さて、一応最後な第175回は、
タイトル:アースシーの風――ゲド戦記V
著者:アーシュラ・K・ル・グウィン
出版社:岩波書店
であります。
ついに、ゲド戦記最終巻です。
ゲドの次世代の者達の戦いが描かれます。
前四巻については、第167回、第168回、第169回、第174回を御覧下さい。
ハブナーに王が立って十五年。
表面上、世界は平和を保っていました。
しかし、眼に見えぬ浸食は少しずつその勢力を拡大しつつあったのです。
ある日、ル・アルビで余生を過ごすゲドの元をハンノキと名乗る男が訪れます。
彼は妻の死後、幾度となく夢に見る死の世界のビジョンに悩まされていました。
ゲドはその話に耳を傾け、ハブナーに座す王のもとへ彼を送り出します。
ハンノキがハブナーを訪れた時、王もまた別の悩みを抱えていました。
東方を支配するカルガド帝国が、和平の条件として王族の姫君を送ってきたのです。
彼はカルガド出身のテナーの知恵を求め、彼女を王宮に招いていました。
悪夢を抱え、かつてゲドが見た死の世界を語るハンノキ。
未だ大賢人を選出できぬロークの賢人達、及び魔法使い。
テナーの娘であり、偉大なる種族の末裔でもあるテルー。
竜の代表として女性の姿でハブナーに降り立つアイリアン。
人種は違えど、少しずつ互いに歩み寄っていく王と姫君。
彼らが集結する時、アースシーに新たな風が吹く……。
前作から一転、非常に派手な話になっています。
色々と語ることはありますが、何よりまずこれだけは言っておきましょう。
祝、ゲド復活!
前巻でドン底まで落っこちて醜態をさらした彼ですが、歳も七十歳になり、今や立派な山羊飼いのおじーちゃんとして威厳を取り戻してます。訪れたハンノキに語りかける姿はまさしく大賢人! 魔法は使えませんが、年の功は伊達じゃありません。前作で、こんなゲドは嫌じゃ~、と叫んだ人もこれなら納得できる筈。もっとも人生山谷ですから、前巻の人間臭いゲドも非常に好きですけどね。
で、話を戻して最終巻です。
主役は……実は誰とも言えません。
ゲドは最初と最後しか出ませんが、深く考えるといいとこ取りかも。
ハンノキの視点、王の視点、テナーの視点とグルグル視点が変わるので、厳密に誰が主役とは言えない作品です。その分群像劇として見応えがあり、それぞれがいい味出してます。中でも異彩を放っているのが新キャラのアイリアン。竜の姿で颯爽と現れたかと思いきや、女性に変化して人間に向かって言いたい放題、謎めいた竜のイメージを吹っ飛ばす格好いいキャラです。
一方ストーリーですが、これでもかというぐらい謎解きの嵐が吹き荒れます。
カルガド帝国ってどんなとこ?
アースシーの竜ってどんな存在?
ロークが定めた魔法の根幹とは?
その昔、竜と人間との間に何があった?
