つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

ちょっとコーヒーブレイク

2005-05-08 13:46:34 | SF(国内)
さて、比較的おとなしめになっているの第159回は、

タイトル:スカーレット・ウィザード 3
著者:茅田砂胡
出版社:中央公論新社 C★NOVELS FANTASIA

であります。

しみじみ、ジャスミンには世間一般で使われている言葉と言うのが似合わないキャラだなぁ、と思う。

この巻はほとんどケリーひとりの話と言ってもいいくらいだが、その理由がすごい。……いや、世間的にはすごくはない。

ジャスミンが妊娠を理由に遠ざけたわけだけど、その理由が「マタニティ・ブルーの間はあまり夫と一緒にいないほうがいいそうだ」とのこと。

マタニティ・ブルー!?

……これほどこの言葉が似合わないヒロインも珍しい。
だいたい過度な運動はダメで歩くのは大いに結構と言われて30キロを歩き、ゆっくりできる運動にしろと言われれば1万メートルを泳ぐ。
これだけぴんぴんして、夫の暗殺計画をどう防ぐかと思案する妊婦にマタニティ・ブルーはないだろ。
いや、おもしろいけど(爆)

さておき、ストーリーそのものは1巻や2巻に較べておとなしめ。
ジャスミンが引っ込んでしまったので必然的に重役たちの標的はケリーに向かう。
「偶然」事故が重なったり、総帥専用車が故障して海へダイブしたりと災難が続いたり。

さらにラー一族の住む幽霊星へ行ってみたりと、基本的には伏線のほうが多い。

ただし、後半はケリーの見せ場。
とりあえず、飄々と、気怠げな、物事に拘らない、罵られても気にしないような役を演じてきたケリーの本領発揮……と言いたいところではるけれど、いいところで終わっているので4巻を待て、状態。

発売されたときには、「をい、まてこら」と思ったひとは多いでしょう(笑)

さて、もうひとつ、本編とは別に短編として「十一番目のダイアナ」という、いまはケリーの船であるダイアナの話が収録されている。

これはダイアナがなぜ製造されたのかや、そのもととなったある研究者のことなど、まだケリーと出会う前の過去の話。

この作家さんは、どうも長編癖のある感覚派の書き手だと思っていただけに、こういう短編も書けるのか、と感心してしまったとこはある。

ほんとうにコーヒーブレイク、ではないけれど、それくらいに軽く読める短編。

ただし、これを入れるためにいいところを4巻に回したのであれば、ちと……いや、多いに困りもの、ではある。


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