つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

締めって大切よね

2007-12-16 16:20:43 | ミステリ+ホラー
さて、このカテゴリは2冊目だわの第929回は、

タイトル:ヘカテの時間
著者:山崎洋子
出版社:双葉社 双葉文庫(初版:'98)

であります。

そういや、このカテゴリってあんまり使った憶えがないなぁ、と思って探してみたら、クロスレビューの「失踪HOLIDAY」だけだった……。
まぁ、もともとミステリ系は相棒の領分なので、ほとんど食指が動かない……はずなんだけど、これ始めてからふつうに読んだりしてるなぁ(笑)

さておき、本書ですが、1冊完結のミステリです。
ストーリーは、

『出版社に勤める今岡晃子は、雑誌「光海」の記事のために、美人実業家として名を馳せ、その後殺人を犯しながらも心神喪失を理由に無罪となった若平未来の取材を持ちかけられる。
それは、殺された相手が、実質は何もなかったとは言え、晃子の婚約者とされていた男だったからだった。
つまらない仕事ばかりに独り立ちの機会を窺っていた晃子はこの話に乗ることにした。

一方、ゴーストライターを生業にしている森山真也は、突然未来の訪問を受ける。
退院したばかりの未来は、一度だけゴーストライターとして仕事をし、入院したときに親切な手紙をくれた真也を頼ってきたのだ。
そこへ、真也のもとに身を寄せていると聞いた晃子が訪れ、取材の申し込みをする。

婚約者だった、と言う背景で取材に応じるよう迫る晃子に、釈然としない真也、意外にも応じる姿勢を見せる未来の3人のところへ、真也の恋人だった女性が押しかけてくる。
嫉妬にかられ、騒ぐその女性を晃子は不運にも身を守るために殺してしまう。

誰もが混乱する中、晃子は自分たち3人しかいないことを利用し、このまま死体を隠すことを提案し、未来も同意、真也も渋々ながら協力することに。
そうして3人は不慮の事故によって否応なしに行動を共にする運命共同体となった。』

体裁としては、章ごとに晃子、真也、未来の3人の名前を挙げて、その人物の一人称で物語が進むもの。
そうすることで、不慮の事故で殺人を犯してしまった晃子や、付き合わされる格好になった真也、キーパーソンでもある未来などの心の動きや考えなどが、しっかりと、丁寧に描くことが出来ている。

と言うか、ミステリとか、ホラーとか、そういうところよりも主人公である3人の人物がほんとうに丁寧に描かれているところは秀逸。
晃子の、結婚を延期してまで独り立ちの機会を逃すまいとする姿や、不慮の事態とは言え、殺人を犯してしまったあとの思考、行動など、確かに現実にいそうな女性像としてうまく描かれている。

真也も、どこか冷めた最初の姿から恋人のような存在だった女性の死と、共犯関係にされてしまったあとの悩み、心の脆さなどと言った部分などがうまく描かれ、納得させられるだけのキャラになっている。

未来は……最初は、晃子と真也がほとんどで、さほど一人称として出てこないのだが、3人の中で異質な存在として、晃子、真也の目を通して描かれ、さらに時々一人称で語られることでミステリっぽい雰囲気を醸し出している。

ほんとうに、人物を描くと言う点に関してはすごい。
ただし、ミステリとしてどうかと言うと、はっきり言って、不可解な事態のほとんどは中盤に至るまでにわかってしまうくらいだし、ホラーとしての要素も、怖さと言った部分はほとんど感じられないくらい弱い。
いちおうカテゴリとしては「ミステリ+ホラー」に分類したけれど、そういうところを期待するとバカを見そうだぁね。

構成とか、人物描写とかはまったく問題ないし、文章も丁寧に心理描写などが書かれているだけに、読みやすいから、余計にミステリとしてもホラーとしても中途半端なのは残念。

……比較的、いいことを書いておきながら、ぢつは総評としては×。
ジャンルとしての中途半端さとか、人物の描き方がうまいとか、そういうところは十分評価できるのだが……。
ラストがダメダメすぎ。

最後の最後で、「なんじゃ、そりゃ」って感じの部分があって、それがそれまでのを思いっきりぶち壊してくれた感じで、通勤時のバスの中で読んでてそのまま投げ捨ててやろうかと思ったくらいだったわ。
まぁ、図書館の本なのでさすがにそれは出来ないけど、もし買ってたら、その辺のゴミ箱行きなくらい、げんなりするラスト。

これさえなければ、良品に近い及第、と言ってもよかったのに……。
てなわけで、総評は上記のとおり、落第。
もし読むなら、ホントに最後の最後の15行だけは読まないほうがいいと思う。


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