、素直~な作品になるんでしょうね。
真面目だけど若者らしい反発心を抱えたアレンが主人公で。
やたらと思わせぶりなことを言う強大な魔法使いゲドがその連れで。
最後にゃ××××まで行って強敵と対峙するんだから盛り上がらない筈がない。
しかし、それは表層的な部分。
実際のところ、今回のメインは魔法の考察及び、生と死の考察です。
アースシーにおける魔法とは現代の科学に相当します。これだけなら有象無象の作品でも頻繁に使われる手法なのですが、ル・グウィンは魔法が科学よりも遥かに精神性に左右される学問であることを利用して、人間の際限ない欲望とそれが生み出すものをより鮮明に見せてくれます。
「わしらは均衡というものを考えなくてはならん。それが破れると、人は他のいろいろなことを考え出す。真っ先に考え出すのは迅速さだ」
かつて影を解き放ったゲドならではの重い台詞です。
魔法と言う便利な道具を手にした時、人は何を望むのか。
欲望のままに道具を使った時、結果として何が起こるのか。
生とは、死とは何か、それから逃避することに意味はあるのか。
数多の作品で語られてきた根源的なテーマであり、同時に最も難しい命題でもありますが、本作はかなりの完成度でこれを達成しています。
単独でも読めます、とにかくオススメ。
一巻では枝葉的な存在だった竜も、本作ではかなりメインで出張ってます。
かくて、『エアの創造』の物語は見事な結末を迎えました。
ところがぎっちょん、ゲドの物語はこれでは終わりません。
続く四巻ではヒーローとしての役目を終えた彼の姿が描かれます。
正直に言いましょう――夢を信じていたい少年にはオススメしません。
もう少し大人になってから読んで下さい。
というわけで、続きはまた来週。
――【つれづれナビ!】――
◆ 『ゲド戦記』のまとめページへ
◇ 『海外作家一覧表』へ
◆ 『つれづれ総合案内所』へ
タイトル:さいはての島へ――ゲド戦記III
著者:アーシュラ・K・ル・グウィン
出版社:岩波書店
であります。
いよいよ、ゲド戦記第三巻です。
壮年となったゲドが三度、危険な戦いに身を投じます。
前二巻については、第167回、第168回を御覧下さい。
古き歴史を持つモレド家の末裔アレンは不安を胸に賢人の島ロークに降り立った。
西の島から領地エンラッドにもたらされた奇妙な噂の真偽を問うために。
正確に言えばそれは既に噂ではなく、エンラッドすらも侵し始めていた。
凶報はアレンのもたらしたものだけではなかった。
南海域及び、世界の中心に位置する多島海南部からも同様の知らせが届いていた。
魔法の泉が枯れ、人々はその使い方はおろか存在すらも忘れかけていると……。
今だ確固たる魔法の力を有し、鉄壁の守りを維持するローク島。
その頂点に位置する九人の長と大賢人は、その夜、会合を開いた。
様々な意見が飛び交う中、大賢人は自ら原因の究明に乗り出すことを宣言する。
若きアレンは大賢人の誘いに応じ、危険な航海に出ることを決めた。
探すべきものは未だ判然とせず、行く手には死の危険が満ちている。
連れはアースシー最高の大魔法使い――名はハイタカ!
映画にしたら一番受ける話
ロード・オブ・ザ・リングもそうでしたけど、素直~な作品になるんでしょうね。
真面目だけど若者らしい反発心を抱えたアレンが主人公で。
やたらと思わせぶりなことを言う強大な魔法使いゲドがその連れで。
最後にゃ××××まで行って強敵と対峙するんだから盛り上がらない筈がない。
しかし、それは表層的な部分。
実際のところ、今回のメインは魔法の考察及び、生と死の考察です。
アースシーにおける魔法とは現代の科学に相当します。これだけなら有象無象の作品でも頻繁に使われる手法なのですが、ル・グウィンは魔法が科学よりも遥かに精神性に左右される学問であることを利用して、人間の際限ない欲望とそれが生み出すものをより鮮明に見せてくれます。
「わしらは均衡というものを考えなくてはならん。それが破れると、人は他のいろいろなことを考え出す。真っ先に考え出すのは迅速さだ」
かつて影を解き放ったゲドならではの重い台詞です。
魔法と言う便利な道具を手にした時、人は何を望むのか。
欲望のままに道具を使った時、結果として何が起こるのか。
生とは、死とは何か、それから逃避することに意味はあるのか。
数多の作品で語られてきた根源的なテーマであり、同時に最も難しい命題でもありますが、本作はかなりの完成度でこれを達成しています。
単独でも読めます、とにかくオススメ。
一巻では枝葉的な存在だった竜も、本作ではかなりメインで出張ってます。
かくて、『エアの創造』の物語は見事な結末を迎えました。
ところがぎっちょん、ゲドの物語はこれでは終わりません。
続く四巻ではヒーローとしての役目を終えた彼の姿が描かれます。
正直に言いましょう――夢を信じていたい少年にはオススメしません。
もう少し大人になってから読んで下さい。
というわけで、続きはまた来週。
――【つれづれナビ!】――
◆ 『ゲド戦記』のまとめページへ
◇ 『海外作家一覧表』へ
◆ 『つれづれ総合案内所』へ