つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

原作命

2006-12-15 15:47:11 | その他
さて、いらんトラックバックがうざいんじゃ~の第745回は、

タイトル:「枕草子」を旅しよう 古典を歩く3
著者:田中澄江
出版社:講談社 講談社文庫(初版:H10)

であります。

「枕草子」には、第13段「山は」や第62段「川は」など、地名にまつわる清少納言の好みや感想と言った段があり、また清水寺などへ詣る段などがあり、そうした「枕草子」にまつわる場所を旅する著者が、旅先での出来事や思いを語る旅行記のようなもの。

構成は7つに分けられているので、それぞれを。

「清少納言というひと」
これは序章のようなもので、著者が思う清少納言の人物像が語られている。

「「春はあけぼの」と東山」
有名な第1段の解説よりは、東山、つまり京都の東山三十六峯を中心に、登山や植物に詳しい著者がそうした峯についての話題を語る。

「宮詣でと寺詣り」
章は分かれているが、前章に引き続き、山とともに、「枕草子」で登場する神社仏閣を訪れたときのことを語る。

「「夏はよる」と賀茂あたり」
葵祭りに始まり、賀茂神社などの話題に触れながら、藤原道長との政争に負けて没落した定子の周辺にまつわる段に思いを馳せる章。

「「秋は夕暮れ」と東国への夢」
第111段「関は」などに上げられている東国の地名などから、静岡や埼玉の狭山市などに赴いたときの話を中心に語る。

「「枕草子」と畿内」
こちらは前章とは一転して、畿内。
もちろん、京都、奈良が中心で、各段に登場する船岡、嵯峨野などを訪れたときのことを語る。

「「冬はつとめて」と「枕草子」の成立」
場所としては三輪山、そして定子の鳥辺野陵と対するようにある一条天皇陵などへ赴いたときのことを語る。

以上、都合7章だが、旅行記と言うよりは、どちらかと言うと、著者が「枕草子」をもとに清少納言の人物像を想像する、と言った趣が強い。
登場する地名やいわゆる「ものづくし」、宮中での出来事など、各段で語られる中から、自らが仕えた定子への思いを想像し、「こうだったのではないか」「あれはこういうことではないか」と想像する著者の語りがよく出てくる。

まぁ、そうしたところは、好みや解釈の違いがあるので、「そうかいな?」と思うところや、「ふむ……」と興味深いところもあったりする。
……するのだが、やっぱり、原作が好きでないと、ぜんっぜん面白くないと思うぞ、これ……(笑)

逆に言えば、好きならば、それなりに興味深く読める本ではある。
とは言っても、ひとを選ぶ本と言うことで辛うじて及第と言ったところだろうか。


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