つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

隠れん坊

2006-01-31 12:19:18 | 学術書/新書
さて、最後まで見つけてもらえなかった覚えがある第427回は、

タイトル:神隠しと日本人
著者:小松和彦
文庫名:角川ソフィア文庫

であります。

神隠しと聞いて、何を連想しますか?
千と千尋の神隠し? いや、ジブリはラピュタがあればそれでいいです。
神隠し連続殺人事件? 何か、ぼさぼさ頭の探偵とか出てきそうですね。
未来へタイムスリップして救世主伝説? それは『リュウ』ですってば。
中国風の世界へ連れ去られて国造り……って、それは『十二国記』

いい加減、しつこくなってきたのでやめます。

というわけで(なにがだ?)、神隠しの研究本です。
原題は『神隠し――異界からのいざない』、弱冠の加筆・修正あり。
特に専門的知識がなくても読めますし、約230頁と長さも手頃。

神隠し事件の真相を探る、いわゆる謎解き本ではありません。
背後の真相は種類こそあれど簡単に想像がつく、とした上で、なぜ神隠しという概念が生まれたのか、なぜ必要とされたのかを探るのが主題です。

まず何を以て神隠しとするか、すなわち、神隠しの定義。
次いで、神隠しに共通するお約束――目隠しされるとか、失踪者の草履が揃えてあったりとか、消えた者を探す方法とか、色々。

筆者はここで神隠しを四つのタイプに分類しています。
A1――戻ってきた失踪者が自分の体験を覚えている。
A2――戻ってきたけど、失踪者は自分の体験を覚えていない。
B――失踪者は戻ってこない。その後の消息は不明。
C――失踪者が死体で発見される。

そしてさらに、A1タイプの神隠し事件で語られた体験談、大陸から伝来した神仙伝説、天狗信仰、鬼伝説などが融合して生まれた様々な神隠し譚を紹介。
『浦島太郎』のような異界訪問譚も外部の人間から見ると神隠しであることを指摘した上で、最後に神隠しという社会装置の有用性について述べています。

広く浅く、体系的に述べているので、てっとり早く神隠しを知りたい方には最適の書と言えるでしょう。
時代ごとの細かい変化や事件の暗部などを理解したいというディープな神隠しマニア(?)の方は、ぶっとい専門書を漁るしかないかと思われますが……。

ともあれ、通して読めば神隠しという言葉にどっぷり浸かれます、オススメ。
様々なタイプの神隠し事件が引用されており、資料としても役に立ちます。
昔話、伝説に限らず、近年の事件についても触れているのも良し。


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