つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

いろいろ賞もらってるのはわかるけど

2005-07-16 16:42:35 | 小説全般
さて、これも実は借り物の第228回は、

タイトル:博士の愛した数式
著者:小川洋子
出版社:新潮社

であります。

「読む?」
「うん、読む」

ベストセラーとか、自分からは手に取らないけど、貸してもらえるなら別(笑)

で、読んでみた。

キャラはまず4人。
他にも出てくるけれど、ストーリーの一部であって風とか雨とか、そういう感じで、とにかくメインキャラのみで進むと言ってもいいくらい。

そのメインキャラは、あけぼの家政婦紹介組合から派遣された家政婦、派遣先の博士、家政婦の息子のルート(√)、そして博士の義姉。

博士は、交通事故の後遺症で80分までしか記憶できない。
事故に遭った瞬間から記憶できない数学者。

そんな博士と、博士が語る数字の魅力、そして家政婦、ルートのたったふたりの家族が中心。

話は、とても穏やかに進んでいく。

考え事をしているのを邪魔されると不機嫌になる博士。
子供が大好きで、記憶云々にかかわらずルートを慈しみ、守り、愛おしむ博士。
数式に魅力を語る博士。
数字の持つ神秘さを語る博士。

そんな博士、数字の魅力とともに生活していく家政婦とルート。

ちょっとした博士の過去や、ラストにつながる博士のことなどが、小さな切なさになっていて、ちょうどいいアクセントになっている。

また、博士が語る数式、数字の話は、ストーリーにうまく溶け込んでいて、物語の魅力になっているとともに、数学そのものの魅力になっている。

これ、遅くとも中学生くらいに読ませるのがいいかもしれない。
数学嫌いの子でも、数学が好きになるかもしれない。

ちなみに、私も数学は嫌いだけど、きっと……いや、たぶん、ルートくらいの年齢のときに、こんな先生に出会っていたら、数学が嫌いにはならなかっただろう。
そんな気分にさせてくれる。

とてもいいお話。
……ではあるけれど、作品世界に入っていけたか、と言われると、う~む……な感じ。

かなり中途半端な感じ。

その原因は、家政婦。
博士やルート、義姉はいいんだけど、家政婦のキャラに阻害された感じ。
もちろん、そのバックボーンや性格と言ったところは語られてはいるけれど、もう少し物語の中で語られていたら……と言う気持ちがある。

そんな小さな痼りみたいなのが、入りきれなかった理由だと思う。

ただ、いろんな賞を取った、ってのはわかる。
とても優しくて、ちょっと切ない物語だと思う。

たぶん、それなりにオススメできると思う。
個人的には、いい話だと、頭ではわかるので、もう少し入っていけるものであればよかったなぁ。

そこだけが残念。


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