つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

蒼き狼の血族

2005-07-27 22:41:10 | 時代劇・歴史物
さて、天馬の血族ではない第239回は、

タイトル:モンゴル帝国の興亡(上)―軍事拡大の時代
著者:杉山正明
文庫名:講談社現代新書

であります。

泳げ、騎馬民族!
って……それは民明書房。

蒼き狼の子孫がいかにその版図を拡大していったかを描く名著。(断言)
私のような半可通は、チンギスが暴れ回った後、速攻で帝国が分裂して、中国部分だけフビライが支配した……というかな~り舐めた解釈しかしてなかったのですが、これ読んで一気に見方が変わりました。

戦闘に長けた騎馬民族が、奸智に長けた農耕民族を内に取り込むことによって、まれに見る強大な軍事勢力が形成され、自然、それは新たな戦いの場を求めて外征へと向かう……すべての富を集中させ、市民という特権階級の生活と権利を守るべく版図を広げていったローマ帝国とは明らかに毛色が違います。

初期ローマが採用していた元老院議員が文官と武官を歴任するというシステムは外敵との戦争激化に伴う専門軍人の台頭により瓦解しますが、モンゴル民族は飽くまで戦士であり、統治(搾取?)は吸収した他民族に任せていました。ここらへんも、急激に版図を広げた要因かと思われます。

どうもモンゴルというと徹底的に破壊し、根こそぎ奪い去るというイメージが強いのですが、チンギス・カンですら金との戦いでは和睦して軍を引いています。降伏した城を破壊した形跡もないし、そこに荒々しいだけの戦闘民族の姿は見えません。

歴史の授業でしかモンゴルを知らないという方には絶対オススメ。
あ、私も早く下巻を読まないと……。

下巻に続く


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