つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

うおぅっ、アテがはずれたぁっ

2006-12-16 16:44:28 | 恋愛小説
さて、こんなはずではなかったのにの第746回は、

タイトル:さよならから始まる物語
著者:倉本由布
出版社:集英社 コバルト文庫(初版:H1)

であります。

図書館、と言うのはおもしろいものがあるところだねぇ、としみじみ思う今日このごろ。
っつーか、こんなふっるいコバルト文庫あたりが平然と転がっているんだし。
とは言え、なぜそんなものを……となると、理由は単純。

このタイトル、この時代のコバルト文庫……
きっとさぶいぼ満開笑えるに違いないっ!(笑)
まぁ、あとは本棚にぎちぎちに詰められて、きっと誰も手に取っていないんだろうなぁ、とちと哀れになったのもあるんだけど……。

……と、はっきりと著者に失礼な期待をしつつ読んでみたところ……。


14歳の主人公、本田奈生は、学校の音楽室、合唱の伴奏の練習のため、音楽の先生を待っている間、居眠りをしているところに聞き覚えのあるピアノ曲が流れてくる。
それに目を覚ました奈生に、ひとつ先輩の森村和音は、それをショパンの「子守歌ベルスーズ」だと告げる。
その優しい調べと、優しい先輩に惹かれ、付き合うようになる。

大好きな和音とともに高校生へと成長していく中で、奈生は和音への思いで、ある気持ちを覆い隠していた。
しかし、それは奈生が望み、ピアニストへの決心をさせた和音の事故死によってなくなってしまう。
そのきっかけとなってしまった兄、尚樹。

様々な思いを押し隠し、成長していく過程で起きる家族の変化の中で、奈生はそのすべてに区切りをつけていく。


えー……、すいません、こういうしっとりとした雰囲気のあるお話は、大好きです(爆)
さぶいぼ満開で笑えるどころか……。
けっこう……いや、だいぶん、楽しませてもらいました(さらに爆)

まぁ、物語そのものは、奈生の幼いころの初恋を起点として、過去の家族の出来事や和音のこと、尚樹との関係の変化などを通じた、奈生のひとつの成長物語と言えるだろう。
べたべたなラブコメを期待していたのだが、そういうわけではなく、結局奈生は誰ともくっつかないのが、この時代のコバルト文庫にしては珍しいんかな。

ただ、こうした雰囲気の話だから仕方がない部分はあるが、展開がおとなしすぎるのが物足りないと見られることはあるだろう。
作品の雰囲気がいいから私は気にならないが。
あとは、時代もあるだろうが奈生を始めとする各キャラのいい子ちゃんぶりに耐えられなければ、読み進めるのは結構苦労するかも。

文章は奈生の一人称だが、奈生の友人、特に女のコ同士の会話となると、話し言葉がほとんど一緒のため、ときどき誰が何を喋っているのか、わからなくなるところが難点。
それ以外は特に問題はないが、区切り区切りの最後に奈生の、短い気持ちの単語が繰り返しになるところは好みが分かれるだろう。
私は作品の雰囲気を助長するいい使い方だと思うが、しつこいと思うひともいよう。

とは言え、個人的にはかなりいい意味でアテがはずれたほうなので、私的に良品……と言いたいところだが、オススメするにはいろいろと躊躇せざるを得ない部分があるので、及第、かと。
こういう時代のコバルト文庫を読んでいたひとには、懐かしさもあるので手に取るのは悪くないかもしれないけど。


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