ゲドに関わった人々の心のぶつけ合いの中で、未消化になっていた謎が次々と明かされていく展開は非常にテンポ良く、ラストまで一気に読めました。つか、ル・グウィン……貴方いくつですか?(1929年生まれで、これ書いたのが2001年)
他にも、さりげなーく三巻で出てきたチョイ役の話があったり、テナーがアチュアン時代を振り返る話があったりとサービス満点です。少なくとも、四巻まで読んできたなら絶対オススメ、読むべし読むべし。
というわけで、ゲド戦記はこれにて終了です。
実を言うと外伝があったりするのですが、そちらは未読なのでまたの機会に。
ちょっと蛇足。
前期三部作と比較して何かと賛否両論な四、五巻ですが、個人的にはこれも立派にゲド戦記だと思っています。I・III・Vが世界を巡るマクロな戦い、II・IVが個人を対象としたミクロな戦いを描いているという点で、上手くバランスを取っていると思います。
――【つれづれナビ!】――
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タイトル:アースシーの風――ゲド戦記V
著者:アーシュラ・K・ル・グウィン
出版社:岩波書店
であります。
ついに、ゲド戦記最終巻です。
ゲドの次世代の者達の戦いが描かれます。
前四巻については、第167回、第168回、第169回、第174回を御覧下さい。
ハブナーに王が立って十五年。
表面上、世界は平和を保っていました。
しかし、眼に見えぬ浸食は少しずつその勢力を拡大しつつあったのです。
ある日、ル・アルビで余生を過ごすゲドの元をハンノキと名乗る男が訪れます。
彼は妻の死後、幾度となく夢に見る死の世界のビジョンに悩まされていました。
ゲドはその話に耳を傾け、ハブナーに座す王のもとへ彼を送り出します。
ハンノキがハブナーを訪れた時、王もまた別の悩みを抱えていました。
東方を支配するカルガド帝国が、和平の条件として王族の姫君を送ってきたのです。
彼はカルガド出身のテナーの知恵を求め、彼女を王宮に招いていました。
悪夢を抱え、かつてゲドが見た死の世界を語るハンノキ。
未だ大賢人を選出できぬロークの賢人達、及び魔法使い。
テナーの娘であり、偉大なる種族の末裔でもあるテルー。
竜の代表として女性の姿でハブナーに降り立つアイリアン。
人種は違えど、少しずつ互いに歩み寄っていく王と姫君。
彼らが集結する時、アースシーに新たな風が吹く……。
前作から一転、非常に派手な話になっています。
色々と語ることはありますが、何よりまずこれだけは言っておきましょう。
祝、ゲド復活!
前巻でドン底まで落っこちて醜態をさらした彼ですが、歳も七十歳になり、今や立派な山羊飼いのおじーちゃんとして威厳を取り戻してます。訪れたハンノキに語りかける姿はまさしく大賢人! 魔法は使えませんが、年の功は伊達じゃありません。前作で、こんなゲドは嫌じゃ~、と叫んだ人もこれなら納得できる筈。もっとも人生山谷ですから、前巻の人間臭いゲドも非常に好きですけどね。
で、話を戻して最終巻です。
主役は……実は誰とも言えません。
ゲドは最初と最後しか出ませんが、深く考えるといいとこ取りかも。
ハンノキの視点、王の視点、テナーの視点とグルグル視点が変わるので、厳密に誰が主役とは言えない作品です。その分群像劇として見応えがあり、それぞれがいい味出してます。中でも異彩を放っているのが新キャラのアイリアン。竜の姿で颯爽と現れたかと思いきや、女性に変化して人間に向かって言いたい放題、謎めいた竜のイメージを吹っ飛ばす格好いいキャラです。
一方ストーリーですが、これでもかというぐらい謎解きの嵐が吹き荒れます。
カルガド帝国ってどんなとこ?
アースシーの竜ってどんな存在?
ロークが定めた魔法の根幹とは?
その昔、竜と人間との間に何があった?
ゲドに関わった人々の心のぶつけ合いの中で、未消化になっていた謎が次々と明かされていく展開は非常にテンポ良く、ラストまで一気に読めました。つか、ル・グウィン……貴方いくつですか?(1929年生まれで、これ書いたのが2001年)
他にも、さりげなーく三巻で出てきたチョイ役の話があったり、テナーがアチュアン時代を振り返る話があったりとサービス満点です。少なくとも、四巻まで読んできたなら絶対オススメ、読むべし読むべし。
というわけで、ゲド戦記はこれにて終了です。
実を言うと外伝があったりするのですが、そちらは未読なのでまたの機会に。
ちょっと蛇足。
前期三部作と比較して何かと賛否両論な四、五巻ですが、個人的にはこれも立派にゲド戦記だと思っています。I・III・Vが世界を巡るマクロな戦い、II・IVが個人を対象としたミクロな戦いを描いているという点で、上手くバランスを取っていると思います。
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