さて、さりげに獣の数字な第666回は、
タイトル:コンスタンティノープルの陥落
著者:塩野七生
出版社:新潮社 新潮文庫(初版:H3)
であります。
塩野七生の『地中海戦記三部作』の第一部です。
シャレでもハッタリでもなく本物のミレニアム・エンパイア――ビザンチン帝国(東ローマ帝国)、その首都として栄華を誇ったコンスタンティノープルの最期を描く歴史絵巻。
第三部『レパントの海戦』を先に読んじゃったりしてますが、気にしないで下さい。
一四五一年二月、オスマントルコに新たなスルタンが誕生しました。
彼の名はマホメッド二世。十二歳の時に一度即位しながらも、わずか二年で権力の座を追われ、さらに五年後、父の急逝に伴って再び玉座に就いた十八歳の青年君主です。
この若者が歴史上一度しか成功していないコンスタンティノープル攻略に着手することを予測できたのは、ごく僅かな人々だけでした。
(コンスタンティノープル陥落まで、あと二年)
一四五二年三月、マホメッド二世はコンスタンティノープルの目と鼻の先に『ルメーリ・ヒサーリ(ヨーロッパの城)』と呼ばれる要塞の建設を始めました。
自身の領内に無断で城を建てようとする行為に怒ったビザンチン皇帝の抗議を、ボスフォロス海峡の安全確保のためと退け、トルコは八月末に要塞を完成させます。
さらに、ルメーリ・ヒサーリとその対岸に元からあった『アナドール・ヒサーリ(アジアの城)』の両方に大砲を設置し、海峡を通る船に莫大な通行量を要求しました。
若きスルタンがコンスタンティノープル攻略を目指していることは、誰の目にも明らかでした。
(コンスタンティノープル陥落まで、あと九ヶ月)
一四五三年四月十二日、トルコ軍は陸海両面からコンスタンティノープルに襲いかかりました。
陸では巨砲が火を吹いて城壁を震わせ、海では三百艘の船が金角湾の入口に押し寄せます。
攻撃側は陸軍だけで十六万、守備側はすべて合わせても七千しかいません。
ヴェネツィアとジェノヴァの支援を待つ、絶望的な戦いが始まったのです――。
本の解説というより歴史話になってしまいましたが、概要はそんなところです。
後に記録を残している人々が多数登場し、それぞれの視点で歴史を語るスタイルは『レパントの海戦』と同じ。ついでに名前覚えるのが大変なのも同じ……。
物理的な戦いだけでなく、ビザンチン帝国&トルコ&ヴェネツィア&ジェノヴァ、四つの勢力の立場と、コンスタンティノープルを巡る水面下のやりとりも描かれているので、無学な私でも背後関係やら戦いに至る経緯がよく理解できました。
解説に「」を付けただけの説明台詞が多かったり、各人物に対する作者の好みが露骨に出てたり、ヴェネツィア贔屓の視点がそこかしこに見えたり……と、三百六十度全方位で七生イズムが炸裂してますが、歴史年表だと『陥落』の一言で済まされてしまう事件をここまでダイナミックに描いてくれるならそれも良し。
そして皆さん、いよいよ今日のその時がやってまいります。
一四五三年五月二十九日、トルコ軍の総攻撃によりコンスタンティノープルは陥落します。
それは同時に、千年の歴史を誇るビザンチン帝国の終焉をも意味していました。
征服王と呼ばれたマホメッド二世は以後も各地を転戦し、オスマン帝国の版図を拡大してゆきます……。
西洋史好きは必読。
かなりの気合いがいりますが、読んで損はないです。
いや、『その時歴史が動いた』ごっこがやりたくて紹介したわけではないですよ。(笑)
タイトル:コンスタンティノープルの陥落
著者:塩野七生
出版社:新潮社 新潮文庫(初版:H3)
であります。
塩野七生の『地中海戦記三部作』の第一部です。
シャレでもハッタリでもなく本物のミレニアム・エンパイア――ビザンチン帝国(東ローマ帝国)、その首都として栄華を誇ったコンスタンティノープルの最期を描く歴史絵巻。
第三部『レパントの海戦』を先に読んじゃったりしてますが、気にしないで下さい。
一四五一年二月、オスマントルコに新たなスルタンが誕生しました。
彼の名はマホメッド二世。十二歳の時に一度即位しながらも、わずか二年で権力の座を追われ、さらに五年後、父の急逝に伴って再び玉座に就いた十八歳の青年君主です。
この若者が歴史上一度しか成功していないコンスタンティノープル攻略に着手することを予測できたのは、ごく僅かな人々だけでした。
(コンスタンティノープル陥落まで、あと二年)
一四五二年三月、マホメッド二世はコンスタンティノープルの目と鼻の先に『ルメーリ・ヒサーリ(ヨーロッパの城)』と呼ばれる要塞の建設を始めました。
自身の領内に無断で城を建てようとする行為に怒ったビザンチン皇帝の抗議を、ボスフォロス海峡の安全確保のためと退け、トルコは八月末に要塞を完成させます。
さらに、ルメーリ・ヒサーリとその対岸に元からあった『アナドール・ヒサーリ(アジアの城)』の両方に大砲を設置し、海峡を通る船に莫大な通行量を要求しました。
若きスルタンがコンスタンティノープル攻略を目指していることは、誰の目にも明らかでした。
(コンスタンティノープル陥落まで、あと九ヶ月)
一四五三年四月十二日、トルコ軍は陸海両面からコンスタンティノープルに襲いかかりました。
陸では巨砲が火を吹いて城壁を震わせ、海では三百艘の船が金角湾の入口に押し寄せます。
攻撃側は陸軍だけで十六万、守備側はすべて合わせても七千しかいません。
ヴェネツィアとジェノヴァの支援を待つ、絶望的な戦いが始まったのです――。
本の解説というより歴史話になってしまいましたが、概要はそんなところです。
後に記録を残している人々が多数登場し、それぞれの視点で歴史を語るスタイルは『レパントの海戦』と同じ。ついでに名前覚えるのが大変なのも同じ……。
物理的な戦いだけでなく、ビザンチン帝国&トルコ&ヴェネツィア&ジェノヴァ、四つの勢力の立場と、コンスタンティノープルを巡る水面下のやりとりも描かれているので、無学な私でも背後関係やら戦いに至る経緯がよく理解できました。
解説に「」を付けただけの説明台詞が多かったり、各人物に対する作者の好みが露骨に出てたり、ヴェネツィア贔屓の視点がそこかしこに見えたり……と、三百六十度全方位で七生イズムが炸裂してますが、歴史年表だと『陥落』の一言で済まされてしまう事件をここまでダイナミックに描いてくれるならそれも良し。
そして皆さん、いよいよ今日のその時がやってまいります。
一四五三年五月二十九日、トルコ軍の総攻撃によりコンスタンティノープルは陥落します。
それは同時に、千年の歴史を誇るビザンチン帝国の終焉をも意味していました。
征服王と呼ばれたマホメッド二世は以後も各地を転戦し、オスマン帝国の版図を拡大してゆきます……。
西洋史好きは必読。
かなりの気合いがいりますが、読んで損はないです。
いや、『その時歴史が動いた』ごっこがやりたくて紹介したわけではないですよ。(笑)