つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

二人で一人……とは違います

2006-11-28 23:54:35 | その他
さて、このジャンルは初めてだ、な第728回は、

タイトル:おかしな二人
著者:ニール・サイモン
出版社:早川書房 ハヤカワ演劇文庫(初版:H18)

であります。

ブロードウェィの喜劇王ニール・サイモンの戯曲です。
おかしな二人組の共同生活と破綻、そして……を描くコメディ。



ある蒸し暑い夏の夜……スピード、マレー、ロイ、ヴィニーの四人はオスカー・マディソンの家で週に一度のポーカーに熱中していた。
家主のオスカーは四十三歳のスポーツ記者。離婚後は一人暮らしをしており、皆で集まるには都合がいい。
部屋が荒れ放題なこと、胃を壊しそうなつまみが出ること、家主が妻に払う慰謝料について愚痴を撒き散らしながら借金を重ねること、を我慢する必要があるものの、皆は概ねこの時間を楽しんでいた。

椅子は六つあるが、今日は一人分開いている。
いつもならここで灰皿を綺麗にしている筈の男――フィリックス・アンガーが来ていないのだ。
敢えて考えないようにしていたが、立て続けに電話が鳴り、フィリックスが行方不明になったこと、愛妻と離婚したこと、自殺すると言って家を飛び出したことが判明すると、さすがの悪友達も慌て始めた。

この世の終わりのような顔をして、フィリックスはやってきた。
泣き叫ぶ彼を強引に落ち着かせ、メンバーは一人ずつ帰っていく。
なおも妻と子への未練を口にするフィリックスに、オスカーは言ってしまった――ここで一緒に暮らそう、と。



他人を支配したがる人間は、程度の差はあれど煙たがられるものです。
特に、自覚がないタイプは致命的です……いや、その方が多いけど。
フィリックス・アンガーはこれにピッタリ当てはまる、物凄く鬱陶しい男です。

料理が大好きで、、飲み物とつまみは常に欠かさず、ポーカーをしている最中でも割り込んで個人の好みを尋ね、暇さえあれば台所で何か作っている。
異常と言える程の潔癖性で、部屋はいつもピカピカにし、コースターなしにグラスを置いたら小言を言い、空気清浄機を勝手に止めたらチクチクと釘を刺す。
お喋りが大好きで、相手の状況を無視して、離婚調停中の妻への愛を延々と語り続ける……。

頼むから静かにしてくれ。

すいません、私はせいぜい三日が限界です。
こんなのと四六時中一緒にいたら、オスカーならずとも辟易するでしょう。
オスカーのいい加減な性格も問題あると思いますが、にしてもフィリックスの干渉ぶりはひどい。

全三幕の芝居で、第一幕はフィリックスがオスカーの家に転がり込む話、第二幕は猛威を振るうフィリックスと我慢の限界に達したオスカーの激突、第三幕は遂に訪れた破局とその後の後始末、といったところ。

軽妙な会話は絶品で、二人の両極端な性格を上手く表現しています。
ポーカー四人組の区別が付かないかも知れませんが、こだわらなくても特に問題ありません。
翻訳の問題なのか、そこかしこに女言葉が出てくるのはちょっと引っかかりますが……。
(特にフィリックスはその傾向が強いです。そういうキャラと言ってしまえばそうなのですが)

良くできたコメディです。オススメ。
特に専門用語も出てこないので、普段演劇見ない方でも読めます。
上手が右側、下手が左側ということだけ覚えておけば充分です。(笑)


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